今回のレシピはさんまのコンフィです。さんまは日本の秋の味覚を彩る魚ですよね。さんまは分類学上はダツ目に属しています。ダツ目には上唇より下唇のほうが長い、所謂、受け口の魚が多くいます。ダツ目を代表するダツやサヨリは受け口ですし、さんまも、やはりそうです。メダカもダツ目に属している同じ仲間なのですが、よく見ると少し受け口です。さんまは北太平洋に広く分布しており、広い海域を回遊しています。産卵は黒潮や対馬海流の暖流域で、生まれてからは海流に乗って北上、夏をオホーツク海や北太平洋の最北部で過ごします。例年ですと、7月から南下を始め、9月頭には根室近海に近づいてくるのですが、今年は水温が高く、9月に入っても漁の中心はウルップ島の沖でした。釧路港からだとウルップ島の沖まで約600kmも離れています。この距離を往復していたのでは燃料代が大変です。これが今シーズンのさんまの「走り」の頃の値段が高かった原因です。でも今年獲れているサイズは大きく良く脂が乗っています。今後漁場が南下していくにつれて、美味しいさんまが手頃なお値段で楽しめるかもしれません。今回はそのさんまをコンフィにします。
さんまに塩をして、1時間置きます。塩焼きにする時より、少し強めの塩です。耐熱容器にさんまを並べ、にんにく、ローズマリー、タイム、ローリエをのせ、エキストラバージンをひたひたになるまで注ぎます。あとは100度のオーブンに3時間。その後一晩休ませれば出来上がりです。皿に盛り付けると、さんまの肌が輝いています。エキストラバージンにローズマリーの色が移ったのか更に深みのある緑色になっています。タイムとローズマリーの緑っぽく、爽やかで力のある香りとさんまの独特のコクのある香りがしてきます。
この秋の味覚、さんまのコンフィにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはカステルブランのセコでした。カステルブランはかつてカステルブランチと表記していましたが、ワイナリーのあるカタルーニャで使われるカタルーニャ語では最後の「チ」を発音しないので製品名称をカステルブランに改め、原語表記もCASTELLBLANCに変更しました。そのカステルブランをつくっているカステルブランチ社は1908年にカタルーニャ出身のヘロニモ パレラによって創業されました。CASTELL BLANC (カステルブラン)とは「白い城」の意味で、創業以来100年あまり、ずっとブランドシンボルでした。
カヴァの伝統品種であるマカベオ、チャレロ、パレリャーダ をつかっています。甘辛のランクはセコで、門出のリキュールを少しだけ多めにすることによって、口に含んだ瞬間には少し甘さを感じてその後に柔らかみのある酸が広がる'辛口なのにやわらかい'今までにない新感覚の味わいになっています。グラスに注ぐと、上品な香りが立ちます。白い花や、やさしい柑橘のニュアンスです。小さな泡が次々とたちのぼり、まるで真珠のネックレスのようです。
さんまのコンフィと合わせるとオリーブオイルの香りが特に引き立ちました。軽いタッチのコンビネーションでさんまの腸の苦味も軽やかに感じます。
「軽やかですね」
「クラッカーとかに乗せたら、素敵な前菜になりますね」
「さんまの脂とオリーブの油をカステルブランの泡が、さらりと洗い流してくれます」
「この、カヴァはほんのりと甘く感じるのですが、さんまと良くなじみます」
ワインも料理も、どちらも美味しくなる幸せな取り合わせでした。