2024年5月23日 山崎蒸溜所

想いをつなぐ、想いを受け継ぐ。

藤井元工場長と有田工場長の画像

今年4月、山崎蒸溜所に14年ぶりに新工場長が誕生しました。
20代目工場長の藤井敬久からその任を受け継いだのは、21代目工場長の有田哲也。
100年に渡り継承してきた、山崎蒸溜所の伝統や想いとはー

今回は、新旧二人の工場長に話を聞きました。

――まずは藤井元工場長、13年7ヶ月の在任お疲れ様でした。在任期間中、特に思い出されることはありますか?

藤井:結構ありますね。私が工場長になった2010年は、ウイスキー人気が高まり始めた時期でした。工場長に就任する前のブレンダー時代にハイボールが人気になり、ウイスキーの需要がぐっと上がってきた頃に工場長に就任。増産体制をとるべく、蒸溜釜を45年ぶりに増設したり、近江エージングセラーに貯蔵庫を増設したりと、大工事が次々と始まりました。日々大変なことはありましたが、そのおかげで生き生きとやってこられたのかなと思います。

――今後も山崎蒸溜所での仕事が続くということですが、​どのようなことを担当されるのですか?

藤井:樽貯蔵に関連する技術開発や原酒の開発など、工場長になる前に担当していた分野でメンバーを指導していく役割です。工場長の時は原酒づくりから製品の瓶詰まで、ウイスキー製造の全てをみていたのですが、これからは原酒づくりに特化するという点だけでも、随分変わりましたね。

――そんな藤井さんから工場長を受け継いだのが、​今年の3月まで白州蒸溜所で工場長を務められていた​有田さん。山崎蒸溜所の工場長就任を伝えられた時の​お気持ちはいかがでしたか?

​有田: 100年の歴史がある山崎蒸溜所で、藤井さんが約14年された後なので、重責だなと。​
藤井:逆にやりやすいって(笑)​
有田:そうですか?(笑)実は山崎蒸溜所界隈で働くのは18年目でして、中学高校時代には阪急電車に乗って京都から大阪まで、毎日山崎蒸溜所を見ながら通学していました。そういう意味では慣れ親しんだ場所に戻ってこられたなと思っています。

藤井元工場長と有田工場長が山崎のウイスキーを嗜みながら語り合う画像

――お二人はこれまで一緒に働かれたことはあるのですか?

藤井:有田が白州蒸溜所の工場長を務めていた直近2年間ですね。​
有田:そうですね。それぞれの工場長として話をしていました。​
藤井:有田は自分が山崎蒸溜所の工場長になるとは思っていなかっただろうけど、私はちょっと前から、有田はあるなと思っていました。私の後の工場長に。ですから山崎と白州の工場長同士、いろいろ話をしていた時も、今は私がこうやっているけれども、これを引き継ぐのは有田だろうなと思いながら話していました。悪いけど大変やろうな、などと思いながら(笑)

――その時から工場長の引き継ぎが始まっていたんですね。

藤井:私は随分前から引き継いでいたつもりでしたよ。
有田:そうですね、振り返ってみれば…
藤井:受け手側があまりそれに気づいていなかった(笑)。私は絶対、後任は有田だと思っていました。

――藤井さんが山崎蒸溜所で培ってこられたものの中で、有田工場長はじめこれからも山崎蒸溜所に受け継いで欲しいことはありますか?

藤井:お客様に喜んでいただけるものなのか、お客様にとっていいことなのかどうかということを大事にする。山崎品質という言い方をしていますが、この考え方はメンバーに少しは浸透したかなと思いますので、そこはぜひ続けて欲しいし、もっともっと伸ばして欲しいと思います。
あとは、山崎蒸溜所のリニューアル後、つくり手たちが、自身の作業内容やウイスキーづくりにかける想い、こだわりなどを、ウイスキーの製造現場でお客様に直接伝える「山崎蒸溜所ものづくりツアープレステージ」を始めました。今はまだそのツアーをご案内出来るメンバーは数人ですが、できるだけ早く山崎蒸溜所で働くつくり手全員がプレステージツアーを担当できるようになって欲しいなと思います。

