鰆は美味しい魚です。岡山では特に珍重します。「日本で一番美味しい魚だ」と断言する方も沢山いらっしゃいます。私も取れたてのピンク色のお刺身は本当に絶品だと思います。備讃瀬戸では昨年は4月25日に鰆漁が解禁になりました。今年は5月15日に岡山で備前鰆祭が開催されるそうですね。1mもあるような鰆を塩で固めて焼き上げて振舞われたりするようです。岡山での鰆の旬は5-6月とされています。その時期は岡山魚市場では競り時間を10分繰り上げ、その時間は鰆だけを競るそうです。岡山にとっては鰆は特別の魚なんですね。旬については寒い時期の12月から2月が鰆の週だと書いている本もあります。寒鰆です。脂がぐっとのっています。関東では寒鰆のほうを好む傾向があります。鰆はサバの仲間でDHAも豊富です。美味しくて健康にもばっちりの素敵な魚なんですね。
今日はその鰆をソテーします。付け合せは菜の花と筍です。鰆に塩こしょうをし、小麦粉を振ります。皮目をオリーブオイルでしっかりソテーするのがポイントです。カリカリの皮目がワインとの相性を大きく左右します。
この鰆のソテーにテースティングメンバーが選んだイチオシは葡萄の楽園チリで、ラフィットが醸すロスヴァスコスカベルネ・ソーヴィニヨンです。シャトーラフィットはチリのコルチャグアになんと4000haもの土地を所有しています。コルチャグアは首都サンチアゴから南西に約200km離れたところに位置します。例年、葡萄の開花期から収穫まで一日も雨が降らないのが普通だそうです。乾燥していますので、病害虫のほとんど無いとても恵まれた土地です。グラスに注がれたロスヴァスコスカベルネ・ソーヴィニヨンを見ると、濃く深い色です。紫を多く含むガーネット色です。グラスに鼻を近づけるとよく熟したベリー、カシスやブルーベリーを連想させる香りが豊かに昇ってきます。少しリフレッシュミントを思わせる爽やかな香りもしてきます。口に入れると爽やかでフレッシュな果実感と程よい厚みを感じます。タンニンもミディアムボディながらわりと多めに感じます。
いよいよ鰆のソテーと合わせます。お皿からは、にんにくの芳しい香りとリゾットのバターやチーズの濃厚で魅力的な香りがただよって来ます。鰆に箸を入れます。良く焼かれた皮目がパリパリ、さくさくです。口にいれて齧ろうとすると、パリさくな皮が歯に抵抗します。もう少し力をこめ、さっくりと皮が割れるとジューシーな鰆の肉汁が口の中に溢れだしてきました。香ばしい香りが鼻腔をくすぐります。ワインを飲もうとするとワインの香りに変化が感じられました。ワイン単独で香りを嗅いだ時よりワインの甘い香りが強く感じられます。スモーキーなニュアンスやジャムっぽい濃密な香りもはっきりする気がします。口に入れると鰆の旨みと良くマッチしています。「赤!いけますね!!」「脂肪がたっぷりだからですかね?」「白ワインも美味しいんですけど、赤、それも濃厚なタイプの方が美味しく感じられます」「そうそう、皮が赤ワインとすごく合うんですよね!」「香ばしく焦げたニュアンスが大事な気がします」「リゾットの菜の花もカベルネと絶妙ですね」いろんな意見が飛び出しましたが、皆が納得する素晴らしいマリアージュでした。