今回のレシピは、ガーリックバターのローストチキン 赤ワインソースです。チキン=鶏はキジ科の鳥で、セキショクヤケイを飼い馴らしたものだとされています。考古学的に鶏の存在が確認されているのはパキスタンのモヘンジョ・ダロ遺跡です。モヘンジョ・ダロは、インドからパキスタンにかけて広がっていたインダス文明を代表する遺跡です。モヘンジョ・ダロにも、どこかから伝わったのかもしれませんが、いずれにしてもモヘンジョ・ダロからそう遠くないところで家畜化されたようです。そして、そこからヨーロッパや中国に伝わっていったものと考えられています。日本に伝わったのは弥生期、中国を経由して伝わったようです。ただ、すぐに食用として重視された訳ではなく、儀式などの祭礼や声を楽しんだり、羽の観賞用や闘鶏用だったようです。また仏教の殺生への禁忌もあって、ニワトリは卵も含めてなかなか食用にはなりませんでした。江戸時代には無精卵は孵化しない事が理解され、卵だけは徐々に食用として広がりだしました。明治になり文明開化を迎え、日本人は、こぞって肉を食べるようになりました。当然鶏肉も食べるようになったのですが、卵の消費の方がずっと多く、卵を産む間は食べられる事は少なかったようです。したがって鶏肉は卵を産まなくなった鶏の肉、つまり、堅くてあまり美味しくない鶏肉だったので、当然消費もそんなには伸びませんでした。また当時のニワトリは今の卵用種の白色レグホンのように沢山卵を産む訳では有りませんでした。1羽の雌鶏が産むのは、せいぜい年間90個程度だったそうです。ちなみに白色レグホンは灯りをコントロールすると、ほぼ毎日に近く産ませる事ができます。なので、昔の卵は大変高価なものでした。また、鶏肉を食べる事が一般的になったのは第二次世界大戦後、食肉用鶏ブロイラーが導入された事がきっかけでした。孵化してから49日で食用となるスピード、肉の柔らかさなどが高く評価されて、あっと言う間に広がりました。農水省によると、日本人が食肉として、もっとも多く食べているのは豚肉で、僅差で鶏肉が続きます。「2位か、残念・・・」と思わなくても大丈夫です。卵を足すと大きく逆転、鶏は日本人にとって最も大事なタンパク源なのです。さて今回は丸ごとの鶏をローストチキンにします。クリスマスが近づくと、スーパーマーケットには特設売場が出来て普段はあまり並んでいない丸ごとの鶏が販売されます。一羽丸ごとだと、厚みのある部分に味がしみ込みにくいので、前日から塩と砂糖を1対1で混ぜたものを全体にすりこんでおきます。お腹の中にも丁寧に塗って、冷蔵庫でひと晩休ませて下味をしみ込ませます。翌日、大きな鍋にお湯を沸かして、湯どうしします。こうする事で全体に味が均一に馴染むのです。詰め物をつくり、お腹に詰めたら、オーブンで焼きます。おろしにんにくを混ぜた溶かしバターを塗りながら、野菜と一緒に、約1時間焼いていきます。腿や胸などの肉の分厚いところに金串を刺して澄んだ液が出るようになったら焼き上がりです。ソースには天板に出てきた油と肉汁を使います。鍋に肉汁をいれ、一緒に焼いていた野菜と、たっぷりの赤ワインを入れてじっくり煮詰めます。半分くらいに煮詰めたら、濾して、塩こしょうで味を調えます。この、とっても豪華なガーリックバターのローストチキン 赤ワインソースにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはジョルジュ デュブッフ ボジョレー ヌーヴォー 2016でした。実験の時は、もちろん今年のヌーヴォーは未だ到着していませんので、普通のボジョレーを使いました。解禁を迎えたボジョレー ヌーヴォーですが2016年はどういう年だったのでのしょうか?2016年のフランスは異常気象とも言える困難に満ちた年でした。異常な暖冬、春先の寒波、それに伴い4月26日にはシャンパーニュ地方からシャブリ、コートドールにかけて広範囲な遅霜の被害がありました。コートドールでは東向きの斜面の被害が特に酷く、畑によっては90%減産になったところもあるほどです。ボルドーでも5月に入り遅霜の被害がありました。年の前半は降水量が非常に多くパリでもセーヌ川が氾濫しルーブル美術館の収蔵品が一部避難したニュースが流れました。また、各地で雹の被害が多く見られました。7月に入り前半はブルゴーニュでは何回か大雨、その後気温が上昇、37度を超えるような猛暑日が何回かありました・・・・こう書くと、「2016年は、なんて悲惨な年なんだ!」と思われるかもしれません。しかし、ご安心ください!!ボジョレーはブルゴーニュでも一番南に位置します。4月26日の遅霜の日も、大変寒くはあったのですが、ボジョレー ヌーヴォーの生産エリアでは、霜の被害は見られませんでした。雹は何度か降りましたが、それは毎年の事です。7月半ばからは好天に恵まれ、雨が少なく、それがなんと9月の収穫期まで続いたのです。7月前半の、まとまった雨も、その後の極端な乾燥から、ぶどうを守る貯金となりました。収穫は9月15日から始まりました。デュブッフ氏によると2016年ヴィンテージは「赤い色のベリーを思わせる香りが豊か、特にフレッシュなイチゴやラズベリーのような赤い果実が弾けるようなニュアンス」「ヌーヴォーらしいヌーヴォーの年」だそうです。
ローストチキンとボジョレーを合わせると、鶏自体が持つ穏やかな滋味とボジョレーのフレッシュな果実味とが実に良く合います。
「本当に良く合いますね、チキンとボジョレーって鉄板ですよね!」
「ボジョレーの地元でも、そしてボジョレーのすぐ南側にある美食の都、リヨンでも、鶏は良く食べられますからね」
「そうそう、リヨンのビストロにいくと、カラフェでボジョレーが出てくる店が多くあります。日本の居酒屋のお銚子みたいに空になっても下げずに、ずらっと空いたカラフェを並べるんですよ」
「そんな店で、良く食べられるのが鶏やハム、ソーセージといった手軽なものですよね」
今年のヌーヴォーのテーマは「今年はボジョパ!」ボジョレー ヌーヴォーでパーティーしましょう!です!!是非皆様もボジョパ!を楽しんでください。そしてこのガーリックバターのローストチキン 赤ワインソースをつくってみてください。パーティーが大盛り上がりする事、間違いなしです!!!