今回のレシピは、クロックマダムです。クロックマダムはクロックムッシュの変化形です。クロックムッシュはパンにハムやチーズをはさんで焼いたもので、かじるとカリカリ音がするので、クロック(croque=カリカリ)だそうです。焼いただけで何ものらないバージョンもありますが、ベシャメルソースやモルネーソース(ベシャメルソースにコンソメとチーズを溶かし込んだソース)をのせたものもあります。そのソースの代わり、もしくはソースの上に目玉焼きをのせると名前が変わりクロックマダムになります。式にあらわすと
紳士+卵=淑女
こんな感じでしょうか・・・・・
あ、両辺にカリカリがありますから
カリカリ×(紳士+卵)=カリカリ×淑女
の方が正しい式でしょうかね。
クロックムッシュは1910年ごろのパリのオペラ座のそばのカフェで考案されたようです。マルセル プルーストの「失われた時を求めて」の第二部「花咲く乙女たちの影にⅡ」にも登場します。失われた時を求めては日本語訳で400万字にも及ぶ長編小説で、20世紀初めの社交界のことや家族のこと、恋愛の事が書き綴られた本です。随所にレストランの料理やお菓子などが綿密に描写されています。クロックムッシュは主人公である「私」が病んで、パリを離れ祖母とともにバルベックに療養に行くシーンで出てきます。出してくれるのは「私」のおばあちゃんの学友で今は田舎に引っ込んでいるけれど由緒ある出自の公爵夫人、療養の為に田舎に来た「私」とおばあちゃんをもてなす為のパリの空気感を纏った、そして当時の流行最先端であった料理である事を表現する小道具として登場します。100年経った今のパリでも朝食や昼食に良く食べられています。日本でも外食チェーンにもオンメニューされる事も出て来始めていますが、広がり、と言うには未だ遠い感じです。
今回のクロックマダムなのですが、通常は食パンを使いますが、バゲットを薄く切って2枚並べました。食パンでも結構カリカリになりますが、今回はバゲット、それも、更にフライパンにバターを落として焼いてから使いますので、相当カリカリです。ハムとマッシュルームとチーズを間にはさんで、上にベシャメルソースをのせてからオーブンで焼き、仕上げに目玉焼きをのせれば出来上がりです。この見た目も可愛らしいクロックマダムにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサンタ バイ サンタ カロリーナ スパークリング ブリュットでした。このワインは、今秋に新発売されたばかり、大ブレーク中のサンタブランドのスパークリングワインです。通称サンタ ゴールド、チリのスパークリングワインなのです。ぶどう品種はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネにヴィオニエです。爽やかなソーヴィニヨン・ブランに骨格感のあるシャルドネを組み合わせ、魅惑的な香りをもったヴィオニエが彩りを添える・・・・グラスからはレモンやグレープフルーツを思わせる柑橘系の爽やかな香りが昇ってきます。口に入れると軽やかで、イキイキした軽快な酸味と、程よい厚みが感じられます。
クロックマダムと合わせると、クロックマダムの「カリカリ」とサンタ ゴールドの軽やかな酸とがマッチしていました。
「バランスが良いですね」
「クロックマダムを口にいれると、まさにクロックなカリカリした感触ですよね、それにサンタ ゴールドのクリスプな印象がぴったり合っています」
「熱いクロックマダム、特にベシャメルソースが熱熱なのですが、その熱っちっちとスパークリングの良く冷えた感触のコントラストが楽しいですよね」
「休みの日のブランチとか、遅めのお昼ご飯とかに、このコンビネーションは楽しそうです」
肩の張らないメニューとワインの組み合わせ同士の良いところなのでしょう、とても居心地の良いマリアージュでした。