今回のレシピはタイ料理で、ラープ(挽肉と煎り米とミントのサラダ)です。ラープは本来、動物を解体したときに出る細切れや軟骨、内臓などを美味しく食べるために考案された料理で、タイからラオスにかけて、よく食べられるそうです。様々な動物や鳥が素材になりますが、今回は豚肉を使いました。この料理のポイントは2つ、フレッシュなハーブをたっぷりと使うこと、もうひとつは、煎り米です。ハーブは今回、二人前でミントを半カップ、パクチーを半カップ、万能ねぎを半カップ使いました。ふんだんにフレッシュハーブを使うことでタイ料理らしい、シンプルな中に鮮烈で奥行きがある味わいになるのです。もうひとつの煎り米ですが、弱火でじっくり乾煎りします。ゆっくりと時間をかけて煎って、その後に粉にします。お米は洗わない事と、粉にする時にカリカリとした食感が出るように少し荒く粉にすることが大事です。味付けはナンプラーとライムと砂糖、あと、唐辛子も忘れずにいれましょう。
このフレッシュハーブ香るラープにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはマドンナでした。マドンナの正式名称はファルケンベルク リープフラウミルヒ <マドンナ>、ドイツのワインです。リープフラウミルヒは「聖母の乳」という意味で、マドンナというブランドは今から100年以上も前の1908年にドイツ最大のワイン産地であるラインヘッセンのヴォルムスで誕生しました。ワイン造りの記録はなんと、13世紀の末です。カプチン派の修道院があり教会の周辺にブドウを植えワインを造った、とあるそうです。また、歴史的な文献に最初にリープフラウミルヒが登場するのは1743年に出版されたマクシミリアン マッソンの著書の1687年の記録に「このワインは聖母のミルクのように甘やかだ」という記述がみられるのです。19世紀になると、その教会の畑はフランス革命の影響で払い下げられ、ファルケンベルク社の創業者であったP.J.ファルケンベルクが大部分を取得しました。彼はすぐに畑の修復に取り掛かりました。その際1689年の戦乱で行方不明になっていた聖母像が発見しました。この聖母像は現在もブドウ畑のなかに祀られています。マドンナのラベルにはその聖母像がデザインされています。ブドウ品種はミュラー・トゥルガウ、リースリング、ケルナー、シルヴァーナーで香り豊かな、甘酸っぱいワインです。
ラープとあわせます。盛られたラープには豚ひき肉に、たくさんのハーブが入っています。パクチーの特徴のある心引かれる香りとミントの爽やかな香りが立ち上ります。口に入れると豚肉の旨みにライムの酸が効いていて爽やかです。マドンナを鼻に近づけると、優しく甘い香りが広がります。ミントの爽快さのある香りとマドンナの甘い香りが意外にぴったりマッチしています。
「ミントの香りに甘い香りって、どうなのかなぁ?と、思っていましたが、すんなり合っていますね」
「確かに!ミントチョコレートのニュアンスなんでしょうかね」
豚肉とマドンナの甘酸っぱさとも非常に良く合っています。
「この唐辛子は小さいですが、辛いですね」
「これは、プリッキーヌと言って、タイでも一番辛いほうの唐辛子です」
「その辛いやつを噛んでヒリヒリになったところにマドンナを飲むと、すぅーーーーっと辛さが引きますね」
「確かに!!」
タイのサラダとドイツの聖母の意外なマリアージュを見つけたテイスティングでした。