今回のレシピは寒い季節に美味しい鱈の白子です。築地で「白子」と言うと一般的には真鱈の白子です。当然、鮭や河豚の白子も取り扱われていますが取扱量では圧倒的に真鱈の白子です。真鱈は冷たい海の魚で厳冬期に美味しくなります。市場で一匹丸ごとの真鱈を買う時は、どきどきします。外見だけではオスとメスの判別が付かないからです。お腹が膨れているのをあれこれ選んで、最後は運を天に任せて「えい!これ!!ください!!!」家に帰って捌いてみて「がーーん メスだったぁ・・・・」って事も良くあることです。運良くオスでも、お腹が膨れていた割には白子が小さいことも良くあります。なんせ相手は「タラフク食べる」で有名な鱈族の王様「真鱈」です、おろすと大きな白子が飛び出してくるのかと思いきや、白子は、ちょっぴりで、大きな胃袋が鎮座していたりします。そういう胃袋の中には小魚、海老、蟹、イカや貝にいたるまで、いろんな物がはいっています。なんでもバクバク食べている様子が容易に想像つきます。大きな蛸がでてきて驚いたこともあります。大きな白子の入った鱈に当たると、とても感動的です。お腹に包丁を入れると大輪の白い菊の花が咲くように真っ白く、それでいてほんのりとピンクがかった白子が飛び出して来ます。
今日はその極上の白子をソテーします。パン粉を付けてオリーブオイルとバターで少し揚げるように火を入れていきます。ソースはリンゴ、今回は王林を使いました。
リンゴをバターで炒めます。塩と砂糖で味付けをしてタイムでアクセントを付けます。こんがりとキツネ色にソテーされました。バターとタイム、そしてリンゴの香りがしてきます。リンゴは加熱されることでより華やかに香りがでている気がします。
この絶品白子のソテーにテースティングメンバーが選んだイチオシワインはチリのロスヴァスコスが醸すソーヴィニヨン・ブランでした。
ワインを注いで色を見ます。ほとんど色を見て取れないくらい淡い色です。クリスタルのように輝いています。鼻を近づけます。レモンやライムのような爽やかな柑橘系の香りがします。グラスを回して香りをたたせます。フレッシュハーブのような青々しい香り、グレープフルーツを連想させる香りもあります。口に入れます。瑞々しく若々しいイメージ。 キレのある酸を感じます。辛口で軽やか、ボディはライトです。
白子のソテーにナイフを入れリンゴのソースとハーブを乗っけて口に運びます。リンゴが結構効いています。バターとリンゴの甘さが焼リンゴの風情で良い感じです。白子が、かりっとした衣の中からとろーり出てきます。ワインを飲みます。料理だけの時よりハーブが活き活きと感じられます。リンゴの香りも、より強調されます。とろーり、とろとろ解け出た白子とキレのあるロスヴァスコスが渾然一体となっています。
「旨いですね!」「ミックスリーフがはいったサラダ仕立てだからソーヴィニヨン・ブランは合うだろうと予想はしていましたが、良く合いますね」「とろり、ねっとりの白子と、ぱきっとした辛口のロスヴァスコスのコントラストがいいんだと思います」
「生臭さもまったく出てきませんね」「白子のソテーにレモンを絞ったような爽やかさです」「ソーヴィニヨン・ブランらしい効果ですね」
濃厚白子と合わせる事でチリのソーヴィニヨン・ブランの奥深さを再確認したテースティングでした。