今回のレシピは、パクチー トムヤムクン鍋です。トムヤムクンは世界3大スープの1つと言われる事もあるスープです。日本人がタイで名前を知っている料理として「いの一番」に挙がるほど有名な料理です。トムは「煮る」、ヤムは「混ぜる」、クンは「海老」。つまり、海老を煮て、それを混ぜた料理という事になります。味わいは皆様も良くご存知の酸っぱ辛い、あの味です。辛いんですが、クセになりますよね。今回はトムヤムクンを鍋仕立にしたものとワインの相性を探ります。鈴木都先生によるとタイ料理の特徴的なところは、出汁を、入れる具材以外からは取らない事だそうです。今回のトムヤムクンでも、あんなに美味しい味が出ているのですが、特別に出汁を取る訳ではないのです。味付けはナンプラー、シーズニングソースとナンプリックパオです。ナンプリックパオはチリインオイルとも呼ばれる干し海老ベースの調味料で、タイのXO醤とも呼ばれるくらい旨みたっぷりです。ハーブ、スパイスはレモングラス、タイの生姜であるカー、コブミカンの葉とプリッキーヌと呼ばれる小さい唐辛子です。プリッキーヌは、見た目は小さくて可愛らしいのですが、激辛です。プリッキーヌが無い場合は、鷹の爪で代用可です。海老以外の具材は、今回は手羽先とタイ風のワンタンを作りました。野菜では白菜やきのこ類と、是非入れていただきたいのがパクチーです。パクチーは、このところ、とても注目を集めています。日本の世相を反映し象徴する料理として「2016年 今年の一皿」にパクチー料理が選ばれるくらいです。この、寒い季節にも美味しいタイ料理のトムヤムクン鍋にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリー 登美の丘ワイナリー 登美の丘 シャルドネでした。登美の丘ワイナリーの現在の地名は山梨県甲斐市大垈(おおぬた)ですが、かつては北巨摩郡登美村と呼ばれていました。茅ケ岳の麓の南向きの斜面にあります。甲府の駅から車で20分程度の距離で、登っていくと、美しい富士山が見えてくる「登って美しい丘」まさに登美の丘なのです。雨が少なく、日照にも恵まれたこの地にぶどう畑が開かれたのが1909年の事で、中央線をつくった鉄道参議官 小山新助の手によってでした。ただ、当時の日本人には、本格的な辛口ワインは、なかなか受け入れられずに頓挫してしまいました。そして1936年にサントリーの前身である寿屋に寿屋山梨農場として引き継がれて今日に至っています。現在では総面積150ha、9つの丘にぶどうが25ha栽培されています。土壌は粘土とシルトと砂が適度に混ざった火山性土壌、下層部は大小様々の大きさの火砕流堆積物で水はけは極めて良好です。栽培されているぶどう品種は、黒ぶどうでは、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、ブラック・クイーン、ピノ・ノワール。白ぶどうでは、シャルドネ、甲州、リースリング・フォルテなどです。
シャルドネは場内に3haあり、9区画に分けて栽培されています。マリアージュ実験で使用した2013年ヴィンテージは、8月の日照時間が非常に長く、秋は雨が少なく、朝晩は気温が下がるという理想的な天候でした。約半分を樽熟成、残りをタンクで熟成しています。グラスに注ぐと、爽やかな柑橘と熟した果実の両方の印象があります。ナッツをローストしたような香りも漂ってきます。アタックは丸みがあり、たっぷりとした印象で、力のあるボディとボリュームを感じることができます。酸は、おだやかで余韻が長く続きます。トムヤムクン鍋と合わせると、トムヤムクンのインパクトのある味わいと登美の丘シャルドネのリッチな味わいとが自然に溶け合っていました。
「海老の身のコクと自然な甘味が、登美の丘シャルドネによって、より引き出されていますね」
「登美の丘と出会う事で海老の旨みが断然濃く感じられるだけでなく、ワインも一層美味しく感じます」
「この、甲殻類との濃厚なマリアージュは、リッチタイプのシャルドネならでは、ですよね!」
「スープの酸っぱ辛いところ、特にライムのキレのある酸が、ワインの穏やかな酸をおぎなって、バランスを良くしている感じもします」
タイ料理と日本のシャルドネの素敵なハーモニーを是非お試しくださいませ。