今回の料理はぶどうとブルーチーズのサラダです。チーズとは、日本においては「牛乳、山羊乳、めん羊乳を原料として作られたナチュラルチーズ及びプロセスチーズである」と定義されています。ナチュラルチーズは「乳、バターミルク、クリームのたんぱく質を凝固させた凝乳から乳清の一部を除去したものや、これらを熟成したもの」だそうです。プロセスチーズは「ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したもの」とされており、この省令は1951年に定められた古くからあるものです。チーズの起源は、今から5500年くらい前のメソポタミアというのが定説でした。メソポタミアはチグリス川とユーフラテス川の間の沖積平野で現在のイラクあたりです。近年の研究で、ポーランドで、それよりも前の時代の、チーズを作っていたらしい道具が発見されたとの情報もあります。いずれにしても初期のチーズは、容器の中の乳が乳酸発酵し、生成された乳酸により凝集したものが原点とだと考えられます。そのままではヨーグルトですが、水気(乳清)を切ればフロマージュブランのようなチーズの出来上がりです。その後、偶蹄目の赤ちゃんの第4胃に乳を強く固まらせる酵素が多量に分泌されている事を知り、チーズ作りに利用するようになったそうです。その酵素の名前はレンネットで現在でもチーズ作りに使用されています。発見のきっかけは、絞った乳を持ち運ぶのに赤ちゃんの第4胃に入れたところ、あっという間に固まったから・・・という事らしいです。西アジアから西欧にはこのレンネットを使ったチーズ作りが広がり、東欧からモンゴル、南アジアへは酸凝乳のチーズが広がりました。さてブルーチーズですが、これは熟成の時に青カビを繁殖させたものです。カビの種類はブルーチーズの種類によって違うのですが、あの初めての抗生物質を産み出したペニシリウムの仲間です。カマンベールなどの白カビチーズと異なり、ブルーチーズはチーズの内部にカビを繁殖させます。空気を必要とするため、かっちりと固めず、隙間をつくり、ふわっと空間を残しています。また塩分が好きなカビなので他のチーズより塩気が強めです。今回はそのブルーチーズをぶどうとサラダにします。ぶどうはナガノパープルを使いました。ドレッシングには粒マスタードと蜂蜜、白ワインビネガーを使いました。
このぶどうとブルーチーズのサラダにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはビニャ マイポ レセルバ ビトラル シラーでした。ビニャ マイポのビニャとは、スペイン語で「ぶどう畑」という意味です。マイポはチリの先住民マプチェ族の言葉で「耕された大地」という意味を持ち、古くから、豊かな恵みを生む土地と呼ばれていました。ビニャ マイポ社のワインづくりは、そんな古くから大切にされてきた土地を中心に広がる「マイポ ヴァレー」で、1948年に始まりました。マイポ ヴァレーは「チリのボルドー、チリのぶどうの理想郷」とも言える場所なのです。この場所で生まれたワイナリーは数多くあるのですが、その中で「マイポ」という名前がついているブランドは世界でただひとつ、ビニャ マイポだけです。「ビトラル」はスペイン語で“ステンドグラス”の意味で、ラベルにも描かれているプリシマ デ マイポ教会のステンドグラスがモチーフになっています。ワインメーカーはマックス・ウェインラウブ氏です。彼は「シラーというぶどう品種に、強くポテンシャルを感じています。シラーの持つ特別な色合い、鮮烈なアロマ、力強くかつ穏やかなタンニンといった素晴らしい色、芳醇なアロマ、穏やかなタンニン・・・・・世の中に、このぶどう品種に無関心でいられる人がいるでしょうか?」と来日時に熱く語っていました。熟したプラムやブラックベリーを思わせる魅力的なアロマ。しっかりと凝縮した果実の力強さと、なめらかなタンニンとのバランスに優れた味わいです。
ぶどうとブルーチーズのサラダと合わせると、ビニャ マイポの充実したタンニンとナガノパープルの果皮のタンニンが織り成す力強さとチーズの動物性脂肪がマリアージュして甘味に転換します。
「マリアージュの典型的なパターンですね」
「その甘さと、ドレッシングのはちみつの甘味とぶどうの果汁が混ざって複雑な甘味になります」
「甘さの三重奏か・・・・」
「ブルーチーズのしょっぱさがあるおかげで、甘すぎとは全く感じません。良いバランスです」
「このサラダとビニャ マイポを合わせると、スモーキーなニュアンスが広がります」
「うん、そこがエンダイブのほろ苦さとしっくりきていますね」
皆様も、是非ぶどうとブルーチーズのサラダとビニャ マイポ レセルバ ビトラル シラーとの絶妙な相性をお楽しみくださいませ。