先週の青梅マラソンは、一万四千五百人が参加した。走る人はますます増えている。ところで「セカンド・ウインド」という言葉をご存じだろうか。第二の風。走り始めて数分後にそれは訪れる。体内の酸素は数分で消費し尽され、外気の酸素を取り入れる有機運動に切り換わる。脳に酸素が入り始めるこの瞬間、閉め切った窓は開け放ったような快感が体を襲うのだ。体内を吹くこの快い風は、しかし速く走り過ぎるとすぐ逃げていってしまう。ゆっくりと走ること。人に追い抜かれても、抜き返そうとしないこと。ひと汗流した後、グラスにピュアモルトを満たして考えた。つまり走ることは、人と競うことをやめることなのだ。やがて、もう一度陶酔が訪れた。
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