今回のレシピは、チーズとラズベリーの春巻きです。初めて海外で中華料理屋さんに入った時に、メニューの春巻きの写真の下の英語訳がSpring rollと書かれているのを見て笑ってしまったのを覚えています。てっきり一文字、一文字に単純に英語訳を当ててしまったのだと思ったのです。春巻きは中華料理の点心の一つで世界中の中華料理店で広くつくられています。どのようにして春巻きの名前になったのかは諸説ありますが、立春に食べる春餅が変化したものではないか、という説が一般的です。春餅は小麦粉を薄く延ばして焼いてつくった、丁度タコスのような料理です。立春を祝い、これから始まる農耕期間の無事を祈って、春の野菜や肉類をはさんで食べました。春巻きはその春餅の皮をもっと薄く大きくして、具材を包み込み、更に、揚げたものに進化した料理です。Spring rollは由来を含めて「春巻き」を上手に表している翻訳だったんですね。今回、鈴木薫先生にワインスクエアらしくワインに良く合う春巻きのレシピを考えていただきました。チーズと生ハムにラズベリージャムを塗って、アクセントに黒こしょうをたっぷり振ります。チーズは今回プロセスチーズを使いました。この春巻きを揚げるのですが、油は少量で大丈夫です。フライパンに浅く、大体1cmくらいです。具材は全部、生で食べられるものばかりですので、中心まで完全に熱くならなくても、色よく揚がれば問題ありません。このチーズとラズベリーの春巻きにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはヤルンバ ワイ シリーズ リースリングでした。ヤルンバ ワイナリーはオーストラリア 南オーストラリア州 バロッサで1849年に創業した老舗です。内外での評価は極めて高いワイナリーで、イギリスの高名なワイン評論家であるマシュー ジュークスが出版した「100のベスト オーストラリア ワイン 2015/16版」ではワイナリー オブ ザ イヤーを受賞しました。これはオーストラリアにあるすべてのワイナリーの中で、その年の最優秀ワイナリーに授けられるという名誉ある賞です。また、オーストラリアの著名なワイン評論家であるジェームス ハリデーは自身の著書である「オーストラリアン ワイン コンパニオン」のなかで、ヤルンバ ワイナリーに最高ランクの5つ星を与えています。今回イチオシに選ばれたワイ シリーズは、ヤルンバの頭文字であるYであるとともに、Your Wine (あなただけのワイン)を見つけてほしい、というメッセージが込められているワインなのです。ヤルンバ ワイ シリーズ リースリングのGI(オーストラリアの原産地名称)はバロッサです。GIバロッサはGIバロッサ ヴァレーとGIイーデン ヴァレーを合わせた総面積13,600haのエリアです。ラベルのイラストはオリーブの木をモチーフにしています。グラスに注ぐと、熟した白桃やリンゴに加えて、パイナップルなどのトロピカルフルーツを連想させる果実の香りがあります。まろやかで豊かな果実味を、リースリングらしいキレのある酸が引き締める、メリハリのある辛口ワインです。チーズとラズベリーの春巻きと合わせると、春巻きのチーズのコクと生ハムの複雑さと、リースリングのしっかりとした構造感とが良く合っていました。ラズベリーの豊かな香りとリースリングの熟した桃や南の島の果物を思わせる香りとが上手く調和していて、ワインも料理も両方が美味しく感じる良い組み合わせだと思いました。揚げ物を作るのを敬遠される方も多いようですが、このチーズとラズベリー春巻きは、ほんの少しの油で揚がりますし、油撥ねも余り有りません。是非、トライしてみてください。