今回のレシピは、ブリのしゃぶしゃぶ 赤ワイン仕立てです。ブリはスズキ目アジ科ブリ属の魚です。大きくなっていくにつれて名前の変わる出世魚のひとつで、各地で呼び名が異なります。関東では、稚魚をモジャコ、30cm未満をワカシ、60cm未満をイナダ、80cm未満をワラサ、80cmを超えて初めてブリと呼ばれます。関西ではツバス、ワカナが小さいサイズ、中くらいのサイズがハマチ、60cm程度がメジロ、80cmでブリ。北陸では稚魚をツバスやツバイソと呼び、30cm未満をコズクラ、60cm未満をフクラギ、80cm未満をガンド、80cmを超えてブリと呼ばれます。もちろん、これ以外にも各地で様々な呼び名があります。また、同じ呼び名が異なるサイズを指している事もあります。天然ブリのブランドと言えばなんと言っても氷見の「ひみ寒ぶり」、築地でも専用の青い発泡スチロールの箱に入っていますのでひと目で判ります。北陸地方の人々にとってブリは大事な存在です。ブリが獲れだす11月末くらいからの、雪を伴うような雷を「鰤起し」と呼びます。また、娘を嫁がせた家では嫁ぎ先に大きなブリを年末に贈る習慣があるそうです。また、富山から岐阜県を通って名古屋に抜ける国道41号線は鰤街道と呼ばれます。江戸時代には塩漬けにしたブリを人が担いで山道を飛騨高山方面へ、そして名古屋や長野へと運んだそうです。天然ブリの県別漁獲高を調べてみると2014年のデータでは島根県が2万tあまりで第1位、石川県が2位で1万6千t、3位は千葉県で1万2千tです。氷見港を擁する富山県は14位です。北陸のブリは昨シーズン、絶不調でした。例年、氷見で大型のブリが獲れだすと出される「寒ブリ宣言」は遂に出されずじまいでした。今シーズンは一転豊漁のようで、築地にも連日大型の寒ブリが入荷しています。ブリの料理といえば、定番の刺身、ブリの照り焼きやブリ大根と言ったところでしょうか?今回はしゃぶしゃぶ、それも赤ワインを使ったしゃぶしゃぶです。しゃぶしゃぶの出汁は昆布でひきます。それにたっぷりの赤ワインをいれて塩で味を調えます。赤ワインの量は2~3人用の鍋で300cc、今回はサンタ バイ サンタ カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルドを使いました。ブリは大物、12kgの素晴らしい背の部分が手に入りました。塊のブリをしゃぶしゃぶ用に切ります。いろいろ試してみたのですが、厚さは4mmがベスト、しゃぶしゃぶする時間は「一瞬」が一番美味しかったです。ブリを持つ箸を離さず、表面の色が変わったらすぐ引き上げる、と言った感じです。この赤ワインのブリしゃぶにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはジョルジュ デュブッフ サンタムールでした。ブルゴーニュ地方、ボジョレー地区で美味しいワインの出来る北部のボジョレー ヴィラージュの村々のなかでもクリュ ド ボジョレーと呼ばれる最も格上の10村のひとつです。サンタムールは最も北に位置しマコネー地区との境界線にあります。土壌はガメが好む花崗岩とシャルドネが好む石灰岩が程良く混じっており、このエリアでは赤をつくると、AOCサンタムール、白をつくるとマコネー地区のAOCサン・ヴェランになります。石灰岩の影響をうけてか、他の9つのクリュではあまり出ない杏や桃を思わせる香りが出てくる事がよくあります。グラスに注ぐと色は美しいルビー色。さくらんぼの印象とサンタムールらしい杏の印象がはっきりとあります。口に含むと軽やかで、みずみずしいワインです。ブリと合わせるとブリの脂の旨味が際立ちます。
「うわー、すごく合います」
「サンタムールがブリを包み込み、ブリからの脂がサンタムールのほど良いタンニンと出会って甘くなっています」
「しゃぶしゃぶって、お湯にくぐらせるから、こってりとした脂が少し落とされて、さっぱりとします。普段は、その分、逆に血合いの血っぽさというか、鉄っぽさが強調されて、気になる時があるのですが、サンタムールはその血っぽさと良く合って、とても美味しく感じさせます」
「サンタムールってミネラル感が強いので、海の印象が強まるし、奥行きを感じるよね」
サンタムールのワインとしての深みが強調され、メンバー納得のイチオシとなりました。