牡蠣フライをご覧ください!カリカリと音がしてきそうでしょ!?
衣に工夫があります。実はクラッカーを砕いて衣にしてあります。タルタルソースも特製です。ざく切りのゆで玉子にディルやピクルスが効いています。冬の食材の楽しみのひとつは牡蠣です。いろいろな賞味方法があります。生牡蠣、シチュー、土手鍋、そしてトドメはこの牡蠣フライ!!
揚げたての牡蠣フライを箸でつまみます。箸先の感触でカリカリ感が伝わってきます。この牡蠣フライ、なかなかの面構えです。荒く砕いたクラッカーが牡蠣殻を連想させます。口に運ぶと、食欲をそそるクラッカーの少しこげた香ばしい香りと、ふわりバターの香りが鼻をくすぐります。「お、衣がクラッカーだからバターのニュアンスがあるんですね」
いよいよ、かじります。
見た目のとおりのカリっと堅い歯ごたえがあります。カリカリの衣の防護壁を前歯が突き破ると、瞬間、磯の香りが広がります。子供の頃、海で遊んだ潮溜まりの香り、それを濃縮した香りです。更に力を入れるとピュルピュルと牡蠣の旨汁がほとばしり出ます。牡蠣好きにはたまらないひと時ですね。
さてこの牡蠣フライにテースティングメンバーが選んだワインはウィリアム フェーブル シャブリでした。やはり「牡蠣にシャブリ」の格言どおりのイチオシ獲得なのですが、これがまた実に旨いんです。シャブリその物は繊細でエレガント、どちらかと言うと線の細い印象のあるワインです。一方、牡蠣フライは、もともと強い海の香りの牡蠣をフライにする事で更に力強く濃密な味わいです。
「洗い流し効果ですかね?」
確かに衣の揚げ油の印象をさらりと流す効果は実感できます。
「それよりももっと本質的な相性の気がします」潮の香りいっぱいの牡蠣フライをかじるとシャブリのミネラルのイメージが強調されます。「シャブリだけで飲むよりミネラルの連想が増しますね」「ものすごく根っこのところで手を結ぶ感じの相性ですね」
シャブリの畑はキメリジャンという土壌です。キメリジャンの石を良く見ると牡蠣殻の化石が一杯入っています。その石が風化して崩れて畑の土壌となっています。太古のシャブリは海の底だったんです。そこの牡蠣と今、活きている牡蠣とが何千万年もの時を経て手を結ぶ、マリアージュの神秘を感じさせてくれるテースティングでした。