今回の料理は、さんまのトマト煮込みです。先日、北海道立総合研究機構水産研究本部の釧路水産試験場が発表した2017年のさんまの漁獲見込みは、過去最低を記録した2016年を下回る予想になっています。日本の漁獲量ですが1970年代は20万トンから30万トン、過去最高値は2008年の60.6万トンで、2014年は22.5万トンでした。それが2015年,2016年ともに11万トンと大不漁、今年は、それよりも更に下回る恐れがあるとの調査報告でした。さんまはダツ目サンマ科の魚で、2年で成魚になります。今回の調査報告では漁の前半の10月の上旬までは、比較的1歳の中型から大型の比率が高いが、10月の中旬以降は0歳の小型が中心となりそうだと言う事です。撮影とマリアージュ実験の為にさんまを買いに築地に行った8月8日は仲卸をぐるぐる回ってやっとの事で見つけたのですが、仲卸店の大将によると、1週間ぶりに築地に入った貴重なさんまとの事でした。ぴかぴかに、光輝いていたので「綺麗ですね」と言うと、「魚影が薄いから、棒受け漁でも、網に魚があまり入らない。網の中で押し合いへし合いにならない、だから魚体に傷がつかないんだ」と教えてくれました。今日はそのさんまをトマト煮込みにします。トマトはミニトマト、玉ねぎとにんにく、オリーブとエストラゴンを少し使いました。
さて、このさんまのトマト煮込みに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインはカザマッタ ロッソでした。カザマッタは、あの、テスタマッタのビービー グラーツ氏が送り出したイタリアワインで、トスカーナで醸造されています。ビービー グラーツ氏のワインづくりを一言で言えばその独創性と感性です。ビービーは芸術家一家に生まれました。家はフィレンツェから車で5-6分のヴィンチリアータにあります。彼は家族で楽しむためだけに使われていたぶどう畑を使い、2000年から本格的にワインづくりを始めました。桁外れのセンスで2004年のヴィネスポではイタリアソムリエ協会が選ぶ「ベスト プロデューサー賞」の最終候補者の3人のうちの1人に選ばれました。この間、なんと、わずか5年です。言ってみれば、たった5回のワインづくりで、ほとんど頂点とも言えるところまで行ったのです!!やはり天才なのでしょうか・・・・このカザマッタ ロッソはサンジョヴェーゼ100%で醸されます。年による味わいのばらつきを減らすために、シャンパンづくりにおけるリザーヴワインのように前年、前々年のワインをキープしておき、アッサンブラージュする、と言うトスカーナのワインづくりの慣習にとらわれないユニークな方法をとっています。グラスに注ぐと、美しいルビー色です。ドライチェリー、ブルーベリー、スパイスを思わせる香りがあります。タンニンは柔らかで、まさに美しくエレガントなサンジョヴェーゼの個性を表現したワインだと思います。
さんまのトマト煮込みと合わせると、さんまの味わいが光ります。身のコクが素直に強調されて、とても美味しく感じられます。
「さんまそのものの美味しさが楽しめますね」
「やっぱり、イタリアワインだからでしょうかね、トマトとオリーブオイルとの相性がとても良いです」
「そうそう!トマトの酸味がカザマッタと丁度良い感じですよね」
「ワインで、まとまる感じがします」
はらわた部分の苦味もカザマッタのタンニンと絶妙にマッチして、大人の美味しさを演出していました。噛めば噛むほど滋味が溢れてくる、そんな感じのマリアージュでした。これからさんまは徐々に南下してきます。それにつれて脂が乗って更に美味しくなると思います。旬のさんまを、一度トマトソース煮込みでお試しください。そしてカザマッタ ロッソとの相性をお楽しみください。