桃山茶陶のいびつな形が好きである。が、あれを美しいとする美意識とは何なのかと思わずにはいられない。ゆがみがあるから作品が大きく見える、という人もいる。織部も黄瀬戸も志野も純然たる日本のオリジナルだが、志野だけは登場してから後、しばらく姿を消していた時期があるようだ。美濃だけに産出するもぐさ土に、長石釉を掛けた簡単な焼物にもかかわらず、長石の量や窯の炎の加減で実にさまぎまな表情を見せるという。穴窯は熱しにくく冷めにくいという特徴を持つそうだが、志野のあの艶やかな火色は、窯が徐々に冷めていく時に仕上がるらしい。その何時間こそはまさに山崎の十二年に匹敵するといっていいほどの、神秘の時間というわけなのだ。
|