日本人は鯛が大好きです。鯛と言う時、ごくごく狭い意味では真鯛のことを指します。もう少し広い言い方だとスズキ目タイ科の6種を指すそうですが、日本にはタイの名前を持つ魚が200種類以上もいるそうです。慣れないと見分けのつきにくいハナダイやキダイは、タイ科の6種の仲間ですが、キンメダイやアコウダイなどタイ科はおろか、スズキ目ですらない魚も鯛の名前がつけられています。真鯛の旬は春と言われており、桜の季節と重なるのでこの季節のタイを桜鯛と呼ぶ場合もあります。
今回のレシピは、その真鯛をソテーにしてオランデーズソースで食べます。写真をご覧ください。カリカリに焼けた皮目がいかにも食欲をそそりますね!オランデーズソースは簡単に言うとマヨネーズを作るレシピの植物性の油をバターに変えたソースだとお考えください。掲載している材料の分量は作りやすさを重視しております。二人前に使う分量は、お好みにもよりますが、表示している分量で出来たオランデーズソースの1/4を使う感じです。残ったソースは、冷蔵庫で2-3日は保管できます。茹でたジャガイモやアスパラガスなどの野菜、最近流行りのエッグベネディクトにも使える美味しいソースです。
さて、この美味しそうな鯛のソテーにテースティングメンバーが選んだイチオシワインはウイリアム フェーブル シャブリでした。日本人にとって白身の魚が代表選手であるように、日本人にとって辛口白ワインといえばなんと言ってもシャブリです。このウイリアム フェーブルはただのシャブリではありません。現在シャブリ地区の多くでは収穫を機械でおこなっていますが、ウィリアム フェーブルでは、ぶどう果を傷つけないよう、収穫は手摘みです。それも葡萄が傷つかないように、小型のプラスティックのケースを使う念の入れようです。しかも、丁寧に丁寧に収穫した葡萄をワイナリーに運び込んだら、更に選果台に広げて未熟な粒や腐敗した粒を取り除きます。その徹底したこだわりから、このウイリアム フェーブル シャブリのクリーンで澄み切った美味しさは生まれるのです。
香りはレモンやライムなどの涼しいエリアを連想させる柑橘系の香りがあります。口に含むと、辛口の代表選手とは思えない甘やかさを一瞬感じるのですが、その直後に切れのある酸が追っかけてきてキリリとした印象に変わり、「なるほど、辛口の代表選手であるなぁ」と納得させる味わいです。
さて、鯛のソテーと合わせます。
鯛のソテーにナイフを入れます。カツっと堅い物に当たった手応えがあり、その後、ぱりぱりと皮にナイフが入ります。そして、肉の部分はふっくらと柔らかです。身は清らかに白く、筋肉の重なり単位ではらりはらりと、ほぐれます。オランデーズソースを付けないで、まずは一口。淡白なタイの味わいの中に、繊細な甘みを感じます。そこにシャブリの入ったグラスを近づけます。すると、途端に皮の焦げたニュアンスが強まります。「シャブリが持っているミネラルというか、ちょっぴりスモーキーなタッチが、皮目の焦げたニュアンスと呼応するのでしょうね。良い感じで香りが強まりました」「香りだけでもマリアージュしていますね」
今度は、オランデーズソースを絡めてみます。バターと卵の黄身のコクが溶け合った、旨みの強いソースですが鯛の美味しさを邪魔することなく、良くマッチしています。シャブリと合わせると、オランデーズソースに使っているレモンとシャブリの柑橘を思わせる香りとが上手く調和しています。
「鯛の細やかな味と上品なシャブリだと、オランデーズの味の濃さに負けるかと思ったらそうじゃないですね」
一見、か弱く見えるシャブリの芯の強さ、底力を再確認してマリアージュでした。