細川俊夫(1955~ )

1955年広島生まれ。ベルリン芸術大学で尹伊桑に、フライブルク音楽大学でK. フーバーに作曲を師事。80年ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に初めて参加、作品を発表する。以降、ヨーロッパと日本を中心に、作曲活動を展開。日本を代表する作曲家として、欧米の主要なオーケストラ、音楽祭、オペラ劇場などから次々と委嘱を受け、国際的に高い評価を得ている。作品は、大野和士、準・メルクル、ケント・ナガノ、サイモン・ラトル、ロビン・ティチアーティ、フランツ・ウェルザー゠メストなど、世界一流の指揮者たちによって初演され、その多くはレパートリーとして演奏され続けている。2014年、トランペット協奏曲『霧のなかで』(サントリーホール委嘱)で3度目の尾高賞を受賞。11年にオペラ『松風』、16年にオペラ『海、静かな海』がハンブルクで、17年にオペラ『二人静─海から来た少女─』がパリで、18年にはオペラ『地震・夢』がシュトゥットガルトで初演。いずれも大きな注目を集めるとともに、高い評価を受けた。01年にドイツ・ベルリンの芸術アカデミー会員に選ばれる。06/07年および08/09年、ベルリン高等研究所からフェロー(特別研究員)として招待され、ベルリンに滞在。12年にはドイツ・バイエルン芸術アカデミーの会員に選出された。12年に紫綬褒章を受章。18年度国際交流基金賞を受賞。現在、武生国際音楽祭音楽監督、東京音楽大学およびエリザベト音楽大学客員教授。20/21年、広島交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンス。

グスタフ・マーラー(1860~1911)

現チェコのイフラヴァ付近の村カリシュテでユダヤ系の家庭に生まれる。ウィーン楽友協会音楽院でロベルト・フックスらに師事し(1875~78)作曲を始める。指揮も在学中から始め、カッセル、ライプツィヒ、ブダペストの各劇場を経て、91年にハンブルク市立劇場首席楽長、97年にはウィーン宮廷歌劇場監督に就任。ヨーロッパ各地で客演を重ね、1907年には渡米してメトロポリタン歌劇場、ついでニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者となる。多忙な指揮活動の合間を縫って、夏に集中して作曲を行い、管弦楽の伴奏による歌曲と11の交響曲(番号なしの『大地の歌』、未完の第10番を含む)を残した。交響曲では声楽、自然の音の模倣、特殊な楽器(ハンマー、マンドリンなど)といった特徴的要素を導入。深い懊悩から純朴な夢想に至るまで、人間の生におけるあらゆる体験を真に迫って描きだすかのような、劇的で力強い音楽を作りあげた。60年代以後、生誕100周年、バーンスタインらによる交響曲全集の録音、アドルノの論考などをきっかけとして世界的に注目を浴び、80年代前後には日本にもいわゆる「マーラー・ブーム」が到来、歌曲を含むほぼすべての作品が演奏会のレパートリーとして定着している。

[平野貴俊]

バスチアン・ダヴィッド(1990~ )

10歳で作曲を始める。ジュヌヴィリエ地方音楽院でベルナール・カヴァナとホセ・マヌエル・ロペス・ロペスに師事し、パリ国立高等音楽院でジェラール・ペソンに学ぶ。2018年、エクサンプロヴァンス音楽祭のオペラ・ワークショップに参加、プレザンス音楽祭でアンサンブル作品『AVEC』(ラジオ・フランス委嘱)が世界初演される。同年アカデミー・デ・ボザールの奨励賞を受賞。ヴィラ・メディチに滞在(19~20)。「音の研究者」を名乗り、4分音アコーディオンと2台の蓄音機(SPレコードと蝋管)とアンサンブルのための協奏曲『溝から』(16)を作曲、ミャンマー訪問後6年を費やして216の音板からなる12分音鉄琴を製作するなど、未知の音を意欲的に探求。伝統的な編成における音の扱いにも秀でており、20年のプレザンス音楽祭でEICによって世界初演された『アーバン・ソング』(EICとラジオ・フランスの共同委嘱)では、柔軟で創意ゆたかな楽器の扱いと音の明晰な立ち上がり、緻密で立体的な交錯により、街中の落書きのように猥雑だが鮮烈かつ抒情的な音響を構築。弛緩させることなく終盤へと導く構成の手腕は見事である。

