今回のレシピはリゾット、それも菜の花と筍としらすを使ったリゾットです。筍は、ご存知のとおり、竹の新芽です。竹はイネ科の植物で、アジアに多く分布します。オーストラリアやアフリカ中部にもありますが、ヨーロッパには、基本的に自生していないそうです。フランスの庭園などで、時折見られる竹は人間の手によって、植えられたものだそうです。筍は、その竹の子供です。食用になるものは、孟宗竹(モウソウチク)、淡竹(ハチク)、真竹(マタケ)、根曲がり竹(ネマガリタケ)などです。筍の字は一旬=10日で大人と同じくらいの大きさに育つところから当てられたそうで、成長の早い物の代表格です。築地市場に筍が並びだすのは、12月の中旬からでしょうか・・・・・鹿児島などの「早掘り筍」として出てきますが、旬の出盛りの頃に比べると、驚くほど高価なものです。菜の花も早春の楽しみです。旬の歳時記などをひも解くと、旬は2-3月と記されていますが、房総半島では年内から花を付けているものを見かけます。また、しらすは年中獲れますが漁獲量が増えるのは春と秋の二回だそうです。旬は産地によって多少異なるそうです。
しらすは半量を水1カップで煮て置いておきます、出汁をとるイメージです。菜の花はさっと茹でてからソテーします。焼き色をつけて、香ばしさを引き出す感じです。
下ごしらえが出来たらリゾットにしていくのですが、オリーブオイルで具材を炒めていくと、にんにくの良い香りがしてきます・・・・・・・・
この、早春の生命の息吹を感じるリゾットにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはイタリアのスプマンテ、ヴィッラ サンディ ロザートでした。このワインは今年の4月に新発売になる、新着ほやほやのワインです!ヴィッラ サンディ(Villa Sandi)は1622年から現存するVilla=屋敷を本社屋にしている由緒正しき名門で、代々ワイン生産に携わってきたモレッティ ポレガート家がワイナリーを所有しています。現在、ジャンカルロ モレッティ ポレガートが当主を務め、伝統を守りながら、革新的技術を取り入れるところは取り入れて近代化を進めています。品質への評価は極めて高く、トップ キュヴェ である“カルティッツェ ラ リヴェッタ”は2009年より4年連続、イタリアの権威あるワイン評価本のガンベロ ロッソで最高評価である「ガンベロ ロッソ3グラス」を獲得しています。また、ドイツワイン評価誌のプロセッコ部門で第1位に輝く栄誉を受けました。
ヴィッラ サンディ ロザートの色は極めて淡く、ほんのりとオレンジ色がかったピンクです。ボリュームのある甘い香りで赤いさくらんぼやプラムを思わせる香りがあります。まろやかなアタック。辛口なのですが、ほんのりと果実の甘さを感じます。柔らかな酸で、ふっくらとした赤い果実味が広がり、余韻のしめくくりに、ほんのわずかに苦みが味わいを引き締めます。昔はプロセッコと呼ばれていたグレーラ種とピノ・ネーロ(ピノ・ノワール)種で醸しました。
菜の花と筍としらすのリゾットを一匙すくい、口もとに運ぶと、パルメジャーノの香りとバターの香りとが昇ってきます。ヴィッラ サンディ ロザートとあわせると、リゾットの濃厚な味わいと、爽やかなヴィッラ サンディ ロザートとが絶妙のコントラストを見せます。筍をかじります。ほっこりとした筍の感触からじわりと大地の力強さが湧き出てきます。「ロゼと、筍、自然に合いますね」
菜の花を食べると、ほろ苦いタッチとソテーによって焦がされた香ばしさが、心地良く広がります。ヴィッラ サンディ ロザートのメイン品種であるグレーラが品種として持っている、わずかな、ほろ苦さと菜の花や筍の奥行きのある味わいとがぴたりとマッチしていました。
「しらすも、ほんの少し、苦味がありますよね?」
「春の食材は、皆、ほろ苦さがあるんですねぇ・・・・・・」
「子供の頃は苦味のある食べ物は苦手でしたが、だんだん、好きになってきます」
「大人の愉しみなんでしょうね」
生命の息吹がほろ苦いのか、はたまた、生きている事、それ自体がほろ苦いのか、春の命の美味しさを再認識したテイスティングでした。