




心と体がほどける極上の空間
清里を訪れたのは、この冬最強ともいわれた寒波が過ぎ去った翌日。降り続いた雪はあたり一面を覆い尽くし、前日までの天気が嘘のように晴れた空には満天の星が瞬く。氷点下をゆうに下回る空気はキリリと冷たいものの、それすら心地よく感じる高原ならではの冬の夜でした。今回のお目当てであるバー「パーチ」があるのは、オルゴール博物館や地ビールレストラン、雑貨店などが集まった清里の「萌木の村」の一角です。広葉樹の林に囲まれて、ヨーロッパアルプスに佇むシャレーそのままの趣で立つホテル「ハット・ウォールデン」の2階。重い木の扉を開け、バーテンダーの久保田勇さんの優しい笑顔と暖かな空気に迎えられると、かじかんだ手足がほぐれていきます。
まず目に入るのは、なんといっても大きな暖炉。1978年にホテルが創業した時からあるレンガ造りのマントルピースは、どっしりとした重厚感で歴史を感じさせます。カウンターは南米産のブビンガという木の一枚板。椅子はゲストにゆったり、楽に過ごしてもらいたいとの思いから、ロータイプのものを職人に特注。ジャズやクラシックの調べを程よい低音を伴い響かせているのは、知る人ぞ知るアルテック社製の巨大なスピーカー。細部にまでオーナーのこだわりが行き届いた空間には、「とにかくお酒をおいしく飲める場所にしたい」という気持ちが現れています。
そんな上質な空間の一角に並べられたウイスキーのラインナップも、さすがと唸らされる充実ぶり。今ではほとんど目にすることのできないオールドボトルのコレクションもずらり。まるでウイスキーの博物館のようです。シングルモルトウイスキー白州は「白州」「白州12年(休売中)」「白州18年」「白州25年」と全て揃っていました。

25年は複雑な余韻が長く続く」とそれぞれの個性を表現してくれました。※白州12年 休売中
冬の夜長は少し贅沢に熟成した白州を愉しむ
店に並べるウイスキーのセレクトはやはりシングルモルトウイスキーが多いよう。その理由を久保田さんは、「懐の深さ」だと言います。「銘柄ごとのフレーバーの差、個性がこれだけはっきりと現れる酒は稀です。もちろんブレンデッドウイスキーも素晴らしいのですが、シングルモルトウイスキーの多様性というのは、ほかの酒にはない魅力ではないでしょうか」
そんな個性あふれるシングルモルトウイスキーのなかから、今日、こんな寒い夜に暖炉の前で飲むのにおすすめなのは?そう質問すると、「やはり白州でしょう」との答え。
「白州のフレーバーは、まさにオンリーワンです。海を感じさせるシングルモルトウイスキーは多いのですが、口にした途端、ダイレクトに森が思い浮かぶウイスキーは世界中探しても白州以外にありません。ミントや青りんごの爽やかな香りも感じられる白州こそ、豊かな森に恵まれたこの地で飲むのにふさわしいと思います。さらに、食事の後にゆったりと飲むなら、白州12年(休売中)や白州18年を試してみるのはいかがですか。複雑で繊細な香りを時間をかけて変化させながら愉しめる熟成した白州は、長い夜のお供に向いていますよ」


暖炉の前で白州を愉しむ贅沢な時間
白州12年(休売中)のロックを持って暖炉の前へ。使い込まれて味の出たソファに身を委ね、琥珀色の液体をほんの少し口に含む。白州ならではの爽快さに続き、青りんごのような爽やかな香りが鼻を抜けていく。柔らかなスモーキーな余韻も心地いい。目の前では、薪がときおりパチパチと音を立てる。定まることなく揺れる炎が優しく顔を照らす。ガラス一枚隔てた外の寒さが信じられないくらい暖かな空気が、じんわりと体を包んでくれる。こんなにリラックスしながらウイスキーを飲める場所も珍しいのではないでしょうか。「清里はとにかく水が美味しい。地下150mから湧き出す水を毎日汲みに行っているので、それを白州に合わせてもらいたいですね。それも、水割りのようにするのではなく、一滴、二滴と、ほんの少しずつ加えていくんです。そうすると、白州の隠れていた香りがちょっとずつ開いていくのがお分かりいただけると思います。どのくらい水を加えるのが好きかは人によって千差万別。そのベストな味を探す過程を、私は“旅”と言っています」と久保田さん。
暖炉の前でウイスキーと一緒に旅をする。時間をかけて、清冽な天然水の力を借りて白州のさらなる魅力をじっくりと引き出していく。そんな贅沢な時間を、あなたも愉しんでみませんか。