[平野貴俊]

クレール=メラニー・シニュベール(1973~ )

ストラスブール出身。フランスとスイスの二重国籍をもつ。ヴィル・ダヴレー地方音楽院でパトリス・ボキヨンにフルートを学んだのち作曲に転向、セルヒオ・オルテガ、アラン・ゴーサン、イヴァン・フェデーレに学びパリ国立高等音楽院に入学(2001)、フレデリック・デュリユーに師事。またIRCAMでフィリップ・ルルーによる研修を受ける(04~05)。フランシス・ミカ・サラベール賞(06)、SACEM(音楽作家・作曲家・出版者協会)のジョルジュ・エネスク賞(07)受賞。声を用いた作品から出発、アンサンブルのための『騒々しさ』(07)以後は軽妙さを持ち味とするようになり、子どもの遊びや日常生活に潜む仕掛けやからくりを拡大、洗練させたかのような精巧かつ軽やかで清新、愉悦に満ちた音楽を発表。08年にはヴィラ九条山に滞在、能の謡や日本庭園との接触を通して、声そして沈黙の役割を再認識した。また同年サントリー芸術財団サマーフェスティバルでオーケストラのための『クロニーク』(フランス政府委嘱)が世界初演されている。ヴィラ・メディチに滞在(10~11)。SACEMのエルヴェ・デュガルダン賞受賞(17)。20年のプレザンス音楽祭でピアノのための『トッカータ』(ラジオ・フランス委嘱)が世界初演された。

[平野貴俊]

坂田直樹(1981~ )

1981年、京都市生まれ。愛知県立芸術大学、パリ・エコールノルマル音楽院をそれぞれ首席で卒業。パリ国立高等音楽院を修了ののち、IRCAMにて研修を受ける。第36回入野賞、2017年度武満徹作曲賞第1位、第66回尾高賞、第28回芥川作曲賞など受賞多数。国際的な委嘱も数多く、これまでに京都市交響楽団、いずみシンフォニエッタ大阪、サントリー芸術財団、フランス・ミュージック、フランス文化省などからの委嘱を受けており、現在、名古屋フィルハーモニー交響楽団第3代コンポーザー・イン・レジデンスに就任。また、作品はヨーロッパ、アジア、北米、南米で紹介されており、ルートヴィヒスブルク音楽祭、武生国際音楽祭、フェスティバル・ムジカ、ワールド・サクソフォーン・コングレスなど著名な音楽祭で取り上げられ、NHK交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、アンサンブル2E2M、アンサンブル・アルテルナンス、ディヴェルティメント・アンサンブル、アンサンブル・ケルン、アンサンブル・ノマド、東京シンフォニエッタなど、威信のある演奏団体によって演奏されている。

武満 徹(1930~96)

東京に生まれる。15歳ころに陸軍の宿舎で聴いたリュシエンヌ・ボワイエの『聞かせてよ愛の言葉を』で音楽に目ざめ、1948年から清瀬保二に作曲を師事。50年ころ、湯浅譲二らと芸術家団体「実験工房」を結成、劇音楽、放送用音楽、テープ音楽も発表する。ラジオで耳にしたストラヴィンスキーが称賛した『弦楽のためのレクイエム』(57)、ユネスコ国際音楽評議会主催のコンクールで入賞・受賞した『環礁』(62)、『テクスチュアズ』(64)、そしてニューヨーク・フィルハーモニック創立125周年を記念して委嘱された琵琶、尺八、オーケストラのための『ノヴェンバー・ステップス』(67)で国際的な評価を確立、日本の作曲家として未曾有の名声を獲得した。前衛的技法を独自に応用した60年代までの作品は、ときに峻厳な印象を与えるが、70年代後半以降のとりわけ水、夢、雨に着想を得た作品では、瑞々しく豊麗で耽美的な響きを追求。ポップで洒脱な「うた」のシリーズ、100以上の映画、放送用音楽の作曲、現代音楽祭「今日の音楽」の企画・構成(73~92)、サントリーホールの国際作曲委嘱シリーズの監修(86~98)を通して、日本の音楽文化に果たした貢献は多角的かつ厖大である。

[平野貴俊]

作曲・指揮:マティアス・ピンチャー(1971~ )

