リエットは、元々、フランスのロワール地方の郷土料理です。フランスのスーパーマーケットの棚には様々なリエットが並べられています。地名を冠したものだと、多いのはトゥールとマン。どちらもロワール地方です。トゥール市はロワールの有名なワイン産地のトゥーレーヌ地区の中心都市です。マンは24時間レースで有名なルマン(ルは定冠詞)で、こちらもロワール地方です。材料は基本、豚ですが、スーパーマーケットの棚には様々な素材を使ったリエットが販売されています。ウサギ、鴨、鮭、鱒やマグロや、イワシなども見た事があります。
今回は、さばを使ったリエットです。
白ワイン150ccを鍋にかけ、ローリエとにんにくを入れて、温めます。沸騰したらさばを入れ、4分煮ます。荒熱を取ったら、潰して他の素材と混ぜ合わせていけば出来上がりです。わりと簡単に出来ますし、冷蔵庫で、しばらくであれば保存もききます。かりっと焼いた薄切りバゲットに塗れば、ワインに良く合う前菜になります。
さばのリエットを手で取り、鼻に近づけると、ふうわりとハーブの香りが漂ってきます。アニスを連想させるようなエストラゴンの香りです。魚臭い匂いは全くしません。バゲットのカリカリと、少しねっとり感のあるリエットとのコントラストが楽しいです。
さて、このワインが楽しくなるさばのリエットに、テイスティングメンバーが選んだイチオシワインはカザマッタ ビアンコでした。カザマッタは、あの、テスタマッタのビービー グラーツ氏が送り出したイタリアワインで、トスカーナで醸造されています。ビービー グラーツ氏は芸術家一家に生まれました。彼は家族で楽しむためだけに使われていたブドウ畑を使い、2000年から本格的にワインづくりを始めました。並外れた努力と桁外れのセンスで2004年のヴィネスポ(世界最大級のワインイベント)ではイタリアソムリエ協会が選ぶ「ベスト プロデューサー賞」の最終候補者の3人のうちの1人に選ばれました。この間、なんと、わずか5年です。言ってみれば、たった5回のワイン造りで、ほとんど頂点とも言えるところまで行ったのですから、やはり天才なのでしょうか・・・・
このカザマッタ ビアンコはヴェルメンティーノ60%、トレッビアーノ30%, モスカート10%で醸されます。年による味わいのばらつきを減らすために、シャンパン造りにおけるリザーヴワインのように前年、前々年のワインをキープしておき、アッサンブラージュする、と言うトスカーナのワイン造りの慣習にとらわれないユニークな方法をとっています。
フレッシュで豊かな香りで、柑橘系や熟したリンゴなどを思わせる香りがあります。生のハーブを連想させる香りもあり清々しいワインです。
さばのリエットと合わせると、さばの味わいが「活きる」感じがします。さばと白ワインを普通に合わせた時に気になる「生臭さ」感は全然ありません。
「さばの美味しさを素直に引き出していると思います」
「さばとワインを合わせる時に、白より赤ワインのほうが合うという人も多いですが、このリエットは白のほうが合いますね」
「そうそう!白でも軽いタッチのほうが、より合うと思いませんか?」
「たしかに白でも樽熟系は違う感じですよねぇ」
確かに、魚とワインを合わせた時に、なんとも言えない生臭い匂いがする事がありますが、このリエットには、それが感じられません。料理方法も関係していると思います。
「ハーブですかね??」
「粒マスタードを入れているのも効いていると思います」
「バターをたっぷり使っているからかもしれません」
さばのリエットとカザマッタ ビアンコの相性の良さが確認できたテイスティングでした。