今回のレシピは、いさきのエスカベーシュです。「いさき」は漢字では伊佐木や鶏魚と書きます。日本各地でたくさんの地方名があり、関東では「いさぎ」と語尾が濁音になることが多いです。九州では「いっさき」、福井、石川では「えさき」で、このあたりまでは「いさき」の変化形でしょうね。面白い地方名では和歌山での「うずむし」とか「鍛冶屋殺し」があります。漢字の「鶏魚」のほうは背びれがピンと立つとニワトリの鶏冠のように見えるから、と言われています。英語名Chicken gruntも、そのニワトリに、ちなんでいます。Chicken gruntのgruntのほうは「ぶうぶう言う」といった意味なのですが、なんと、日本でもそのニュアンスの呼び名があり、神奈川で「クロブタ」と呼ぶそうです。遠く離れた違う国で同じような名前で呼ばれているのはとても楽しいことです。
いさきは初夏に旬を迎える魚で、白身ですが脂が良く乗ります。今回はそのいさきをエスカベーシュにします。いさきはうろこを付けたまま3枚に下ろします。小麦粉をはたき、やや低めの温度で時間をかけ、じっくり揚げます。うろこがカリッとするまで、約15分くらいです。漬け汁に漬け冷蔵庫で2時間くらい休ませると出来上がりです。写真をご覧ください!うろこが逆立って、1枚1枚が「僕、カリカリに揚ったよ!」と主張しているようです。レモンとワインビネガーの香りが爽やかです。この夏に美味しい、いさきのエスカベーシュにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはアペロ・ア・パリの赤でした。
パリで人気の、ちょっと楽しい夜のはじめかた「アペロ」はアペリティフを楽しむライフスタイルを表す新しい「合言葉」です。
食事の前に、軽く一杯。
友達と一緒に・・・・・
ひとりで家で・・・・・
おしゃれな、パリ風ゼロ次会、それがアペロです。
グラスに注ぎます。若々しく、美しいルビー色です。フランス産のシラー グルナーシュ カリニャンなどを使った軽やかで飲み心地の良いワインです。
いさきのエスカベーシュと合わせます。かじると、うろこがカリカリです。身はむっちりと緻密で脂の旨みがたっぷりとあります。赤いベリーを思わせる香りです。軽快なワインで、爽やかです。いさきのクリスピーなタッチとアペロの味わいが程よい軽さ感のバランスをかもし出しています。
「白ワインに合いそうなレシピですよね?このワインは赤なのに良く合いますよね」
「うろこのカリカリがポイントだろうな」
「確かに、うろこだけでアペロにばっちり合いますよ」
「いさきが淡白さだけの魚じゃなくて、しっかりと脂の乗った旨みがあるところも、合う力になっていると思います」
夏を代表する、いさきとアペロ・ア・パリの素敵な相性を実感したマリアージュでした。