今回の料理は鮎のコンフィです。鮎はキュウリウオ科・アユ亜科に属する魚で、日本を中心とした東アジアに分布しています。キュウリウオ科には皆さんも口にする魚が何種も属しています。北海道の鵡川が名産のシシャモや、スーパーで「シシャモ」として販売されているカペリン(カラフトシシャモ)、ワカサギやシラウオもキュウリウオ科の仲間です。淡水に住むものが多く、海に住んでいても川に遡上して卵を産む魚が多い科です。アユに鮎の文字があてられたのには諸説ありますが、そのなかの「神功皇后がアユで占いをしたから」説をご紹介します。京都の祇園祭の山鉾巡行の前祭の舁山の一つに占出山(うらでやま)があります。ご神体は神功皇后で、「古事記」「日本書紀」に登場し三韓征伐をされたと記されている方です。この舁山の神功皇后は右手に釣竿、左手にアユをもっていらっしゃいます。このお姿は、三韓征伐の前にされた熊襲征伐のときに、「征伐の首尾占い」として釣りをしたところアユが釣れたという話をモチーフにしています。この事から、それ以前は「年魚」と表記されていたアユに、魚へんに占の「鮎」の文字が当てられたそうです。この山は応仁の乱以前から存在していた伝統ある山だそうです。
今回は鮎をコンフィにします。コンフィはフランス料理の調理法で、基本的に保存食をつくる技法です。油脂や砂糖液で煮込んだり、漬け込んだりします。油脂で煮込む場合は鴨やアヒルなどの肉が多く、砂糖液で煮込む場合は果物が使われるのが普通です。もともと南フランス周辺のオック語を話す「オクシタニア」でよく作られる料理です。オクシタニアは、西はアキテーヌ地域圏から東のプロヴァンス・アルプ・コート ダジュール地域圏、更にイタリアのピエモンテ州のクーネオ県とトリノ県あたりまで広がっています。そのなかから、バスク語圏およびカタルーニャ語圏を除いた広大な地域なのです。鴨のコンフィはワインの銘醸地の南西地方の名物料理です。南西地方はフォアグラやフォアドカナールの名産地で、鳥の油が大量に手に入る為だといわれています。プロヴァンスのエリアになると、煮込む油はオリーブオイルが中心になります。揚げる時の温度よりも低い温度でゆっくり加熱し、そのまま冷暗所で保管したら数ヶ月保存する事ができます。鮎は塩をたっぷりとふって1時間ほどおきます。軽く塩をおとしてエストラゴン、タイムを散らし、鮎がひたひたになるまでオリーブオイルを注いで、100℃に温めたオーブンに2時間から3時間入れると鮎のコンフィの出来上がりです。
この鮎のコンフィにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはガゼラでした。ガゼラはポルトガルの北部大西洋に面するD.O.C ヴィーニョ ヴェルデのワインです。ぶどう品種はローレイロ40% 、ペデルナン30% 、トラジャドゥーラー15%、アザル15%です。ヴィーニョ ヴェルデは、「ヴィーニョ=ワイン」「ヴェルデ=緑」で直訳すると「緑のワイン」です。爽やかで軽やかであっさりとした味わいのワインです。マロラクティック発酵をしない事でリンゴ酸のキレのあるシャープな酸を残しています。
鮎のコンフィと合わせると鮎の味わいを魅力的に引き立てます。エストラゴンやタイムの爽やかな香りとガゼラの緑のニュアンスが良くマッチしています。
「鮎は香魚と言われるくらい香りのある魚です。香りは川の石につく苔を食べるようになると出てくるそうです。その独特の香りとガゼラが驚くほど調和しています」
「清々しい清流の光景が目に浮かびますね」
「鮎の旨みも強調されます」
「鮎は美味しい魚ですよね、川魚では一番好きな魚かもしれません」
「ソーヴィニヨン・ブラン系も合っていますが、ガゼラとの相性が頭抜けて良いと思います」
皆様も鮎を見つけらたら、一度コンフィに挑戦してみてください。そしてガゼラとの絶妙の相性をお楽しみくださいませ。