有田:それは私もそう思います。工場で働いていると、基本的には正しいことを正しくやり続けるというのが当たり前になってくるので、新しいことをやる機会は多くありません。しかしそれだと、本来自分たちの仕事はお客様に喜んでいただくための一部なのに、そこが見えにくくなってしまいます。そうすると、仕事がすごくつまらなくなってしまう可能性があります。

お客様に直接自分たちのものづくり現場を見ていただく。それと同時に自分が何のために仕事をしているのかということを学ぶ機会にもなるので、つくり手がプレステージツアーの案内を担当するのはすごくいいと思っています。

お客様と直接交流すれば、いろいろな質問をされる機会も増えると思います。そこで上手く答えられずにちょっと恥ずかしい思いをしたり悔しかったりすると、それは成長の機会になりますし、「これをやれ」と言われてやらされるのではなく、「次は答えられるようにしたい」と思った方が、自発的で前向きですよね。

藤井:有田工場長が言ったように、自分たちの仕事を楽しくやって、その仕事でお客様に喜んでいただく。それが好転していくと、もっと頑張ろうとか、もっとこんなことも出来るのではと考えるようになると思います。お客様との会話の中には、よりお客様に喜んでいただくための種がたくさんありますから。

山崎、山崎12年、山崎18年、山崎25年のボトル画像

――工場長の先輩として、有田工場長から藤井さんに聞いてみたいことはありますか?

有田:一緒にお酒を飲む機会もよくあるので、そこでたくさん話を聞いています。
藤井:よく話をしてますよ(笑)そもそも私が有田に教えることなんてありませんよ(笑)。
インタビュアー:そのぐらい、全幅の信頼を…?
藤井:もちろん。信頼しています。

――有田工場長は今後、山崎蒸溜所や「山崎」ブランドをどのようにしていきたいか、イメージはお持ちですか?

有田:これからの時代は、おいしさですとか、きれいさですとか、数字では見えないものをどれだけ高めていくか、ということが大事になるのではないかと思っています。工場のような場所では、例えば、品質の目標を数字で表した瞬間に、その数値を目指して達成することに注力していきます。機能を追求する商品ならそれだけでも良いかもしれません。しかし我々がつくっているものはウイスキーという嗜好品ですので、数字で表せないものをいかに自分たちで磨いていくか、極めていくか、が大事なのではないかと思います。
プレステージツアーも一緒ですよね。お客様に「今日来てよかった」とか、「だからこんな良いお酒ができるんだ」と思っていただけることが一番大事かなと思います。

藤井元工場長と有田工場長の画像

――最後に、山崎倶楽部の皆様に一言ずつお願いします。

藤井:今までどうもありがとうございました。いま有田工場長が言ったように、これからもずっと、数字で表せない価値をつくり続けていくことが我々の使命だと思っています。お客様に楽しんでいただくための見せ方ですとか、楽しんでいただける切り口というのは、まだまだ広げていけるような気がします。特にこれだけIT化が進み、バーチャルのような世界が広がっていけばいくほど、現実の世界で本物を見たり体験したりすることの方が、相対的に価値が上がっていく、レアなものになるという気がしています。この山崎蒸溜所でのツアーや、ウイスキーを飲むという体験が、そのような価値につながっていけばいいなと思っていますので、引き続き応援よろしくお願いします。

有田:普段から、サントリーシングルモルトウイスキー「山崎」をご愛顧いただきありがとうございます。先ほども申しましたが、おいしいウイスキーをつくり、綺麗なパッケージでお届けすることで、ウイスキーや蒸溜所の価値を高めていく。そして、ものづくりの現場を、お客様に見ていただくことで、皆さまに喜んでいただければなと思っております。これからどうぞよろしくお願いします。

有田工場長の画像

山崎蒸溜所工場長 有田哲也

PROFILE
山口県出身、京都大学院工学研究科卒。
2002年サントリー入社、ビールの研究開発などを担当。2016年ブレンダー室開発主幹となり、2018年から3年間はスコットランドに駐在。2022年、白州蒸溜所の工場長に就任。2024年4月より山崎蒸溜所の工場長を務める。

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