フィリピン出身の作曲家、音楽民族学者、ピアニスト。マニラでピアノを学んだあと渡仏、パリでナディア・ブーランジェ、エコール・ノルマル音楽院でコルトー、ダンドゥロに師事(1937~41)。故国、フランス、アメリカでピアニストとして活動したのち、ニューヨーク市立大学クイーンズ校、コロンビア大学で音楽学(50~52)、シカゴ大学で人類学、インディアナ大学で音楽民族学をそれぞれ修め(57~58)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で博士号を取得(63)。フィリピン大学で教えながら、東南アジアでフィールドワークを重ねる。60年代から作曲を開始、20のラジオ局で同時に放送される録音を受信機を持ち寄って聴く『ウグナヤン』(74)、数千人での演奏も可能な竹楽器と声のための『ウドゥロ゠ウドゥロ』(75)では、聴衆をコンサートホールから解放し、聴き手と演奏者の境を取り払った。ドローン(持続音)と緩やかに交替するテクスチュアが生む繊細な色彩、周囲の環境音と親和する風通しのよさをそなえたその作品は、高橋悠治らによって継続的に日本に紹介されてきた。サントリーホール国際作曲委嘱シリーズでは『ディステンペラメント(平均律の解体)』(92)を作曲。
[平野貴俊]
東京音楽大学、同大学院修了後2009年に渡蘭。ローム ミュージック ファンデーション、文化庁新進芸術家海外研修制度、ハーグ王立音楽院特待生の助成を受け、アムステルダム音楽院とハーグ王立音楽院を修了(作曲科)。02年より、東京音楽大学とアムステルダム音楽院で学び続けてきたガムランをもっと知りたくて、インドネシア政府奨学金および野村財団による助成を受けインドネシア国立芸術大学スラカルタ校でジャワガムランを学ぶ。作曲家としては、第17回芥川作曲賞、第18回出光音楽賞など国内外での受賞多数。昨年はBBC Radio 3の委嘱による新作『揺籠と糸引き雨』がBBC交響楽団により世界初演された。
1996年、初のガムラン作品『踊れ!ベートーヴェン』をインドネシア4都市で上演。98年、人類学博物館(パリ)でガムランワークショップ。2001年ガムランシアター『桃太郎』(work in progress)をマルガサリと共同制作開始。04〜09年、東南アジアのアーティストとの即興コレクティヴ I-Picnicをタイ、インドネシア、オーストリア、日本で展開。13年、インドネシアとタイで原発と共同作曲に関するプロジェクト。16年、インドネシアとの瓦による音楽国際交流企画Musik Genteng実施。千住だじゃれ音楽祭(2011〜)、日本センチュリー交響楽団「コミュニティプログラム」(14〜)、ガチャ・コン音楽祭(20〜)のディレクター。日本相撲聞芸術作曲家協議会(JACSHA)理事。著書に『音楽の未来を作曲する』(晶文社)ほか。
カリフォルニア大学サンディエゴ校音楽学部博士課程修了。博士号(Ph.D.)を取得。湯浅譲二やモートン・フェルドマンらに師事。植物の電位変化データに基づく『植物文様』を展開。著書に『[増補]響きの考古学』、『響きの生態系』など。CDにはTZADIKから『The Night Chant』などの3枚のアルバムやサラ・ケイヒルのピアノによる『Patterns of Plants』、砂原悟による『クラヴィコードの植物文様』、西山まりえによる『ルネサンスの植物文様』、パラグナ・グループによる『ガムラン曼荼羅』など多数。『甕の音なひ』、『織・曼荼羅』、モノオペラ『八雲の向日葵』、現代神楽『玉垂』などの舞台作品も手がける。2022年に福岡ガムラン・フェスティバルを開催。23年5月には自由学園明日館にて「両界ガムラン曼荼羅」を開催。20 年まで九州大学大学院芸術研究院教授。現在、九州大学名誉教授。