ドイツ出身の作曲家、指揮者、教育者。20代前半で作曲家として頭角を現す。アンサンブル・アンテルコンタンポラン(以下、EIC)の音楽監督に就任した2013年前後から指揮活動を本格化させ、世界各地のオーケストラを指揮、若手音楽家の教育にも携わる。40代にして「第二のブーレーズ」(ル・モンド紙)と評されたピンチャーが展開する多角的で国際的な活動は、世界の音楽界の注目を集めている。

1971年、ノルトラインヴェストファーレン州のマールに生まれ、ピアノ、打楽器、ヴァイオリン、指揮を学ぶ。オーケストラの響きに魅力を見出し、地元のユース・オーケストラを指揮。89年、デトモルト音楽大学でギーゼルヘア・クレーベに、92~94年にはデュッセルドルフ・ロベルト・シューマン音楽大学でマンフレート・トロヤーンに作曲を師事した。91年と92年にはハンス・ヴェルナー・ヘンツェによって、モンテプルチャーノ音楽祭に招待されている。99年、『エロディアード断章』がクリスティーネ・シェーファーとアバド指揮ベルリン・フィルによって初演される。同年にKAIROSから発売された管弦楽作品集のCDはドイツ国外でも高く評価され、前年にはザクセン州立歌劇場で初のオペラ『トーマス・チャタートン』が初演されるなど、20代の間に作曲家としての地歩を築いた。

指揮者としての実質的なデビューは94年、自作のムジークテアーター『ひびの入った鐘』の初演(ベルリン州立歌劇場)である。2008年にニューヨークに居を移してからは、クリーヴランド管弦楽団などで自作を含む同時代の作品を指揮。13年にブーレーズによってEICの音楽監督に任命されて以降、同団体に加えて欧米・オーストラリアの数々のオーケストラに客演し、16~18年にはルツェルン・フェスティバル・アカデミーの首席指揮者を務めた。古典派から現代に至る広範なレパートリーを手がけるが、近年はオペラにも取り組む。19年にウィーン国立歌劇場でオルガ・ノイヴィルトの話題作『オーランドー』(世界初演)、20年12月にはベルリン州立歌劇場でワーグナー『ローエングリン』を指揮するなど、存命の作曲家兼指揮者としてホリガー、エトヴェシュ、サロネンに匹敵する存在となりつつある。

作品には3つの源流が見出される。1990年代のアルチュール・ランボーの詩に依拠する一連の作品では、緊張の持続のなかで、内省と情動がときに交替しときに一体となる。その試みは2004年にパリ・オペラ座バスティーユで初演されたムジークテアーター、『最後の空間[レスパス・デルニエ]』に結実した。同時代の視覚芸術に着想を得た2000年代の作品としては、サイ・トゥオンブリーの絵画『ヴェール論』にもとづく弦楽器のための『ヴェール論習作I~IV』(04~09)が挙げられる。一聴するとモノクロームの静的な音楽だが、耳を澄ますと元の絵画にも似た、発音と余韻の限りなく微細なニュアンスを感取できる。準備と集中の末に一瞬で書かれ固定される、日本の書の在り方にもピンチャーは触発されたという。2本のトランペットとオーケストラのための『星々の落下』(12)は、アンゼルム・キーファーが描いた同名の巨大な絵画のマチエール(画面の質感)を、従来の劇的な対比と上記の多彩なニュアンスを組み合わせることで、まざまざと再現する。30歳ころからユダヤ系の出自とコスモポリタン性を自覚してきたピンチャーは近年、ユダヤの文化にも着想を見出している。大アンサンブルのための『初めに[ベレシート]』(13)は、『星々の落下』の音世界を基調としながらも、打楽器を効果的に用いた明晰かつ力強い響きを採りいれて、世界の始原に伴う混沌を描きだす。指揮者としての経験が、音響の設計に役立っていることは間違いない。

これまでに、ルツェルン音楽祭を含む10の団体のコンポーザー(アーティスト)・イン・レジデンス、ミュンヘン音楽演劇大学作曲科(07~09)、ニューヨーク大学作曲科(10~11)、ジュリアード音楽院作曲科(14~)の教授を務め、17~18年にはベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーで指揮を教えた。20/21シーズンよりシンシナティ交響楽団のクリエイティヴ・パートナーを務める。作品はすべてベーレンライターから出版されている。

