今回のレシピは、サテーです。サテーは東南アジアで広く食べられる串焼き料理です。見た感じは日本の「焼鳥」のような感じで、日本の焼鳥より、ほんの少し小ぶりです。ジャワが発祥の料理だと言われていますが、インドネシアからマレーシア、タイ、中国、台湾などで広く作られています。もともとは甘辛い味で、ピーナッツをすり潰したナッティでリッチな味わいなのですが、世界各地に広がっていくうちに、味付けには幅がでてきたようです。特に中国、台湾は独自の進化を遂げ、プレミックスのタレも数多く販売されており、味わいは、別のものと言って良いくらい大きく異なっています。台湾のものは沙茶醬、沙嗲醬と表記され、味わいの骨格は扁魚(ビュンユイ)を干して粉にしたものです。干し海老なども入り、旨みたっぷりで、甘くないソースなのです。扁魚は辞書での訳はシタビラメとなっていますが、カレイやヒラメの子など、平べったい魚全般を指す言葉のようです。中華料理では、このプレミックスの沙茶醬、沙嗲醬を本来の串焼きのサテーだけではなく色んな料理に使います。肉炒め、野菜炒め、炒飯、焼きソバなどはもちろん、火鍋のタレも、この沙茶醬がベースになる事が多いようです。さて、本来のサテーに戻りましょう。串に刺す肉のバリエーションは広く、鶏、豚、山羊、ウサギ、海老、はてはヘビやオオトカゲまでサテーにして食べます。今回のサテーはタイ料理の鈴木都先生のレシピなのでタイ風のサテーで、豚のロースと海老を使いました。タイのサテーの味わいのポイントはピーナッツとレッドカレーペーストです。ピーナッツは香りを高める為に乾煎りしてから砕きます。ココナッツミルクにレッドカレーペーストとピーナッツ、ナンプラー、タマリンドペーストなどを入れて良く混ぜて、豚のロースと海老を漬けこみます。串に刺して、オーブンや魚焼きグリルで焼けば出来上がりです。
このナッツ香るサテーにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはビオンタ アルバリーニョでした。ビオンタはスペインにしては、涼しく雨の多い北西部ガリシア地方リアス バイシャスのワインです。産地は概ね、海から近く、海岸線は入り組んでいます。皆さんが小学校の時に社会科で習われたリアス式海岸のリアスは、ここリアス バイシャスからきているのです。雨が多く、年間降水量は大体1600mmくらいで東京よりも、沢山降ります。それも9月から10月のぶどうの大事な収穫期に多く降るのです。数年前、全日本最優秀ソムリエの佐藤陽一さんと一緒にビオンタ ワイナリーを訪問した年も、「収穫が始まってから、終わるまでで、雨が降らなかったのがたった1日だった」と醸造長が嘆いていました。その苛酷な環境に適応し育てられてきたのがアルバリーニョ種です。果皮が分厚く、雨が続いてもカビや病気にやられません。香り成分が多く含まれる果皮が厚いので、香り豊かです。若いうちは柑橘系や青リンゴを思わせる香り、熟すと白桃を連想させる香りが出てきて、色も、やや早めの段階からゴールドを帯びるのが特長の品種なのです。ビオンタ アルバリーニョをグラスに注ぐと、色は比較的濃いめで、少し金色のニュアンスがあります。鼻を近づけると、爽やかな柑橘と白桃や黄色い花をイメージさせる香りがあります。口に含むと辛口で力強く、骨太な感じのする白ワインです。海老のサテーと合わせると、ピーナッツとココナッツの力のある風味に負けません。
「ビオンタ、強いですね」
「海老の、コクのある旨みと、ぴったりです」
スパイシーでナッツの濃厚さのあるソースにも、全く力負けしていませんでした。
「海老の味わいが一段と深みを増します。なんでしょうね、この合い方は・・・・」
現地でも、アルバリーニョには手長海老や小エビ、そして、ペルセデスと呼ばれるカメノテを合わせます。カメノテも甲殻類ですので、アルバリーニョは海老、カニに鉄板のワインと言えるのです。その他の軽やかな辛口がサテーの力に押されてしまっている印象のあるなか、ビオンタと海老のサテーは絶妙にマリアージュしていました。