東京学芸大学G類音楽科作曲専攻卒業、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)メディア表現研究科修了。楽譜を使わず、人間の呼吸や身体のリズムをきっかけに音を紡ぎ出していくような、独自の方法論で作曲する。主宰する声のアンサンブルグループ「つむぎね」の音楽パフォーマンスを多数制作するほか、邦楽器や日本の仏教声楽「聲明」の作曲にも取り組む。2011年第6回JFC作曲賞受賞。16年Asian Cultural Councilグランティ選出にてNY滞在。18年国際交流基金アジア・フェローにて、半年にわたり東南アジア4カ国をリサーチした経験から、ガムラン音楽の構造や社会的役割に惹かれ、20年度高知県立美術館の企画にて高知の小学生のために、ガムラン曲『カメカメ Kura-kura』を作曲。ガムランのような音楽本来の意義や社会的役割を持った、アジアに根差す表現を目指している。
つむぎねウェブサイト:https://www.tsumugine.com/
中国古典・民族舞踊を学び、北京公演などで活躍。その後、日本の古典・民俗芸能と出会い、その法則・音魂・形魂を学び、オリジナルスタイルの舞『瑞穂舞』を創始する。その天界を舞うような美しい舞スタイルから「天女の舞」と呼ばれる。伊勢神宮・出雲大社はじめ日本全国の神社仏閣に舞を奉納するとともに、海外公演など数々の舞台公演を行う。2003年「浅野瑞穂舞踊研究所スタジオ」開設。主な舞台作品に、朗読活劇『レチタ・カルダ「義経」』『ドラマチック古事記』『舞踊家 浅野瑞穂~地・水・火・風・空を舞う』(池上本門寺)などがある。
影絵師・音楽家。インドネシア・バリ島の伝統影絵「ワヤン・クリット」を現代的な文脈で捉え直し、新たな芸能のカタチを模索し続ける影絵師。日本各地でフィールドワークやワークショップを行い、土地の記憶を手がかりに影絵作品製作。音楽ユニット「滞空時間」主宰。第27回五島記念文化賞美術新人賞受賞。北海道庁主催『北の絵コンテ大賞』受賞(2021)。テレビ東京「東京交差点」出演(22)。『福田うみやまこばなし』(瀬戸内国際芸術祭/22)、ストラヴィンスキー『兵士の物語』(演出・出演/東京藝術大学/22)ほか。
インドネシア・中部ジャワ・バニュマス地方の竹のガムラン「チャルン」を演奏するグループ。ガムラングループ・ランバンサリのチャルン講座を母体とし、インドネシア国立芸術大学(ISI)スラカルタ校教授、ダルノ・カルタウィにより2018年に命名された。「KULU-KULU」は代表的な曲の名前で、バニュマス音楽の信条であるエネルギッシュな演奏ができるようにという願いが込められている。バニュマスを数回訪れ、現地の演奏家との交流演奏会にも出演。メンバーは木村佳代(代表)、加藤駿吾、川口明子、福田雅希、牧野明子、三村久実子、村上圭子、安則京子、栁川智子、ほか。
幼少の頃、心理学者の父が自閉症児と転がる姿を眺める。大阪大学でガムランを開始。鈴木昭男、野村誠らに衝撃を受ける。ベン・スハルトのいるインドネシア国立芸術大学へ留学。帰国後、ガムラングループや様々なダンサーと活発に活動。たんぽぽの家の障害者と出会い以降、マイノリティの人との即興ダンスに傾注。振付『PATINA』(2018)OzAsia Festival招聘、演出『だんだんたんぼに夜明かしカエル』(19)、野村誠と砂連尾理との問題行動トリオin十和田市現代美術館(21~22)など。
「だじゃれ音楽」という新たな音楽の形態を研究すべく、2012年に発足した音楽団体。足立区千住地域を拠点に、音楽経験・年齢・職業を問わず多様な人々が集い、即興演奏や共同作曲を主軸とした活動を行う。これまでに「千住だじゃれ音楽祭」の一環として、14年に1010人の演奏者によるコンサート『千住の1010人』、15年にタイ・ツアー、16年にインドネシア・ツアー(助成:国際交流基金)を実施。19年にダンス公演『だんだんたんぼに夜明かしカエル』、22年に『1DAYパフォーマンス表現街』にゲスト出演。