[平野貴俊]

ジェラール・グリゼイ(1946~98)

フランスのベルフォールに生まれ、トロッシンゲン音楽大学(1963~65)を経てパリ・エコールノルマル音楽院でデュティユー(68)、パリ国立高等音楽院でメシアン(68~73)に師事。ヴィラ・メディチに滞在(72~74)中の73年、同じくメシアンの弟子であったミカエル・レヴィナス、トリスタン・ミュライユらとともに音楽家集団「イティネレール」を結成した。独立した6つの楽曲からなる大作『音響空間』(74~85)で、加算合成とリング変調を主な手法とする音の組成の解析から眩いばかりの音響を引きだし、これにより音の解析を作曲に応用する「スペクトル楽派」の旗手とみなされた。音響が徐々に変容していく『音響空間』にも似て、室内楽のための『タレア』(85~86)で緩やかな減速とテクスチュアの均一化を、『時の渦[ヴォルテクス・テンポルム]』(94~96)では時間感覚の膨張と縮小を試みている。一方で、声を用いた『愛の歌』(82~84)、遺作『境を越えるための4つの歌』(97~98)には、一転して黒々とした厳粛な雰囲気が支配する。カリフォルニア大学バークレー校(82~86)、パリ国立高等音楽院(87~98、管弦楽法のちに作曲)で教えたが、52歳の若さで死去した。

[平野貴俊]

ピエール・ブーレーズ(1925~2016)

リヨン西方のモンブリゾン出身。1945年、パリ国立高等音楽院のメシアンの和声クラスで一等賞を獲得。ルノー゠バロー劇団音楽監督を務め、指揮の経験を積む。創作のほか挑発的な論考、54年に設立したプティ・マリニー演奏会(のちドメーヌ・ミュジカル)を通してトータル・セリアリズムを普及、ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習の主要な立役者となる。60年代後半からは指揮者としても活躍し、BBC交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックなど欧米の錚々たるオーケストラを指揮。EICとIRCAMの設立を主導し、音楽家として初めてコレージュ・ド・フランス教授を務め(76〜95)、2004年ルツェルン音楽祭アカデミー初代芸術監督に就任する(〜07)など、全方位から現代音楽界を牽引した。 『ル・マルトー・サン・メートル』(1952~55)、『プリ・スロン・プリ』(57~62/89)では、音の論理と組織化を極限まで突き詰めつつ、響きには冷厳な抒情を滲ませ、『レポン』(81~84)や『シュル・アンシーズ』(96~98)では美感に訴える艶麗な音響を実現。構想とその具現化を緻密かつ柔軟に思考する姿勢は、数多くの音楽家に指針を与え続けている。

[平野貴俊]

ヘルムート・ラッヘンマン(1935~ )

シュトゥットガルトに生まれる。同地の音楽大学でヨハン・ネポムク・ダーフィトらに学んだ(1955~58)後、ヴェネツィアでルイジ・ノーノに師事(58~60)、62年にヴェネツィア・ビエンナーレとダルムシュタット国際現代音楽夏期講習で作品が初演される。『temA』(68)を境に、特殊な音(管楽器のキーを叩く音、息の音など)を活用し始め、チェロのための『プレッション』(69~70)では、日常生活において耳障りと感じられる擦過音を大胆に提示。楽音に対する先入観を排除し、白紙状態の耳で音そのものの質を感取することを促した。後には先入観を形づくる歴史や社会といった装置にも目を向け、クラリネットとオーケストラのための『アッカント』(75~76)では工芸品のごとく細部まで磨き抜かれた異質な音の数々に、モーツァルトの『クラリネット協奏曲』を対比。長年の奏法の探究はオペラ『マッチ売りの少女』(90~96/2000)に結実した。8本のホルンとオーケストラのための『マイ・メロディーズ』(16~18/19)の特殊奏法を馴染ませたふくよかな音響で、さらなる円熟を示す。教授歴は約半世紀に及び、母校(現シュトゥットガルト音楽演劇大学)ではマーク・アンドレらを育てた。

[平野貴俊]

マーク・アンドレ(1964~ )

