リゾットはイタリアの北部地方の料理です。ヨーロッパの主食は麦が主体ですが、スペインとイタリアでは米も作ります。イタリアでの稲作の歴史は中世にポー川の流域で始まったと言われています。ポー川はピエモンテ、ロンバルディア、エミリア・ロマーニャ、ヴェネトの4州を潤しています。このエリアでは現在も水稲栽培が盛んに行われ、リゾットがたくさん作られています。米を炒めて、炊く。これがリゾットの原型です。炒める油はオリーブオイルでもバターでもオッケーです。仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノのような旨みの多いチーズを混ぜます。ポー川流域の4州ではいろんなリゾットが作られます。仕上げの定番、パルミジャーノ・レッジャーノはエミリア・ロマーニャ州です。この州ではシンプルなリゾットが多く見られます。ピエモンテでは白トリュフを使ったものやバローロやソーセージを使ったリゾットがあります。ロンバルディア州は「リゾット ミラネーゼ」サフランを使って鮮やかな黄色に仕上げたリゾットがあります。その他にシンプルなピロータ(パイロット)風といわれるリゾットも有名です。ヴェネト州にはリーズィ エ ビーズィと呼ばれるえんどう豆のリゾットがあります。名前の通り、米(リーゾ)とえんどう豆(ビーズィ)です。
今日のリゾットは早春の息吹、たらの芽をソテーして添えます。
チーズはパルミジャーノだけではなくゴルゴンゾーラも使います。ゴルゴンゾーラはイタリアの青かびチーズで世界3大ブルーチーズに挙げられる有名なチーズです。ロンバルディア州とピエモンテ州をまたがる地域で作られています。
にんにく、玉ねぎをオリーブオイルで炒めます。米も炒め、少しづつスープを入れながら炒めて行きます。米は洗わず、アルデンテに仕上げるのがポイントです。イタリアではアルデンテに仕上げる為に米をわざわざ熟成させて販売しています。スーペルフィーノ!3年熟成!!みたいな感じです。古米を嫌う日本人の感覚とは大違いですね。お好みの固さになったらチーズを加えて、たらの芽のソテーを乗せたら出来上がりです。
リゾットがテーブルに運ばれると、パルミジャーノの複雑で芳醇な香りとゴルゴンゾーラの少し刺激的な香りが立ち昇ります。
この絶品リゾットにテースティング参加者が選んだイチオシワインはボッラ ヴァルポリチェッラクラッシコ レ ポイアーネ、ポー川北岸の下流域に位置するヴェネト州のワインでした。ボッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ リパッソ レ・ポイアーネは普通のヴァルポリチェッラとは製法が異なります。わざわざ収穫した房を、翌年の2月中旬まで陰干しし、半乾燥状態にして醸すのです。取れたての新鮮なものを使わずに時間をかけて乾燥するのはリゾットの米に通じるものがありますね。そうする事で濃厚で味わい深いヴァルポリチェッラを造ることが出来るのです。ボッラ社では造られたコクのある赤を法定熟成期間の倍の4年以上も長熟させて、さらに複雑味のあるワインに仕上げています。
ワインをグラスに注ぐと、非常に濃い色です。深みのある赤に少し熟成を思わせるオレンジ系の色があります。香り華やか。味わいも濃く、凝縮感があります。4年の熟成を経てもなお、かなり力強いタンニンがあります。
リゾットを口に運ぶとたらの芽のほろ苦さとチーズの濃厚な味わいが口に広がります。
「大人の味わいですね」
ワインと合わせます。
「! 凄く合いますね!!」
「タンニンが強いワインだったのが、チーズと出会ってまろやかになりました」
リゾットの濃厚なコクとワインのリッチなボディ感が力強いハーモニーを奏でています。
「ブルーチーズの塩味もワインを引き立てますね」
「結構強めの樽の香りもリゾットに良く調和しています」
「なにか、深いところで手をつなぐ感じ・・・・・」
「土地の密約ですか・・・・・」
ワインと料理の「同郷の相性の良さ」を再確認したテースティングでした。