今回のレシピは、プーニム パッポンカリー、タイ風ソフトシェルクラブのカレーです。ソフトシェルクラブはカニの種類の名前ではなくて、脱皮したての殻が柔らかい状態のカニ全般を指します。カニの種類はワタリガニ科のブルークラブの場合が多いですが、オーストラリアでマッドクラブと呼ばれるノコギリガザミを使う場合もあります。捕獲し生簀にいれたカニを注意深く観察し、脱皮し始めたものだけをソフトシェルクラブとして出荷します。捕るときは大変手間のかかるカニですがソテーしたり揚げたりすると殻ごと食べられるので、食べるときには身をほじくる手間はありません。アメリカでは幅広く食べられており、カリフォルニアロールで大人気のスパイダーロールはソフトシェルクラブを揚げて巻いたお寿司です。日本では普通の街のスーパーあたりではあまり見かけません。ネットには昔に比べてずっと低価格のソフトシェルクラブを安定的に販売している店が何軒かあるので今回食材として取り上げました。プーニムのプーはカニ、ニムは柔らかいでソフトシェルクラブの事です。パッポンカリーのパッ は炒める、ポンカリーは、カレー粉の意味です。ソフトシェルクラブは解凍し、片栗粉をまぶして、カラリと揚げます。味付けのポイントはカレー粉もさることながらチリ・イン・オイル(ナンプリックパオ)です。カレー粉の倍量使います。チリ・イン・オイルは唐辛子、ニンニク、タマネギ、干しエビを油で揚げてすり潰しペーストにしたものです。トムヤムクンの味付けの主役のイメージが強いかもしれませんが、炒め物や和え物など、何にでも使える万能調味料で家に一本あると便利です。最近は高級スーパーやデパート、最近出店活発で輸入食材に強いコーヒー屋さんにも取り扱いがあり、もちろんネットでも買えます。
このタイ風、ソフトシェルクラブのカレーにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサンタ バイ サンタ カロリーナ ソーヴィニヨン・ブランでした。このワインは今年創業140周年を迎えるサンタ カロリーナが満を持して送り出す新製品です。チリワインは日本の国別ワイン通関実績、2014年度でトップのフランスに肉薄する第2位に急伸長、そして、なんと2015年1-3月ではフランスを逆転し第1位に輝きました。*1
グラスに注ぐと、レモンやグレープフルーツを思わせる爽やかな香りが豊かです。口に入れると軽やかで、イキイキした軽快な酸味と、程よい厚みが感じられます。
プーニム パッポンカリーからはスパイシーで香ばしく複雑な香りが立ち昇ります。カニをかじると表面はカリッとしていて、でも殻は柔らかく、噛むとカニの白い身の甘み、旨味がじゅんわりと出てきます。ミソの入ったところは濃厚なコク味があり、カレー部分の奥行きのある味わいと良く合います。
サンタ バイ サンタ カロリーナと合わせると、ソフトシェルクラブのカレーのハーブ系の香りが前面に出て強調されるイメージでした。力強い味わいのソフトシェルクラブに軽やかながら、程よい厚みのあるワインが丁度良くバランスしていました。
「料理のコクの方がワインより、ずっと強いかと思いきや、なかなか良い感じですね」
「確かに・・・ワインだけをテイスティングしたら、かなり軽い感じがしますが、実際にあわすと、サンタ、意外に強いです」
「シャルドネの厚みでしょうかね・・・」
「このプーニム パッポンカリーはワインに良く合いますが、ご飯もすすみそうです!」
ソフトシェルクラブの細い脚の部分はカリッと、さくっと揚がっていて高級えびせんの佇まいです。
「ハーブが強調されますが、プーニム パッポンカリーにはフレッシュハーブはネギ系以外、使っていないんですよね?」
「チリ・イン・オイルやシーズニングソースがスパイシーだからでしょうかね」
ソーヴィニヨン・ブランの持ち味である爽やかなニュアンスが料理とマリアージュして強調されたのだと思います。これからも、まだまだ、暑い日もあるかと思います。このワインに良く合うプーニム パッポンカリー、是非お試しください。
*1 通関データ 果実酒2L未満数量