今回のレシピはラムのクラウンローストです。子羊はフランス料理に使われる食材のなかでも最高級にランクされるもののひとつです。子羊と親羊(マトン)の線引きは国毎に規定が違うようです。ニュージランドでは子羊=ラム : 生後12か月以内で永久門歯が生えていない羊と規定されています。(永久門歯が1本生えていても磨り減っていない=草を食べていなければ可)
その子羊の中でも最高級とされるのが乳飲み子羊(Milk-fed Lamb)で、母乳だけで1ヶ月から1.5ヶ月育てた小さな小さな羊です。フランスでもアニョー ド レと呼ばれ、ボルドーのポーイヤック産が有名です。
羊は大人になると、肉の色が黒味を帯びて香りもクセが強くなりますが、子羊は肉の色は美しく香りのクセもほとんどありません。
今日はその子羊をローストにするのですが、年末年始のご馳走料理にふさわしく王冠仕立てで焼き上げます。ソースにもこだわります。フランボワーズを赤ワインで煮て、ぎゅっと詰めたソースです。写真のソースの色を見てください!!鮮やかな赤色でしょ!!!
更に付け合せにハーブマスカルポーネを添えました。といっても、手間のかかるものではありません。ミントの葉を刻んで、マスカルポーネに混ぜて荒挽き黒こしょうを掛けただけです。
子羊が焼き上がると、オーブンから肉の焦げる美味しそうな香りがしてきます。子羊のほんの少しだけ特徴的な、なにか心懐かしくなるような良い香りです。皿に盛るとボリューム感たっぷりでゴージャスです。皿に敷かれたフランボワーズ赤ワインソースからはフランボワーズの酸を連想させる香りもしてきます。
このラムのクラウンローストにテイスティングメンバーがイチオシに選んだワインは、ル オー メドック ド ラグランジュ、シャトー ラグランジュがオー・メドックで手がけるワインでした。シャトー ラグランジュはサンジュリアン村に位置しメドック格付けの第3級で、サントリーが1983年から手がける名門ワイナリーです。ボルドーワインは、この7-8年、中国からの引き合いが強くなり、2005年ヴィンテージ以降、価格がじわじわ上がっていました。特に2009年ヴィンテージからは格付けワインの価格は鰻登り、ファーストワインのみならず、セカンドワインさえ、なかなか手を出しづらい価格になってしまいました。「もっと気軽に食卓で開けてもらえるボルドー」を目指すラグランジュは、セカンドワインであるレ フィエフ ド ラグランジュよりさらにお手軽なワインを開発すべく、サンジュリアン村の隣村のサン・ローラン村(16.3ha)とキュサック村(3.2ha)に新たに畑を取得しました。そうして誕生したのが、このル オー メドック ド ラグランジュなのです。最初のヴィンテージである2012年はカベルネ・ソーヴィニヨン 70%、メルロ 30%の品種構成です。ラグランジュの醸造棟に運ばれたぶどうは、光センサーシステムと手作業で丁寧に選果しされます。醸造は温度管理したステンレスタンクを使用。マセラシオンは15日~3週間かけて行います。100%フレンチオーク樽で14ヶ月熟成。伝統的な方法で3ヶ月ごとに澱引きを行い、卵白による清澄を行いました。香り華やかで、スグリや赤いさくらんぼを思わせる柔らかいニュアンスと、フレッシュハーブを連想させる涼やかな心地良さがあります。素直な凝縮感とピュアな果実味を持つ、ほど良い厚みのワイン。 ラグランジュらしく、清楚で控え目、エレガントなワインに仕上がっています。
子羊と合わせます。エレガントなワインでありながら、子羊の充実した旨みをしっかりと受け止めています。しっとりとした脂とキメ細かなタンニンがマリアージュして甘さに転換します。
「うーーーん、王道ですね」
「ボルドー左岸のカベルネ主体のワインと子羊は美食の鉄則だからね」
「ル オー メドック ド ラグランジュは軽やかなワインなんですが、強い料理に負けていません」
「でしゃばらず、下からそっと支える感じかなぁ」
フランボワーズソースの赤い果実味とも、ぴったり調和していました。
王道、定番の凄みをまざまざと見せ付けられたマリアージュでした。