今回のレシピは、あさりとマッシュルームのアヒージョです。あさりはマルスダレガイ科アサリ属の二枚貝で日本では、ほぼ全域に広く分布しています。河口付近の汽水域の浅い砂泥地を好みます。政府の海面漁業生産統計調査2013年度版によりますと日本全国で2万3千トン漁獲されます。トップは愛知県、2位は三重県、3位は千葉県です。昔は春になるとあちらこちらの海岸であさりの潮干狩りが行われていました。早春の時期には、ぽってりと身が太り、美味しくなります。今回はそのあさりをスペイン風にアヒージョにします。小さい鍋にオリーブオイルを入れ、にんにくと赤唐辛子をいれます。少しふつふつしてくると、にんにくの良い香りと唐辛子の少し刺激のある香りがしてきます。このタイミングであさりとマッシュルームを入れるのですが、油の温度が上がり過ぎると貝の水で油が撥ねますのでご注意ください。貝の口が開いたら出来上がりです。調理している時間は短く、ある意味簡単な料理です。大ぶりで身の太ったあさりと、ちょっと良い目のオリーブオイルがあれば美味しくできます。
このあさりとマッシュルームのアヒージョにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはフレシネ アシュツリー エステート シャルドネ/マカベオでした。アシュツリー エステートの'アシュツリー'とはフレシネ社の社名の由来である「ラ フレシネーダ」(トネリコの木)の意味で、ラベルデザインにもなっています。ワインメーカーはなんと日本人!大学卒業後、普通のOL勤めをしたのですが、どうしてもワイン造りがしたくて、単身スペインに渡ったという経歴をお持ちの佐藤陽子さんです。佐藤さんはスペインでワイン造りを勉強していくうちに、スペイン以外では余り知られていないスペイン固有のぶどう品種の素晴らしさに気がつき、その良さを知って欲しいと思うようになりました。ただ、その固有品種100%でワインを造っても、名前を知らない消費者の方々は手にも取ってもらえない・・・・・どうしたら良いだろう・・・・・と佐藤さんは悩みました。見つけた答えが、親しみのあるメジャー品種とスペイン固有のぶどう品種を融合させることでした。そうして出来たのが、このフレシネ アシュツリー エステートです。白はシャルドネとマカベオの融合です。マカベオはビウラとも呼ばれる品種で、フルーティで花を思わせる香りがある清楚で控えめな品種です。ペネデスやリオハで広く栽培され、ペネデスではカヴァの三大品種のひとつとして知られています。フレシネ アシュツリー エステート シャルドネ/マカベオはマカベオとシャルドネを50%ずつ使っています。淡いレモンイエローの色合いで、白い花や柑橘系の果物を連想させる香りがあります。心地よい酸、爽やかな中に柔らかみも感じられるワインです。
あさりとマッシュルームのアヒージョからはオリーブオイルの緑っぽい香りとニンニクの良い香りがしています。あさりを手に取り、口に運びます。噛んだ瞬間、口の中に潮の香りが広がります。アシュツリー エステートと合わせるとワインのふくよかな味わいとあさりのコクのある旨味とがぴったり合っています。オリーブのグリーンのイメージとマカベオの若々しい充実感もしっくり来ています。
「マカベオの酸が柔らかいのが、良いですね」
「うん、このアヒージョは酸が切れるタイプのワインより、穏やかな酸のワインのほうが合わせ易いのかな」
「ほんの少しほろ苦さがあるところが味わいを引き締めていますね」
「マッシュルームとも良く合っています」
スペインのタパス(小皿料理)とスペインのニュータイプワインの素敵なマリアージュを体感したテイスティング実験でした。