1996年、初のガムラン作品『踊れ!ベートーヴェン』をインドネシア4都市で上演。98年、人類学博物館(パリ)でガムランワークショップ。2001年ガムランシアター『桃太郎』(work in progress)をマルガサリと共同制作開始。04〜09年、東南アジアのアーティストとの即興コレクティヴ I-Picnicをタイ、インドネシア、オーストリア、日本で展開。13年、インドネシアとタイで原発と共同作曲に関するプロジェクト。16年、インドネシアとの瓦による音楽国際交流企画Musik Genteng実施。千住だじゃれ音楽祭(2011〜)、日本センチュリー交響楽団「コミュニティプログラム」(14〜)、ガチャ・コン音楽祭(20〜)のディレクター。日本相撲聞芸術作曲家協議会(JACSHA)理事。著書に『音楽の未来を作曲する』(晶文社)ほか。
1985年結成。インドネシア・スンダ(西ジャワ)音楽のグループとして、東京を拠点にガムラン・ドゥグン、トゥンバン・スンダの演奏活動を行っている。スンダの音楽家との共演も多く、インドネシアのガムラン・フェスティバルに多数参加。古典曲のほか、ルー・ハリソンや藤枝守作曲の現代作品も精力的に演奏し、幅広い活動を展開している。2021年、CD『ガムラン曼荼羅/藤枝守』(MAM-0003)をMilestone Art Worksより発売。YouTube「Paragunaチャンネル」を開設し随時配信中。
1998年に発足。ジャワのガムラン音楽をルーツに、伝統的な古典音楽の上演のみならず、世界各地の作曲家への新作委嘱も積極的に行い、国内外で高い評価と注目を得ている。特に日本・インドネシア修好50周年を記念した2008年の公演は、国際交流基金、アサヒビール芸術文化財団の助成を得て挙行され、現地に大きなインパクトを与えた。
「現代音楽としてのガムラン」の追究は作曲家、アーティストとのコラボレーションによって実現している。野村誠との共同制作による歌舞劇『桃太郎』に加え、三輪眞弘によって『愛の讃歌』ほか3作がマルガサリのために作曲され、20年にサラマンカホールで初演された『鶏たちのための五芒星』を含む「ぎふ未来音楽展2020 三輪眞弘祭 清められた夜」(第20回佐治敬三賞を受賞)にも出演。
現代において音楽文化が果たす役割について考え、実践的に提案も行っている。具体的には障害のある人との作品づくり、甚大な災害(大地震など)を受けた人々、地域へのサポートなどがある。04年より障害者とともに舞台作品『さあトーマス』を制作し、大阪、東京、滋賀、奈良、徳島などで公演を重ねる。06年の中部ジャワ大地震に際しては、サポート組織を立ち上げた。近年は京都府木津川市に第2拠点を設け、21年から京都定期公演を開始。
メンバーは、恵美須屋直樹、大井卓也、黒川 岳、谷口かんな、中川 真、西 真奈美、西村彰洋、森山みどり。
雅楽演奏家/横笛、左舞、楽琵琶奏者。東京都出身。高校入学時より雅楽を始め、東京藝術大学音楽学部卒業。在学中に横笛を越後眞美、古代歌謡を東儀雅季、左舞を岩波孝昌に師事し、卒業後に横笛を芝祐靖に師事する。2009年には同大学非常勤講師。これまでにアメリカ、イギリス、パリ、中国、韓国をはじめ、文化庁舞台芸術国際フェスティバル、サイトウ・キネン・フェスティバル松本など国内外の多くの公演に出演。映画『源氏物語 千年の謎』『瀬戸内海賊物語』やアニメ「平家物語」などのレコーディングにも参加するなど、横笛奏者として幅広い演奏活動を展開している。雅楽演奏団体「伶楽舎」に所属し、小学校・博物館を含めた教育機関への指導・演奏など、後進の育成も積極的に行っている。