パリ出身。同地の国立高等音楽院でグリゼイとクロード・バリフ(1987~93)、シュトゥットガルト音楽演劇大学でラッヘンマンに師事(93~96)。94年にアルス・スブティリオル(14世紀末フランスの複雑な音楽様式)に関する論文をパリ高等師範学校に提出し、博士準備課程を修了。以後ドイツを拠点とし、師ラッヘンマンの成果を踏まえ、宗教的でユニークなタイトルの作品で特殊奏法を開拓。ブーレーズがその第1作の初演を指揮した初の管弦楽曲『...auf...』(2005~07)3部作の、沈黙ないし微かに鳴り響く持続に、異界から降りてきたかのような幽玄な音で断続的に裂け目を入れる、鮮烈な手法で個性を確立。シュトゥットガルト州立劇場で初演されたオペラ『奇蹟の徴』(08~14/17)の後、イエスへの呼びかけをタイトルで示唆したという『hij』(10~11)2部作では『...auf...』の音世界に光彩あふれる響きを導入、『裂け目[リス]』(14~17/19)3部作の多様な音響には、複雑さを乗り越えた末に到達したかのような透明感すら宿る。ドレスデン・カール・マリア・フォン・ウェーバー音楽大学教授(09~)。ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習(1998/2006/10)、武生国際音楽祭(10)講師。

[平野貴俊]

ジェルジュ・リゲティ(1923~2006)

現ルーマニアのトゥルナヴェニに生まれ、現ゲオルゲ・ディマ音楽アカデミーでファルカシュ・フェレンツ(1941~43)、ブダペストのリスト音楽院でヴェレシュ・シャーンドルに師事(45~48)。民謡に似た様式の合唱曲を作る傍らで実験的作品を書いていたが、56年のハンガリー動乱を経て亡命。稠密で線的なテクスチュアと、無数のうごめく線が雲のような塊を形づくるミクロポリフォニーがそれぞれ特徴的な『アパリシオン』(58~59)と『アトモスフェール』(61)で、セリアリズムが主流であった現代音楽界にインパクトを与える。オペラ『ル・グラン・マカーブル』(74~77)のひねりの効いたパロディも衝撃をもって迎えられ、ポスト・セリアリズムを代表する作曲家のひとりとなる。ハンブルク音楽演劇大学では、ウンスク・チンら後進を育てた。80年代以降は、コンロン・ナンカロウの自動ピアノ作品、アジア・アフリカの音楽、コンピューターが生成するフラクタル画像などから刺戟を得て、とりわけ『ピアノ協奏曲』(85~88)、ピアノのための『練習曲集』全3巻(85~2001)、『ヴァイオリン協奏曲』(1989~93)において、閃きと愉悦に満ちたスリリングな音の世界を切り拓いた。

[平野貴俊]

アンサンブル・アンテルコンタンポラン

ピエール・ブーレーズが1976年にフランスで設立した、現代音楽を専門とする演奏団体。現代音楽を楽譜に忠実に、生気に富んだ演奏で聴かせる団体という評価を確立し、その後世界各地に誕生することとなる現代音楽アンサンブルの模範的存在となった。

ブーレーズは、現代音楽のすぐれた演奏を実現するためには、メンバーに固定給を与え、安定した労働環境を確保することが必要だと考えていた。加えて50年代以降、室内楽とオーケストラの中間に位置する編成のアンサンブルを要する作品が増えてきた。こうして、当時のフランスの文化閣外大臣ミシェル・ギーと、ロンドン・シンフォニエッタの共同設立者ニコラス・スノーマンの協力を得て、31名のメンバーからなるアンサンブル・アンテルコンタンポランが設立された。

アルノルト・シェーンベルクの作品から同時代の新作に至るまでの幅広いレパートリーを扱うという方針は、総裁(97年以降名誉総裁)のブーレーズが任命したペーテル・エトヴェシュ(第2代、79~91)、マティアス・ピンチャー(第6代、2013~)ら歴代の音楽監督によって継承されてきた。メンバーには、創設時から約20年間在籍したのち世界的ピアニストとなったピエール゠ロラン・エマール、同じく傑出したチェリストとなったジャン゠ギアン・ケラスもいる。ブーレーズの『レポン』(1981~84)を嚆矢とするIRCAMとの連携、95年にシテ・ド・ラ・ミュジックに拠点をおいてから進展したパリ国立高等音楽院、そして近年ではフィルハーモニー・ド・パリとの協力を通して、研究、教育の面からも現代音楽の振興に貢献している。

