今回のレシピは、ポークポットローストです。ポットローストはアメリカの家庭でよく使われる料理法です。フランス料理の調理方法では「焼く」に相当する言葉は幾つもあります。グリエとロティ、ソテー、ポワレ、ムニエルなどです。ソテー、ポワレ、ムニエルはフライパンで焼き、グリエは直火、ロティはオーブンで焼きます。ポットロースト(ロティ)は、名前から推測するに、鍋をオーブンに入れて加熱(ロティ)する事からこの名前がついたのだと思います。アメリカではそこから独自に進化していって、オーブンは使わないで、コンロで鍋を弱火で加熱して作るレシピの方が主流になっている気がします。実際アメリカの料理番組でポットローストをやっていたのですが、「ポットローストは出勤前にスロークッカーに(広く普及している電熱式の煮込み作り器)入れておくと便利よ」と薦めていました。
今日のレシピでは肉は豚肩ロースの塊肉を使いました。タコ糸で縛り、鍋で焼色を付けていきます。野菜にも火を通し、白ワインをたっぷり加え、沸騰したら180度のオーブンで40分、肉はホイルに包んで休ませ、煮汁はソースにします。
この、ポークポットローストにテイスティングメンバーが推薦するイチオシワインはサンタ カロリーナ レセルヴァ デ ファミリア シャルドネでした。サンタ カロリーナ社はチリでも指折りの老舗ワイナリーで1875年にドン・ルイス・ペレイラ・コタポスによって創業されました。ワイナリーの名前は創業者の愛する妻、カロリーナ夫人の名前にちなんでいます。ドンは妻を、そして家族を大切にしていたんですね!レセルヴァ デ ファミリアは、その「家族の為のとっておきワイン」という意味で、一般には市販されないワインだったんです。チリワインが世に知られるようになったのは、サンタ カロリーナのレセルヴァ デ ファミリア カベルネ・ソーヴィニヨンが1889年、第4回パリ万国博覧会で金賞を受賞したのがきっかけだと言われています。まさにこのシリーズなのです。この第4回パリ万国博覧会はエッフェル塔が建設された万博としても有名です。サンタ カロリーナが日本に登場したのは1998年の4月でした。当時TVコマーシャルも行われ、レセルヴァ デ ファミリアの100歳を超えるぶどうの樹が紹介されました。チリはぶどうの宿敵であるフィロキセラが居ない国です。その100歳を超えるぶどうの樹は、見るからに筋肉隆々な印象を受ける樹形で、幹は成人男性の太腿よりも太かったです。フランスなどでのヴィエイユ・ヴィーニュ(老樹)のぶどうには房がちょっぴりしか付きませんがレセルヴァ デ ファミリアの樹には若木に劣らず沢山の房が付きます。そしてその多くの房が本当に素晴らしく凝縮するのです。接木をしていない、自根ならではのエネルギーを感じるぶどうの樹でした。レセルヴァ デ ファミリア用の100歳を超える畑は、チリの首都サンチアゴの中心部に程近いところにありました。都市化が進むにつれすっかり市街地にとり囲まれ、ぶどう園としての環境が良く無くなったので、一部のぶどうを別の畑に移植する事になりました。カベルネ・ソーヴィニヨンはマイポヴァレー、シャルドネはカサブランカ ヴァレーの冷涼なエリアにそれぞれ植え替えられました。今では何と120歳を超えるような、その時に移植された超老樹のぶどうも使っているのが本日イチオシに選ばれたレセルヴァ デ ファミリアのシャルドネなのです。グラスに注ぐと、少しとろりとした佇まいです。色も、ほんのり金色を帯びています。熟した柑橘のニュアンスや赤いりんごを思わせる少し甘いトーンがあります。ポークポットローストと合わせて飲むと、まず、素直な相性の良さを感じます。塊で火を入れられた豚の、しっかりと肉汁が閉じ込められた肉の旨味とシャルドネの骨太なボディが非常に高いレベルで均衡しています。
「リッチですね」
「旨味同士の、がちんこ勝負!って感じだなぁ」
「肉は塊のほうが美味しいです、これは旨味が逃げにくいから当然です、その表面を焼き〆て肉汁が逃げないようにしているから更に美味しいんですね」
豚の脂身部分の甘さとレセルヴァ デ ファミリアの果実の凝縮からくる甘さもぴったりと合っていしました。
皆様も家族の大切な夜を、豚の塊肉の極上の美味しさと特別なレセルヴァ デ ファミリアのシャルドネでお楽しみくださいませ。