今回の料理はタイ料理のソップ・ノーマイ(筍と炒り米、ゴマ、ミントのタイサラダ)です。筍はイネ科タケ亜科タケの、地下茎から出たばかりの若い芽です。竹はアジアを中心に沢山生えています。サントリーが、ボルドーで経営するシャトー ラグランジュの、白鳥が居る池の周りにも、竹林があります。植物図鑑を見ると竹の分布の範囲はアジア、オーストラリアなどのオセアニアと中央アフリカとされていて、ヨーロッパには自生しないと記されています。買収した直後に訪問したときに、当時の日本人トップだった鈴田さんに、「日本の風情を出す為に植えたのですか?」と聞くと「買収する前からあったんですよ」との事でした。以前のオーナーのどなたかが植えられたのでしょうが、ラグランジュと日本との浅からぬ縁を感じました。筍を食べる習慣は竹の生育地域よりもずっと狭く、日本、中国をはじめとした東南アジアからインドあたりまでのようです。新鮮な生の筍が出回る期間は短く、様々な野菜が年中揃う現代において、季節感を強く感じる数少ない食材と言えます。今回のレシピでは、可愛らしい姫竹を使いました、姫竹はチシマザサの筍で、根まがり竹と呼ばれる事もあります。皆さんがお作りになる時は、普通の筍でも良いですし、青椒肉絲用に切って袋詰めで販売されているものでもかまいません。今回のレシピの肝は、炒り米です。米をキツネ色になるまで乾炒りします。4-5分かけて弱火で、ゆっくりゆっくり炒る事で、サラダ全体の風味と食感が全く別物になります。味付けは極めてシンプルです。ナンプラー、ライムの絞り汁、砂糖、と一味唐辛子です。トッピングに炒り米とゴマをすったものとミントを散らします。脇に添えたキャベツにのっけて、いただきます。
このソップ・ノーマイ(筍と炒り米、ゴマ、ミントのタイサラダ)にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはフレシネ コルドン ネグロでした。コルドン ネグロは黒いボトルがトレードマークの、フレシネの顔ともいえるアイテムです。フルートグラスに注ぐと、キメ細かな泡が、真珠のネックレスのように連なって昇ってきます。色合いはグリーンがかった淡い黄色。香りは、柑橘系を思わせる爽やかさと、少し香ばしい香りのニュアンスとがあります。口に含むとシルキーな泡が優しく弾けます。レモンのようなクリーンでキリッとした酸味の辛口カヴァです。ブレンド比率の高いパレリャーダは、透明感のある華やかな風味を持ち、キレのある酸味にアクセントを添えています。熟成には、こだわりがあり、瓶の中で 18ヶ月以上の、とても長い熟成をします。ソップ・ノーマイと合わせると、筍の風味が、泡の波に乗って、口の中を広がっていきます。
「筍の土っぽい、独特の香りが強調されます」
「筍を、米ぬかと一緒に煮ていると、筍の少し蒸れた様な、丁度とうもろこしを蒸したような甘い香りが漂いますよね、あの懐かしい香りです」
「その香りがフレシネとも、良く合うんですよ。特に、今回のレシピでは、炒り米とゴマを使っています。その香ばしい香りとも、酵母由来の風味が共鳴しているかのようです」
「同じ系統の香りですからね」
キャベツの甘みとコルドン ネグロの爽やかな酸とも、とても良いバランス感です。
「唐辛子の辛味を、フレシネの隠れた甘みが上手に和らげてくれています」
春の愉しみのひとつである筍を、是非タイ料理でお愉しみください。そしてフレシネ コルドン ネグロと合わせてみて下さい。