今回のレシピは、白菜のラザニアです。ラザニアは、世界で幅広く食べられているイタリア料理で、ラザーニャとも表記されます。平たい板状のパスタとミートソースやベシャメルソースを交互に重ねてオーブンで焼いた料理で、ラザニアという名称自体は、古代ローマで使われていた浅い鍋を指す言葉から転じたようです。ナポリ風とミラノ風があって、ミラノ風はミートソースやベシャメルソースを交互に使い、ナポリ風はミートソースだけを使うレシピが多いです。パスタは大きくて平らなものが主流ですが、波打ったものも使われます。今回のレシピではパスタを使わずその代わりに白菜を使いました。白菜はフランスではChou chinois(中国キャベツ)と呼ばれています。アブラナ科の二年生植物で、日本の野菜栽培量でキャベツ、大根に続く第3位を誇ります。鍋物や漬物には欠かせない冬の野菜ですよね。茹でて柔らかくした白菜をパスタに見立てて、ラザニア皿に白菜、ミートソース、マスカルポーネチーズの順番に数回重ねて行きます。一番上にピザ用チーズをかけてオーブンで焼けば出来上がりです。
この、白菜のラザニアにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはマクラン ピノ ネロでした。マクランは1917年にヴェネト州ブレガンツェ村に創業したワイナリーです。読者の皆さんでイタリアワインに詳しい方でもブレガンツェ村は、まずご存知無いかと思います。ヴェネツィアの北西約65km、ヴェローナからは北東に約65km、人口8,700人の小さな村です。北緯45度ですから日本でいうと稚内に相当する北の地です。当主のファウスト マクラン氏が3代目で、コネリアーノの醸造学校を卒業後、フランスやカリフォルニアで経験をつみました。ブレガンツェ村のマクランに戻り、日々ワインの品質向上に取り組み、試行錯誤を重ねました。イタリアワインの名醸地が数多くあるヴェネト州にあって、このエリアは降水量が多く、天気の悪い日も比較的多いため、天気の良い他の産地ではあまり要らない心配りが必要な事に気がつきました。マクランの畑は入り組んだ斜面にあります。畑の区画により斜面の向きが大きく違うのです。日中、太陽は大空を東から南の高いところを通り西に進みます。当然、陽の光の射し込んでくる方向が変わります。同じ方向に畝を揃えてぶどうを植えれば農作業の効率は上がりますが、隣の列のぶどうの樹の陰になり十分に光が当たらないぶどうが出てきてしまうのです。彼は傾斜や水はけ、谷と稜線との関係で変わる空気の流れる方向などを考えて細かくぶどうを植える畝の向きを変えました。少なめの日照を最大限に活かす為にキャノピーマネージメント(樹冠管理=ぶどうの成熟期に実の回りの葉っぱをむしって、果実に太陽の光があたるようにする作業)を徹底しました。そういった、きめ細かな改革が実を結び、著名なワイン評論家からも高い評価を受けるようになりました。徐々にブレガンツェ村は知らなくても、マクランの名前は知られるようになっていったのです。現在はアンジェラとマリアの2人のお嬢さんも加わり、日々ワイン造りに励んでいます。今回イチオシに選ばれたピノ ネロはピノ・ノワールのイタリア語表記です。ブルゴーニュと同じくピジャージュ(浮かんだ果皮などを棒や人間の足などで沈める事)を行い発酵させます。樽熟は控えめです。全体の量の1割にとどめ、樽熟期間は大体2ヶ月、残りの9割はステンレスタンクで熟成させます。素直な果実味で、赤いベリー、特に日本のさくらんぼやフランボワーズを連想させる香りがあります。口のなかでも、滑らかでシルキーなワインです。白菜のラザニアと合わせるとミートソースのトマトの味わいと良くマッチしていました。
「ミートソースの味の広がりと、マクランの優しい充実感が心地良いですね」
「とっても自然なマリアージュです。肉の旨みとピノ ネロのコクの濃さ感が同じレベルなのだと思います」
ワインと料理のマリアージュを考える時、ワインと料理のテクスチュアやボリューム感が同じくらいである事は「合う要素」として大事な事です。
「白菜からでてくる甘みも、ピノ ネロの素朴な甘やかさと良くなじんでいます」
歴史と伝統のあるイタリアワイン産地に、新たに名乗りを上げた、こだわりのマクラン、是非、この白菜のラザニアとともにお試しください。