今回の料理はスペアリブと根菜の和風ポトフです。ポトフはフランスの料理で、辞書で調べると「シチュー」の訳語があてられています。別の本を調べるとポトフの説明に「西洋風おでん」とありました。フランス語の綴りはpot-au-feuです。potはポット、鍋です。feuは火ですから、直訳すると「鍋」を「火」にかけた料理、日本語だと鍋物や煮物といった、かなりざっくりした意味合いだと思います。ポトフのレシピや写真をいろいろ調べると、一番多く材料に使われているのが、牛の脛肉のぶつ切りなどの塊肉です。海外のページだと、太い骨ごとぶつ切りにした豪快な写真も多数ありました。次に多いのがソーセージやフランクフルト、鶏肉などです。野菜は、にんじん、ジャガイモ、ポワロー(ポロ葱)、セロリなどを大きめにざっくり切って入れる事が多いようです。今回のレシピは和風ポトフです。具材はスペアリブとごぼう、さつまいも、かぶ、ねぎです。煮込む時間は合計で1時間半くらいかかりますが、基本的には煮ているだけなので、手間は、そんなにはかかりません。煮ていくと、豚肉の良い香りとごぼうの独特な香りがしてきます。ごぼうはキク科の植物です。漢字では牛蒡や牛旁と書きます。広辞苑では牛蒡になっていますが、ネットの検索エンジンでは、牛旁のほうが4倍くらい多くヒット数表示されています。漢方の世界では、悪実(あくじつ、あくみ)と書き、種子を利尿や浮腫みとり、化膿止め・解毒に使います。効能が多くあるのに「悪実」という、一見悪そうな表記になっているのは、ごぼうの花がアザミの花のように棘だらけだからだと言われています。ごぼうには別名が多くあります。平安時代の和名類聚抄には岐太岐須(キタキス)、宇末不々木(ウマフフキ)などの表記あり、ウマフフキから転じたであろうと思われる馬蕗や旨蕗も登場します。鼠粘草という表し方もあります。これらの表記は中国からやってきましたが、現在の中国では根っこは食用にはしないようで、主に漢方薬として使われるようです。根っ子を食べるのは、日本と朝鮮半島、台湾という歴史的に日本が深く関係した国々だけだそうです。日本で栽培されているごぼうには、いくつか種類があります。大きく分けて、長根系と短根系があります。今日本で栽培されているほとんどが長根系の滝野川ごぼうの仲間です。短根系のごぼうの代表は大浦ごぼうで、真ん中が空洞になっています。堀川ごぼうは短いごぼうですが、短根系ではなく、滝野川ごぼうを特殊な方法で栽培したものなので、長根系という事になります。大浦ごぼうのように真ん中が空洞なので、よく詰め物に使われます。長根系ごぼうは、根っ子が、長いものでは1m位になりますから、深くまで柔らかく耕された畑が必要です。「ごぼうを育てた畑では、どんな野菜も良く育つ」といわれるくらい畑の手入れが必要な作物なのです。栄養豊富で、食物繊維も豊かです。ポリフェノールの一種のクロロゲン酸やタンニンを多く含み、カリウムや葉酸も多く、リグニンやイヌリンも沢山含んでいるそうです。
このスペアリブと根菜の和風ポトフにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはブーケ ド フロリア シャルドネ/ヴィオニエでした。ブーケ ド フロリア シャルドネ/ヴィオニエは昨年新発売したオーストラリアワインです。開発のコンセプトは「花のようにアロマティックな、オーストラリアのワイン」です。オーストラリアの名門ワイナリー ヤルンバとサントリーで共同開発しました。ヤルンバは2015/16 ワイナリー・オブ・ザ・イヤーも受賞している実力派です。味わい設計のポイントは、人気品種シャルドネにアロマティック品種ヴィオニエをブレンドすることです。そうする事により「華やかな香り」「やわらかい口あたり」「まろやかな味わい」を達成する事ができました。
スペアリブと根菜の和風ポトフと合わせると、豚肉のコクとごぼうの香りにヴィオニエの華やかさが付け加わって、ふわっと広がります。
「華やかですね」
「黄色く熟した果物の香りがあります」
ヴィオニエは完熟出来る土地で栽培すると、力を発揮するのですが、そういった土地は、急斜面であったりして、耕作するのが困難な土地でもあります。大変手間がかかる品種だったので、1960年代には、フランスでの栽培面積が、わずか14haにまで落ち込んで、原産地であるコート デュ ローヌですら、絶滅寸前にまで減った事があった品種なのです。ローヌでは、この品種に惚れ込んだ一部の生産者が、南向きの急斜面で丹念に栽培し、素晴らしいワインをつくって再び脚光を浴びるようになりました。オーストラリアにおけるヤルンバもそういった生産者のひとつです。ヴィオニエの可能性にいち早く気づき、オーストラリアで真っ先にヴィオニエに取り組みました。
「ヴィオニエの黄色いイメージの香りは、特徴的な香りですよね」
「黄色く熟したトロピカルフルーツ、ローズマリーや金木犀・・・・根菜の土っぽいタッチと絶妙に合って奥行きのある、なんとも言えない香りになります」
ヴィオニエ100%で醸したワインも美味しいのですが、香りが強くなり過ぎる側面があります。幅広い料理との相性を考える時には、このブーケ ド フロリアのように、ヴィオニエをメインで使うのではなく、補助的に使う方が「フードフレンドリー」なワインに仕上がるようです。まだまだ寒い日が続きます。皆様も、そんな時には、スペアリブと根菜の和風ポトフをつくってみてください。そしてブーケ ド フロリア シャルドネ/ヴィオニエを是非お試しください。