今回のレシピは、海老と長いもの白ワイン蒸しです。実は海老という生き物はワインと関係が深いのです。海老という名前は、色から来ていると言われていて、その色とは深い赤紫を指す葡萄色=えび色、つまりワインレッドなのです。新井白石が1717年に編んだ語源書である東雅には、「えびは其の色の葡萄に似たるを言ひ、俗に海老の字を用ひしは、その長髯傴僂たるに似たる故也」(エビは色がぶどうに似ていて、海老の字を使うのは「ひげが長く、背中がまがっている」からだ)と記されています。海老は節足動物門、甲殻亜門の十脚目の生物で、カニやヤドカリの親戚です。日本では伊勢海老のような海底を這う大型の「海老」と、甘海老や芝海老のような泳ぐのが割と得意な小型の海老を「蝦」と分けて表記する事もありますが、かなり曖昧です。英語ではサイズで3段階になっていて大きな伊勢海老クラスはLobster(ロブスター)、日本で一般的に流通しているブラックタイガーサイズでPrawn(プロウン)、芝海老サイズはShrimp(シュリンプ)です。よく、海老はお金持ちの国が沢山食べ、イカは貧乏な国が食べると言われる事があります。1990年代は日本が世界一の海老消費国でした。現在は中国、アメリカに次いで第3位、でも、日本人が海老好きなのは変わっていません。今回はシンプルに白ワイン蒸しにしました。使った海老は有頭のブラックタイガーです。スーパーによっては、普段「有頭」海老を取り扱っていない店もあります。この時期は御節料理用に取り扱っていた店が多く、七草粥も終わった今、破格の安値で並んでいる事が多くあります。付け合わせは長いも、繊細な味わいです。海老を白ワインで蒸し焼きにするのですが、ポイントは頭です、エシャロットと一緒に炒め、更に白ワインを加えて潰すように火を加えます。こうする事でミソの旨みがソースに出るのです。
この海老と長いもの白ワイン蒸しにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはビオンタ アルバリーニョでした。ビオンタ アルバリーニョの故郷はスペイン北西部のリアス バイシャス、乾燥し酷暑になる地方が多いスペインのなかでは、冷涼で湿潤なエリアです。この辺りは大変入り組んだ海岸線で、多くの島があります。複雑な海岸線、そして、リアス バイシャス。そうです。皆さんが社会科の時間に勉強したリアス式海岸の「リアス」はここからきているのです。海産物の宝庫で、特に小海老や手長海老などが沢山獲れます。このエリアの大きな都市であるビーゴの気象データをみると年間平均気温13.7度、年間降水量1918mmです。東京の年間平均気温15.4度、年間降水量1467mmと比べると、涼しく多雨である事が判ります。月別降水量を見ると特に9月以降、ぶどうの収穫期に雨が多いのが特徴です。ここで主に栽培される品種はアルバリーニョ、果皮が分厚く、雨が続いても病気になり難い品種なのです。果皮が分厚いので、皮に含まれる香りの成分や色の要素が多く、ワインに醸すとフルーティーな香りを多く持ち、色も比較的早く黄金色を帯びてきます。ビオンタ アルバリーニョをグラスに注ぐと、色は、やや濃く、ほんのりと黄金のニュアンスがあります。香りは熟したリンゴや花梨、黄色い桃などのニュアンスがあります。口に含むと、きりっとした辛口で、海に近い産地らしい、わずかな塩味を感じます。海老と長いもの白ワイン蒸しと合わせると、海老の素直な甘みが強調されます。
「美味しいですね。海老そのものが美味しいのですが、ビオンタの花梨っぽい香りと海老が出会うと更に美味しくなります!海老の旨みが花開く感じです」
「海老の身も合うんですが、このスープです!ミソのコクがビオンタと物凄く良く合います!!」
「単純な辛口では無い、厚みと複雑さを持ったアルバリーニョならではのマリアージュですね」
「なんで、こんなに良く合うんでしょう?」
「このエリアでは、小海老などの甲殻類を長い間、沢山食べ続けてきました。ワインの生産者は、その味わいに良く合う品種を選び、そして醸造などのテクニックも『地元の味わいと合う方向を模索し続け』、そういった努力の結果、合う方向へと進化を続けたからなんでしょうね」
長いものシンプルな味わいも、付け合わせとして大変良く合っていました。