今回のレシピは、カスレです。カスレは、フランスの南部、ラングドック地方から南西地方の地方料理で、白インゲン豆と肉を煮込んだ料理です。肉の種類はさまざまで、ソーセージ、鴨、ガチョウ、豚肉などが使われます。エリアによってアレンジが異なっていて、特に有名なのが、ラングドック地方のカステルノーダリとカルカソンヌ、南西地方のトゥールーズの3カ所のものです。カスレの語源と強く結びついているのはカルカソンヌです。古くからカスールと言う雑穀や豆を煮た料理が食べられていたそうで、カスールはカルカソンヌの町の名前が由来になっているそうです。フランスのハイパーマーケットの棚に缶詰で一番多く並べられているのがカステルノーダリで、カステルノーダリはカスレの聖地とも呼ばれているそうです。カステルノーダリはトゥールーズとカルカソンヌのちょうど真ん中あたりになります。トゥールーズはフランス第5の大きな都市で、フォアグラの産地でもあるので、トゥールーズのカスレにはフォアグラをとる為に育てられたガチョウをコンフィにしたものが多く使われます。この3カ所はワイン生産地でいうとラングドック地方と南西地方に分かれますが、一番離れているカルカソンヌとトゥールーズでも直線距離で85kmと、さほど離れていません。トゥールーズの市街地から北東方向にはガイヤック、真北にはフロントンのぶどう畑が広がります。カルカソンヌの街もワイン産地に囲まれています。真北にカヴァルデス、そこから時計回りにミネルヴォワ、コルビエール、リムー、マルペールのワイン産地があります。
乾燥した白インゲン豆を戻す作業からすると、2日がかりの時間のかかるレシピになりますが、豆の水煮缶をつかえば2時間余りで出来ます。とはいえ、煮て、さらにオーブンで焼き上げますから手の込んだお料理と言えます。今日のレシピでは肉は豚バラの塊肉とベーコンとソーセージ、そして鶏の骨付きぶつ切り肉を使いました。
この、カスレにテイスティングメンバーが推薦するイチオシワインはビニャ マイポ リミテッド エディションでした。ビニャ マイポはチリNo.1*のワイナリーとして有名なコンチャ イ トロのグループです。チリは皆様ご存じのとおり南北に細長い国で、国そのものは、南緯17度から南緯56度と南北に広がり39度もの緯度の差があります。ワイン畑は南緯27度から39度まで南北1400kmにもわたって分布しています。重要な産地は首都サンチアゴの北側のアコンカグア ヴァレーから南のエリアで、中でもマイポ ヴァレーは良いワインの生産地として知られています。ビニャ マイポは1948年にそのマイポ ヴァレーで設立されました。歴史ある生産者ですので、産地の名前をそのまま生産者の名前として使用する事が許されています。2007年にマックス ウエインラブ氏を醸造長に迎え入れ品質向上に取り組みました。マックスはビニャ マイポの醸造長に就任する前は、コンチャ イ トロでマルケス デ カーサ コンチャやカッシエロ ディアブロといった高級ラインナップのワインづくりに取り組んできました。それまでは、「チリの高級赤ワインといえばカベルネ・ソーヴィニヨン」といった図式が出来上がっていました。マックスは「カベルネ・ソーヴィニヨンは確かに比類なき素晴らしいぶどう品種だと思う。でも、自分の理想は、ちょっと違うイメージなのだよ。オリジナリティのある、違うタイプのチリ最高峰ワインをつくりたいのだ」と考えていました。マックスが目をつけたのはシラーでした。彼はビニャ マイポの一番良い区画をシラーに植え替えて行きました。今回のマリアージュ実験で試飲したリミテッド エディションは2011年ヴィンテージでした。手摘みで収穫されたシラー97%に、3%だけカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしました。ステンレスタンクで発酵後、フレンチオークで30ヶ月もの長期熟成をしました。色の濃いベリー、カシスやブラックチェリーを連想させる果実の凝縮感とスパイスのイメージがあります。力強く構造は大きいなワインなのですが、タンニンが溶け込んでいて、緻密でエレガントです。カスレと合わせると、厚切りベーコンや骨付きの鶏肉からでた濃厚な旨みとリミテッド エディションの力強い構造力がぴったりマッチしていました。
「豚バラやベーコンのコクをインゲン豆が吸って、本当に美味しいですね」
「ベーコン、豚バラ、ソーゼージと骨付きの鶏肉で、肉だけで4種類入っています、旨味成分が複雑に織り込まれているのですね」
「シラーのキメ細かでベルベットを思わせる肌触りがしっくりと馴染みます」
煮込むのに使ったスパイス類とリミテッド エディションのシラーの品種の特徴であるスパイシーさとが綺麗なハーモニーを奏でていました。
「ベーコンの燻した香りとビニャ マイポが良い感じです」
「シラーにはビーフジャーキーのような動物的な香りも有りますからね」
暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い日が続きます、心も体も暖まるカスレとマイポのシラー、是非お試しください。
* IMPACT DATABANK 2012 EDITION 2012年度 チリ生産者別ワイン製造数量