今回のレシピは、熟成肉のステーキです。最近雑誌の特集で肉がテーマになることが多く、とりわけ熟成肉への注目度が高い気がします。わざわざ熟成肉と名乗っていない普通の国産の牛肉は熟成させない、と言うことではありません。通常に流通している国産牛は屠畜してから4週間程度熟成されます。熟成肉と何がちがうのでしょう?実は熟成の仕方が違うのです。伝統的な通常の熟成はウエット エイジングと呼ばれ、布で肉の塊をつつんだり、真空パックして熟成をおこないます。それに対して最近話題の熟成肉はドライ エイジングと呼ばれ、湿度70%から80%で空気が循環している状況で肉の表面が空気に触れる状態で熟成されます。当然水分は蒸発し重量が減ります。表面も乾き、カビに覆われます。この状態で20日から2ヶ月熟成が施されますと、たんぱく質が分解され、肉の旨みがぐっと増すのです。ちなみにこの日に焼いた肉は屠畜してから105日目の肉でした。熟成肉そのものとワインの相性を見るために、ソースは使わず塩胡椒だけで焼きました。付け合せもあえて、マッシュポテトとクレソンだけにしました。焼くときのコツは、肉の中心まで室温に戻すこと、弱火でじっくり焼き、こんがりと焼き色が付いたところに塩胡椒をする事です。こうする事で表面はかりっと、中は肉汁たっぷりでジューシーなステーキが出来上がります。
この絶品熟成肉のステーキにテイスティングメンバーがイチオシに選んだワインはロス ヴァスコス カルメネール グランド レゼルブでした。ロス ヴァスコスは、ボルドー メドック第一級、それも筆頭格付けである「シャトー ラフィット・ロートシルト 」を擁するドメーヌ バロン ド ロートシルトが1988年からチリで手がけるブランドです。ドメーヌ バロン ド ロートシルトではチリの象徴的ブドウ品種であるカルメネール100%使用でワインを造りたいと試行錯誤を繰り返してきました。コルチャグア ヴァレーのぶどうを手摘みしステンレスタンクで発酵、その後シャトー ラフィットの製樽工場でつくられたフレンチオーク樽で12ヶ月熟成します新樽比率は20%です。この時に試飲した2012年が初ヴィンテージになります。
色は濃く、黒みを帯びた赤。ブルーベリーやブラックチェリーを思わせる香り、や、スパイス、ハーブを連想させる香りもあります。口に入れると、充実感のある果実味で、豊かな味わいと長い余韻を持った逸品です。
熟成肉のステーキにナイフを入れると、肉汁が溢れてきます。口に運ぼうとすると、濃厚な肉の香りがします。口にいれると肉質は柔らかく、複雑な旨みがあります。ロス ヴァスコス カルメネール グランド レゼルブと合わせると、力のある濃いワインの香りと厚みのあるボディと濃密な肉の旨みが絶妙にマッチしていました。
「肉!複雑な旨みですね」
「サシもけっこう入っているんですが、赤身の力を感じます」
「旨みが半端無く強いんですが、ワインが全く負けていません」
「旨いね・・・・・・・」
力と力のぶつかり合いの中で生まれる、安心感のある調和を感じました。
ロス ヴァスコスの迎賓館のまわりにはユーカリの森があるのですが、ユーカリの葉のミントを思わせる香りがロス ヴァスコス カルメネール グランド レゼルブにも少しあり、その香りがステーキのパワフルな味わいに爽やかなアクセントをつけていました。