友人の写真家と水の写真を撮りに行ったことがある。ファインダーに切り取られたわずか二、三メートル四方の水面の揺らめきと光の変化を追い続けるだけなのだが、それが大変面白かった。カメラを覗くと、風が通る度、船が通る度、波立つ水面はさまざまな姿態を見せ、飽きることがなかった。その水面の表情には不思議な温もりと、艶があり、建物が映っているわけでもないのに都会があった。水は生きていると思った。しかし出来上がった写真は、その何倍も鮮やかなものだった。すごい速さで映り過ぎてゆく肉眼では捉えることのできないものを、二百五十分の一秒の瞬きが見事に写し取っていたのだ。今その写真集を広げ、山崎を飲んでいる。旨い水と一緒に。
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