今日の料理はカツです。皆さんはカツと聞いたら何の肉を想像されますか?
大多数の方は豚、トンカツでしょうか?チキンカツや海老カツを思い浮かべた方もいらっしゃるでしょう。鯨(ゲイ)カツと言われる方は最近では少数派かも知れません。
カツはカツレツを縮めた言葉で、フランス料理のコートレットが語源といわれています。もともとのコートレットは子牛肉にパン粉をつけて、少なめの油で揚げた(炒め焼いた)料理です。ビーフカツ・・・・ビフカツと更に短く呼ばれる事もあります。ソースはさまざまで、洋食屋さんではドミグラスソースが多いですが、当然トンカツソースや中濃ソース、ウスターソースで食べられる事も多いです。今回は柚子こしょうを使ったバルサミコソースにしました。
小さめのフライパンに香り豊かで濃厚な味わいのバルサミコを入れて弱火にかけます。とろりとしてきたら、辛くて爽やかな香りたっぷりの柚子こしょうを加えて溶き混ぜます。
ビーフカツは、コートレットの原型にちなんで少な目の油で揚げました。オリーブオイルとサラダ油を合わせた油です。揚げるときは中心の赤みが残るように火を通しすぎないように揚げましょう。
色よく揚がったら食べやすいサイズに包丁をいれます。
ちょっと、どきどきします。薄めの肉だと、丁度良い火の通り具合になるタイミングは、ほんの短い時間だからです。
「! ばっちりです!!」
真ん中は生っぽく、でも柔らかく火が入っています。中心から外にむかって、ピンク色から焼けた肉の色になるロゼ色のグラデュエーションが美しく仕上がっています。
さて、このビーフカツ 柚子こしょうバルサミコソースに、テースティングメンバーが選んだイチオシはボッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ リパッソ レ・ポイアーネでした。ボッラ社は今から130年前の1883年に創業した老舗です。1909年にはボローニャの国際展覧会でイタリア国王から金賞を授与されました。最近、ワイン売り場で「金賞受賞ワイン!!」と書いたPOPを良く見かけますが、ボッラ社は100年以上前から金賞を受賞しているんですね!2009年にアメリカのウイスキー会社からイタリアの大手ワイン会社のGIV社が買い戻し、めきめきと品質向上を遂げました。
ボッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ リパッソ レ・ポイアーネは通常のヴァルポリチェッラではなく、リパッソRipassoで作られるヴァルポリチェッラです。リパッソRipassoとは「渡り鳥がまた戻ってくる」意味です。アマローネのマセラシオンの終わった果皮の上にヴァルポリチェッラを張ってアマローネの複雑な香りと力強さを与えるのです。香りを嗅ぐと軽やかな赤いベリーを思わせる香りとブラックチェリーの連想のある、黒い果実のイメージの両方があります。フルーティーさとスパイシーさも共存しています。
ビーフカツを合わせます。フォークを刺すとカリパリサクリとパン粉の手応えが返ってきます。柚子こしょうバルサミコソースをつけます。とろりとした粘度を持っています。
「照りがすごいですね」
ちょっぴりソースをつけてかじります。
衣のさくさくと牛肉から出た肉汁に甘く、爽やかな香りのソースがからまります。
「青唐辛子の緑のニュアンスと レ ポイアーネの香りが良くマッチします」
「柚子の柑橘系の香りも強調されますよね」
「しっかりとした肉の旨みとソースがワインのコクと丁度良いバランス感ですね」
バルサミコだけでも美味しいソースになりますが、柚子こしょうが入る事で料理そのものの複雑さが増しました。さらにワインとのコンビネーションにも奥行きが出た気がしたマリアージュでした。