今回の料理はハッセルバックポテトです。ハッセルバックポテトは、もともとはスウェーデンの料理なんですよ。 みなさんはスウェーデン料理というと何を思い浮かべられますか?ミートボールですか??日本にも10店舗ほどあるスウェーデン発祥の家具量販店のカフェの定番ですよね。スウェーデンのミートボールは、付け合わせのポテトと一緒に、甘いコケモモのジャムをつけて食べるのが一般的です。あと、有名なのは「ヤンソンの誘惑」ですかね。これは「クリスマス定番のご馳走料理」で、ポテトグラタンです。ステーキもよく食べられるのですが、大量のマッシュポテトが添えられます。また、その他に有名なのはニシンの酢漬けですが、これにも普通、茹でたジャガイモが付け合せにされます。そうなんです、スウェーデンの料理で登場頻度が一番高いのはジャガイモなんです。
さてハッセルバックポテトですが、まさにジャガイモが主役の料理で、ストックホルムのジュールグルデンにあるHasselbacken Hotel and Restaurantで1953年に初めてつくられた料理です。考案したのはヴェルムランド県出身のリーフ エリソン、当時はまだ見習いシェフだったそうです。もともとのレシピはジャガイモに薄い切れ目を沢山いれて、バターを間に塗りこみ、パン粉やアーモンドをトッピングしてオーブンで焼く料理でした。その後、ハムやチーズ、ベーコンなど様々なものを挟み込む料理に進化しました。ジャガイモに薄く切れ目をいれて、しかも切り離さないのがポイントです。良く研いだ包丁が必要で、菜切り包丁が最適です。菜切り包丁は刃の部分が四角形の和包丁です。非常に刃が薄いので片刃の包丁と違って、ジャガイモに真っ直ぐ、刃が入ります。また、切り離さないようにするのには、ジャガイモの両脇に割り箸を置くと良いですよ。薄く切れ目をいれたら水でさらして、でんぷんをおとします。でんぷんが残っていると、くっついてしまって、味が中まで染みません。挟む具材は、薄くてジャガイモに合う食材ならなんでも良いです。今回のレシピでは、トマトとベーコンを挟みました。塩とオリーブオイルをかけて、粗びき黒こしょうを振ったらローズマリーを乗せて200℃のオーブンで40~50分焼きます。途中で何回か流れたオイルをかけまわすとカリッと仕上がります。
このハッセルバックポテトにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはレゾルム ド カンブラス シャルドネでした。レゾルム ド カンブラス シャルドネは、今年の春、新発売したばかりのPays d'Ocのワインです。Pays d'Ocは、かつてヴァン ド ペイと呼ばれたフランスの「地理的名称」ワインです。しかも多数ある地理的名称のなかで最大の産地です。ヴァン ド ペイはその名の通り「地酒」でした。現在では地理的保護表示と呼ばれ、英語ではGeographical Indications=GI、フランス語ではIndication Géographique Protégée =IGPです。地理的保護表示は日本でも始まっており、様々な食品や酒類が登録されています。食品は地理的表示法により2018年4月現在で62種類登録されています。酒類は「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」に基づき「地理的表示に関する表示基準」が定められ、焼酎では壱岐 、球磨、琉球、薩摩が、清酒では白山、山形と「国単位で日本が保護される日本酒」が登録されています。そしてワインでは2013年に山梨が登録されました。これらの日本の地理的保護表示とEUの地理的保護表示は「日本とEUとの経済連携協定(EPA)」が発効するとお互いに保護し合う事になります。Pays d'Ocはラングドック・ルーション地方にあります。ラングドックのドックはd'Ocです。Pays d'Ocはニームからラングドックのペルピニャンとカルカソンヌに至る非常に広い地域をカバーしていて、フランスのワイン産業の中心的な柱の一つです。実際、フランスのIGP生産量の約2/3がPays d'Ocで、フランスのワイン輸出総額の約1/5も占める重要な位置づけです。レゾルム ド カンブラスはフランスNo.1(※1)のカステル社がPays d'Ocで醸す確かな品質のワインなのです。そして、このシャルドネはブルゴーニュで毎年開催される、シャルドネだけを評価する国際コンクール「シャルドネ デュ モンド 2017」で堂々の金賞を受賞しました(2016年ヴィンテージ)。バランスの良い味わいの辛口白ワインで、熟したりんごや黄桃を思わせるみずみずしい香りがあります。ほどよい厚みの果実味と、なめらかな酸味が特長のワインなのです。
ハッセルバックポテトに合わせると、ジャガイモのほっくりとした美味しさが、柔らかく解けていきます。ジャガイモの皮の独特の香りが少し焦げる事で、香ばしくなっています。
「レゾルム ド カンブラスと合わせると、イモの味わいがくっきりとしますね」
「薄く切られたジャガイモの皮のところがカリッカリになっていて、最高に美味しいです」
「シャルドネの穏やかな酸味とイモが、こんなにも良く合うのは、驚きです」
ジャガイモの素材をそのまま満喫したい方にお勧めのマリアージュだと思いました。
(※1)IMPACT DATABANK 2016,World’s Top 10 Wine Marketers(世界での販売数量データ)