鴨は美味しい鳥です。フランス料理では冬の青首(文字どおりコル ヴェール)を珍重します。飼育鴨ではロワール地方のシャラン産が有名です。シャランはロワール河の河口でムスカデで有名なナント市から南西に約50km行った所です。鴨は渡り鳥ですから旬は晩秋から冬です。日本の狩猟の解禁は11月の15日で猟は2月の15日までと定められています。夏の旬の料理の記事に鴨?とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが飼育の鴨は年中とても美味しいのです。「冬、飼育の鴨を食べたら脂が多すぎて・・・」と思われた方!是非、夏の鴨をお試しください!!ちょうど、程よい脂の乗りで、驚かれるかと思います。
今日は合鴨を焼いていきます。鴨を焼くときは皮目に包丁を縦横に細かく入れます。ここで一工夫。その皮目に柚子こしょうを摺り込んでおきます。
皮目のほうから焼いていきます。皮にしっかり焼き色がつくまで焼きましょう。でも火の入りすぎには要注意。焼きすぎた鴨はちょっとつまらない味になるかも・・・・
鴨の脂がじわじわと出てきます。濃厚な肉の香りが漂ってきます。こってりとして、少し血の印象のある香りです。「うーん 良い香り、食欲がわきますね」
ソースはバルサミコを煮詰めて作ります。付け合せは大根のステーキです。
さて、ここで皆さんに質問です。今日のイチオシのワインの品種は何でしょう?
ピノノワール?確かに鴨の定番はピノですよね。シンプルに焼いた鴨なら、ちょっと良いブルゴーニュのピノノワール、有力な造り手の醸したマイナーアペラシオンのイメージですよね。ブシャールのマランジュやシモンビーズのサヴィニー。オレンジソースだったらもうちょっと熟成したさらに上物を合わせたい感じですよね。でも本日のレシピにテースティングメンバーが選んだワインはなんとなんとカベルネ ソーヴィニヨン主体のロス ヴァスコス グランド レゼルブでした!!!
鴨を一切れ箸でつまみあげます。美しいロゼカラーです。バルサミコの甘い香りが漂います。「柚子こしょうの香りはそんなに強く主張しませんね」「ほんのり香る感じですね」
さてワインです。ロス ヴァスコスはチリのコルチャグアになんと4000haもの土地を所有しています。グランド レゼルブになる畑は敷地内の迎賓館のすぐ脇にあります。
「濃いベリーの香りですね。カシスやブラックチェリーを思わせる濃厚な香りです」「濃い香りなんですがジャムっぽくはなくて、新鮮な感じですね」
ここで鴨を一口かじります。暖かい肉汁が口に溢れます。「おっ!ワインのハーブの香りの要素が強調されます」「ミントっぽいですね」実は迎賓館のそばにはユーカリの巨木の森があります。ミントっぽいのはそのユーカリの影響かもしれません。「鴨の方も柚子としし唐のようなハーブ系の香りが強調されます!」
ワインと料理の相性の鉄則「似たもの同士は良い相性」がここでも見事に生きています。「鴨の脂とグランド レゼルブの濃厚さが絶妙ですね」「鴨ってピノという固定概念が吹き飛びますね」
スパイス使いひとつで新しい味の楽しみの発見があることを認識したテースティングでした。