毎日暑い日が続きます。こんな時は暑い国の料理が食べたくなります。今回のレシピはタイ料理のトムカーガイです。
トムは煮る、カーは生姜、ガイは鶏です。生姜をアクセントにした鶏のスープで、定番はココナッツミルクベースです。タイのスープというと、世界三大スープの誉れも高いトムヤンクーンが有名ですが、このトムカーガイも、地元では負けず劣らず有名です。鍋に鶏肉とココナッツミルクを入れて煮ます。重要アイテムである生姜と、その他のスパイスを入れて更に煮ます。スパイスはプリッキーヌ(小さくてとても辛いタイの唐辛子)とレモングラス、こぶみかんの葉です。仕上げにナンプラーとライムの絞り汁とパクチーを入れます。これで、素晴らしく美味しいトムカーガイが出来ます。
熱いスープです。生姜や唐辛子が入っていますので辛いです。生姜にはジンゲロールとショウガオールが含まれていて体を温める効果がある、と、言われています。ココナッツミルクも水2の分量に対して1使いますから、かなり濃度があります。「熱い」「濃い」「体を温める」と来ると「何で、この暑いのに、わざわざ・・・」とお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが、食べ終わって汗をかくと、なぜかすぅーーっと涼しくなるのです。
この極上トムカーガイにテースティングメンバーが選んだイチオシワインはタヴェルネッロのピノ・グリージョでした。 タヴェルネッロを醸しているカヴィロ社は今から50年以上前に、情報交換や栽培・醸造技術の共有のために小さな農家が集まって作った小さな農業協同組合が原点でした。技術水準の高さから人気が集まり造ったワインが順調に売れました、その好調さを見て、協同組合に参加する農家が増える、増える事でより良いワイン造りを行う事が出来る、と、いった好循環になり、イタリアで最も規模の大きい協同組合になりました。ブランドとしてのタヴェルネッロも、本国イタリアにおいては、圧倒的No.1の販売実績を誇るブランド!に成長しました。(※出典:SymphonyIri Group. Data)
ピノ・グリージョはピノ・ノワールの変異種と言われており、フランスではピノ・グリと呼ばれております。甲州種と同じように、完熟すると皮がピンク色に染まる白ぶどう品種です。「品種別に見た世界での白ワイン消費量」でシャルドネについで第2位、(※出典:※出展:Impacto Databank 2011) アメリカにおける輸入白ワインの品種ごとのデータを集計すると、なんとシャルドネを抑えてピノ・グリージョがトップになるそうです。
トムカーガイを一匙掬うと、ココナッツミルクと生姜の香りがしてきます。ココナッツの独特のコクを感じさせる風味です。口に入れると、ココナッツミルクの濃厚さが来るのですが、生姜の少し刺激的な香りとライムの爽やかな酸があるので、軽やかで飲みやすく感じます。
タヴェルネッロ ピノ・グリージョを合わせます。非常にしっくりと馴染みます。タヴェルネッロ ピノ・グリージョ自体は穏やかな持ち味で、特別、個性的な香りや特徴的な味わいを強く持っている訳ではありません。熟したリンゴや白い花などを連想させる香りが優しく香ってくる感じです。はっきりと主張のある味わいのトムカーガイと控えめなタヴェルネッロ ピノ・グリージョが出会ったらトムカーガイが圧倒的に支配するのかと思ったら、そうではなく、うまく調和がとれていました。「なぜ?」とは言えないのですが、なんとなくまとまる。「ここが」とは言えないのですが、どことなく心地よい組み合わせでした。
「おさまりが良いですよね・・・・・」
「ここと、ここが合う!というポイントがある訳じゃぁ無いんですよ」
「トムカーガイはココナッツのコクや生姜やスパイスのパンチがあって、強いですよね、ワインの方は、とっても、おとなしい。およそ合いそうに無いのに、なぜか、すんなりカップルになっている・・・・とっても不思議です」
「ピノ・グリージョのほんのりとした苦味が、味の芯になっているんですかね?」
穏やかで控えめなピノ・グリージョが、個性的で力のある料理をふんわり受け止める。また、新たな組み合わせの妙を発見したマリアージュでした。