今回のレシピは、セビーチェです。セビーチェはペルーの国民食で、ラテンアメリカ各国、特に太平洋岸のチリやメキシコで良く見かける料理です。簡単に言うと魚介類のマリネなんですが、単なるマリネにはない美味しさがあります。ペルーには、セビーチェの専門店であるセビチェリアが沢山あります。インターネット上にはセビーチェ専用のホームページまで有り、その名もセビーチェペルー(cebicheperu)です。セビーチェの日(Dia Nacional del Cebiche)も制定されており、6月28日です。この日は聖人ペテロの日のイブにあたります。ペテロは「ペテロの否認」で有名なシモン ペテロで、元漁師だったので、ペルーでは漁業の守り神として崇められていています。聖人ペテロの日にはペルー各地の漁港で豊漁を願う行事が盛大に行われます。海の守り聖人の日のイブがセビーチェの日に選ばれているのはペルー国民がセビーチェを愛しているからでしょうね。セビーチェに使う魚は白身魚が多いのですが、ホタテやハマグリなどの貝類やエビ、タコ、イカ、ウニ、青魚など幅広く何でも使います。それらの素材を、基本的には生のまま、玉ねぎと唐辛子と良く混ぜ、塩と柑橘で〆ます。茹でたり、煎ったりしたトウモロコシやサツマイモを添えるのが定番と言われていますが、無くても構いません。今回の魚は、ひらめを使いました。もしひらめが無ければ鯛でも鰈でも何でも構いません。柑橘はライム、こちらも、無ければレモンでオッケーです。このセビーチェにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはガゼラ、ポルトガルのヴィーニョ ヴェルデでした。ヴィーニョ ヴェルデは直訳すると緑のワインで、ポルトガルの北部の大西洋岸で生産されます。ポルトガルで最も北のエリアになりますからポルトガルとしては比較的冷涼な産地です。軽やかな辛口で、きりっとした酸が特長です。実は、このガゼラを20年ほど前にも輸入した事があります。その当時のラベルは緑色で偶蹄類のガゼルが描かれていました。現在のラベルはシルバーメタルで海をイメージしていて涼し気です。ラベルの下に書かれた“FRUTOS DO MAR”は、「海の幸」の意味なんですよ。
「夏に美味しいワインですね!」
「フレッシュで瑞々しい酸味が心地良いですね。色もほんのり緑をおびています」
口に含むと軽やかで、かなり明確な泡を感じます。辛口で、キレの良い酸が豊かです。
セビーチェと合わせると、セビーチェの生き生きとしたライムの酸味と、ガゼラの爽やかな酸が相乗効果で口一杯に清々しく広がります。キリリと引き締まった味わいの中から、ひらめの繊細な旨みがじわじわっと出てくる感じです。
「ガゼラと合わせた方が、ひらめの味がくっきりします」
「うん、セビーチェだけだと、爽やかさだけがが前面に出てしまっていて、ひらめの味わいが見えなかったけど、ガゼラと合わせるとひらめが前に出てくる感じですね」
「料理とワインのどちらも上がる、良いパターンだね」
「ライムとガゼラの酸が合わさると、酸ばかりが強調され過ぎるかも?と心配しましたが、良い感じにまとまっていますね」
香菜の緑の香りとガゼラのフレッシュハーブを思わせる香りとも、良く合っていました。
ペルーのセビーチェ専門店のセビチェリアは、お昼だけしか営業していない店が多いそうです。それは冷蔵庫の無い時代、朝、獲れた魚を、夜まで生で食べられる状態で維持できなかった頃の名残だそうです。日本には、いつでも、お刺身で食べられる魚があります。ワサビと醤油で食べるお刺身も美味しいですが、是非一度、ワインに良く合うセビーチェをつくってみてください。そして、このガゼラとの相性の良さを試してみてください。