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Art of Blending

受け継がれるブレンドの技

幾重にも広がる「響」の複雑で繊細な香味は、ブレンダーの技なくして生まれることはありません。ウイスキーの味わいを最終的に決定するマスターブレンダーは、信治郎の血縁一族が代々受け継ぎ、その品質や複雑な香味を守り続けています。初代の鳥井信治郎、二代目の佐治敬三に継ぎ、現在のマスターブレンダーは、信治郎の孫にあたる鳥井信吾がつとめています。マスターブレンダーのもとでウイスキーづくりを統括するのが、チーフブレンダー。現在は四代目となる福與伸二がその役目を担っています。

 

「モノいわぬ原酒と会話できるようにならないと、一人前のブレンダーとはいえぬ。」信治郎が遺したその言葉は、全てのブレンダーの胸に刻まれています。彼らがテイスティングする原酒は、1日に300種以上におよぶこともあります。おなじ時期におなじ方法で仕込んだ原酒であっても、樽の種類や来歴、貯蔵庫内での樽の置き場所などによって、香りや味わいに微妙な違いが現れます。

そのため、ブレンドのレシピは数字や文字で記すことはできません。ブレンダーは、ひと樽ごとに異なる個性や熟成のピークを見極め、「これぞ」という原酒を選びます。そして、それらの原酒を重ねあわせ、ひとつにまとめあげるのは、まさに匠の技。日本人ならではの繊細な感性と細やかな技を要します。

 

原料の仕込みから製品化までに何十年もの歳月を費やすウイスキーづくり。ブレンダーをはじめとする職人たちは、ひとつひとつの原酒に弛みなく手を掛け、根気よく見守ります。また、未来の「響」には、どのような香味が必要になるかを予測して、日々さまざまな原酒を仕込むのもブレンダーの仕事です。

繰り返してきたその営みは、何代にもまたいでようやく実を結ぶもの。それは、「過去や未来のブレンダーとの共同作業」といえるでしょう。

 
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