フランス国立リヨン地方音楽院を審査員満場一致の1等賞で卒業後、アムステルダム音楽院にて修士課程修了。ベルギー政府給費奨学生としてゲント音楽院現代音楽上級修士課程修了。日本ジュニア管打楽器コンクール第1位、キエリ国際コンペティションファイナリスト。クラシック・現代音楽の演奏活動と並行し、即興演奏家としてワークショップやライブ出演を行っている。国内外のガムラン演奏会にサックス奏者/ガムラン奏者として出演。オランダのガムランアンサンブルWidosariメンバー。日本音楽即興学会会員。
歌い手。東京藝術大学音楽学部声楽科ソプラノ専攻修了。ジャワガムランのプシンデン(女声歌手)として活動するほか、滞空時間、菜の花楽団、スミリール、七里圭作品などに参加。シャンソンや民謡にも取り組む。グローバリズムの抱える問題に向き合いながら創造力豊かなアートネットワークへの貢献を志す。東京成徳短期大学幼児教育科非常勤講師。サウナー。スモ女。盆踊ラー。
東京藝術大学卒業、同大学院修了、DAAD奨学生としてミュンヘン音楽演劇大学マイスタークラッセ修了。1984年日本音楽コンクール入選。87年ポルト市国際ピアノコンクール入賞。88年クロイツァー賞受賞。2008年マイルストーン・レーベルよりリリースの『クラヴィコードの植物文様』(藤枝守作曲)はレコード芸術誌で準特選。22年12月アクロス福岡 円形ホールにて藤枝守のガムラン・コンチェルトを初演。宮島敏、中山靖子、クラウス・シルデ、小林仁に師事。京都市立芸術大学教授。
中谷満と「相愛大学音楽学部打楽器合奏団」は年に一度の定期演奏会を中心に、地域や中高生のための鑑賞会などを積極的に行っている。2014年以降は提携校であるフライブルク国立音楽大学打楽器クラスと、15年、18年、19年にはフライブルク国立音楽大学や、相愛大学音楽学部にて交流演奏会を行っている。現在、相愛大学音楽学部生、相愛大学大学院音楽研究科生25名で構成されている。今回は中谷満(教授)小野竜聖(院1)花田零(院1)星山理奈(院1)高眞炫(大4)鈴木彩葵(大4)川久珠寿(大3)の7名で参加する。
2008年より作曲家・宮内康乃を中心に結成した、女性たちによる音楽パフォーマンスグループ。主に声を使い、楽譜ではなく、呼吸など身体の有機的なリズムをトリガーにした単純なルールをもとに、空間上の響きを紡ぎ出していく独自のパフォーマンスを展開する。活動は音楽分野に留まらず、舞台単独公演のほか、美術やダンス、演劇など他ジャンルとのコラボレーションや、劇場だけでなく美術館、野外、古民家など多様な空間でのパフォーマンス実践、ワークショップ活動など多岐に渡る。トーキョーワンダーサイト(現トーキョーアーツアンドスペース)主催「Experimental sound, art & performance festival 2008」最優秀賞受賞。
ヨーロッパの伝統音楽に基づく音楽教育を目的とする日本初の本格派合唱団として1951年設立。グレゴリオ聖歌から現代作品までレパートリーは幅広い。年2回の定期公演のほか、64年以来海外公演は33回を数える。国内外のオーケストラ、オペラ劇場との共演も多く、C. アバド指揮ベルリン・フィルをはじめR. ムーティ、F. ルイージとの共演では高い評価を得た。創立65周年ではイタリアの各地で公演を実施。サン・ピエトロ大聖堂新年ミサでフランシスコ教皇のもと世界の聖歌隊と平和祈願を捧げた。2021年の創立70周年を迎え、「70周年記念コンサートシリーズ2021~23」を実施、ファイナル公演を23年7月9日にサントリーホールで開催。芸術監督/常任指揮者を長谷川久恵が務める。
日本フィルハーモニー交響楽団ファゴット奏者、Ensemble FOVEメンバー、東京音楽大学非常勤講師。京都市立芸術大学卒業。パリ地方音楽院、フランクフルト音楽舞台芸術大学大学院およびドイツ、アンサンブル・モデルン・アカデミー修了。京都市芸術文化特別奨励賞受賞。明治安田クオリティオブライフ文化財団海外音楽研修生。