今回のレシピは、フェジョアーダ、ブラジルを代表する国民的料理です。ポルトガル語圏ではポピュラーな食べ物で、ポルトガル本国や東ティモールなどでも良く食べられるようです。フェジョアーダはフェイジャオンと呼ばれる黒インゲン豆を使った、いわゆる、ごった煮料理で豚の様々な部位やソーセージ、牛の干し肉などを長時間煮込んで作って、普通はご飯にかけて食べます。味付けは、塩、それもちょっと辛めの塩味が基本で、胡椒は使わないそうです。街の大衆食堂のようなところには、もちろんありますし、フェジョアーダ専門店もあるそうです。一流ホテルのメインダイニングのような高級な場所でも提供されます。日本人の感覚でいうと、ちょっと不思議かもしれません。例えて言うと、親子丼がホテルのメインダイニングのメニューにある感じでしょうか・・・・。乾燥した黒インゲン豆を水で戻すところから始めると出来上がりまでで2日がかりになりますが、缶詰や圧力鍋を使うと比較的早く出来ます。今回、肉は豚のスペアリブを使いました。豆が黒インゲンなので、出来上がったフェジョアーダは黒みを帯びた色合いです。豆が、ところどころ煮崩れて、美味しそうです。この暑い季節にぴったりのフェジョアーダにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、サンタ バイ サンタ カロリーナ カベルネ・ソーヴィニヨン、チリのワインでした。日本における輸入ワインの国別ランキングは1970年のワインの輸入自由化以来ずっとフランスが数量トップの座に君臨し続けていました。45年間チャンピオンだった絶対王者フランスを、2015年、ついにチリが逆転したのです。チリは、ぶどうにとって天国のような国です。ぶどうの天敵のフィロキセラが国単位として居ない、ほぼ唯一の国です。また、雨が少なく、乾燥しているので、病害虫の被害が少ないです。リスクが少ないので農薬など化学薬品の使用を減らす事ができます。ぶどう産地は南緯27度から39度と比較的緯度の低いところに位置しますので、日射が強くぶどうの糖度が良く上がります。緯度が低い割に暑くないのは、国の西側を南極から寒流であるフンボルト海流が流れているおかげで、昼間も比較的涼しく、朝夕はぐっと気温が下がり、酸が豊かになります。果物にとって、糖、酸ともに豊かなのは、この上なく好ましい事なのです。雨は少ないのですが、灌漑用の水はアンデス山脈の雪解け水が豊富にあるので、比較的簡単に調達できるのです。水さえ与えておけば美味しいぶどうが栽培できる国、それがチリなのです。チリのワインが日本で注目され始めたのは1996年の後半ごろです。現在の一般社団法人日本ソムリエ協会の田崎真也会長がA.S.I(国際ソムリエ協会)の世界最優秀ソムリエになったのが、1995年の事でした。その後、田崎ソムリエは、テレビのニュース番組などに出演し、彼の当意即妙の受け答えが評判になり、レギュラー番組を沢山持つようになりました。いろんなパターンの番組のなかで、ゲストからの「安くて美味しいワインは何ですか?」の問いかけに「チリのカベルネ・ソーヴィニヨン」と答える事が多かったことから、徐々にチリのカベルネ・ソーヴィニヨンが良く売れるようになり「チリカベ」ブームがおこりました。この田崎ソムリエから端を発するワインの盛り上がりが、98年をピークとするポリフェノールブームへと続いていくのです。その後、ポリフェノールブームが去った後、チリワインの輸入量は一旦落ち着き、2000年から2006年まで、輸入量は大体90万ケース位で、しばらく足踏みしました。その後2007年から、突然、力強く伸び始めました。きっかけは日本とチリの間で結ばれた自由貿易協定(FTA)です。2007年に発行し、これにより関税が徐々に低減されていきました。これにより、高品質のチリワインが、更にお手頃な価格で購入出来るようになったのです。
サンタ カベルネ・ソーヴィニヨンは、チリの中心的栽培地であるセントラル ヴァレーのぶどうを使っています。グラスに注ぐと少し明るいタッチを持ったガーネット色です。香りはブルーベリーやアメリカンチェリーなど良く熟した果実を連想させる香りが主体です。カベルネらしいちょっと針葉樹などの植物的なニュアンスもあります。口に含むと程よいボリューム感があります。果実味たっぷりで、心地良いタンニンが感じられるワインです。フェジョアーダと合わせると、肉の旨みをたっぷりと含んだスープの「濃さ感」とワインの濃度がぴったり合う感じです。スープといっても、液体ではなく、黒インゲンが煮崩れて出来たとろみのあるスープなのでかなりの濃さです。
「豚肉の旨みが、サンタの赤で素直にアップします」
「うん、それも過剰に肉々しい感じじゃなくて、豆とバランスが良くとれた美味しい肉って雰囲気ですよ」
「本来は豚耳とか尻尾とかを多く使いますので、皮からのゼラチンを多く含んでいて、もっと、とろみがある料理です。今日の肉はスペアリブなので少しさらっとします。なので、濃すぎる赤ワインよりも、少し軽やかな赤の方が合うのかもしれません」
「サンタの赤と合わせるとフェジョアーダからハーブのニュアンスが出てくる感じです」
ブラジル料理は、基本的に、スパイスやハーブを使いません。今回のレシピではローリエを1枚だけ使いました。サンタと合わせた時に、その唯一使っているローリエのニュアンスが引き出され、とても心地良く感じられました。
「ご飯と合います、私はご飯が一緒の時のフェジョアーダとサンタが良く合っていると思いました」
気軽な店から高級店、そして家庭でも楽しまれる南米ブラジルの国民食フェジョアーダ、お試しください!
そして南米生まれのサンタを、是非合わせてみてください!!