ブーレーズの諸作品、とりわけ初演を行った『レポン』『シュル・アンシーズ』(96~98)の演奏を通して、尖鋭なアタック、高度な読譜能力が可能とする精確で明快なアーティキュレーション、艶やかで潤いのある響きといった特質をそなえた演奏様式を周知させ、現代音楽の魅力を伝えた功績は大きい。

[平野貴俊]

アンサンブル・アンテルコンタンポラン 公式サイト

ソプラノ:シェシュティン・アヴェモ

スウェーデン出身。ストックホルム芸術大学卒業。各地の歌劇場や音楽祭に、『ラ・ボエーム』ミミ、『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』ヴィオレッタ、『魔笛』夜の女王などで出演し、『ルル』『ランメルモールのルチア』『オルフェオとエウリディーチェ』『ヘンゼルとグレーテル』『ロメオとジュリエット』『ペレアスとメリザンド』などではタイトル・ロールを演じる。現代オペラへの出演も多く、細川俊夫『二人静』やJ. S. ボーリン『トリステッサ』の世界初演では主役を好演。2016年、スウェーデン国王より文化功労勲章「Litteris et Artibus」を授与された。

能声楽:青木涼子

能の「謡」を現代音楽に融合させた「能声楽」を生み出し、現代の作曲家を惹きつける「21世紀のミューズ」。エトヴェシュや細川俊夫ら、これまでに世界19ヶ国50人を超える作曲家たちと新しい楽曲を発表。2013年ジェラール・モルティエに見出され、テアトロ・レアルでの衝撃的なデビューを皮切りに、現代音楽の本場ヨーロッパを中心に活動。コンセルトヘボウ管、フィレンツェ五月祭管、EICなどトップオーケストラとソリストとして共演するほか、パリ・フェスティバル・ドートンヌ、ムジークフェスト・ベルリンなど世界の代表的な音楽祭にも招聘される。世界からのオファーが絶えない、現代音楽で最も活躍する国際的アーティストのひとり。

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子

ヨーロッパを拠点に国際的な活躍を続ける、日本を代表するメゾ・ソプラノ歌手。主役級としては日本人で初めてバイロイト音楽祭にデビュー、9年連続で出演し絶賛を浴びる。メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、ロイヤル・オペラ・ハウス、バイエルン州立歌劇場、新国立劇場などの各歌劇場および、ティーレマン、アバド、メータ、小澤征爾、エッシェンバッハ、ハイティンクなどの著名指揮者や、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルをはじめとする世界の一流オーケストラと共演を重ねている。芸術選奨文部科学大臣新人賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章を受賞。

テノール:ベンヤミン・ブルンス

出身地であるハノーファの少年合唱団でアルト独唱者として歌手のキャリアをスタート、ハンブルク音楽演劇大学で学ぶ。在学中にブレーメン劇場の所属歌手を務めた後、ケルン歌劇場、ザクセン州立歌劇場、ウィーン国立歌劇場と契約。2020/21シーズンは各地の歌劇場や音楽祭に『魔笛』タミーノ、『さまよえるオランダ人』エリック、『魔弾の射手』マックスなどで出演。ソリストとしても、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ボストン交響楽団などと共演。オラトリオ、歌曲の分野でも活躍しており、日本でもバッハ・コレギウム・ジャパンに度々招聘されている。

スペシャル・サポートメンバー

アンサンブルCMA

※大地の歌に出演

チェリストの堤剛がディレクターを務め、第一線で活躍する音楽家と共に世代を超えて室内楽の真髄を学ぶ「サントリーホール室内楽アカデミー(CMA)」。このアンサンブルは、室内楽アカデミーの2年間の研修期間を終えた修了生たちを中心に特別に編成されている。メンバーはそれぞれ、ソリストやオーケストラ奏者、様々なプロジェクトに参加するなど、国内外で活躍の場を広げている。

ヴァイオリン:小形 響戻る

桐朋女子中学校・高等学校、同大学を卒業。また在学中、N響アカデミーに在籍。別府アルゲリッチ音楽祭、草津夏期国際音楽アカデミーなどに出演。2020年3月までThe Orchestra Japan第2ヴァイオリン首席奏者。在京オーケストラの客演首席などを務めながら、室内楽にも積極的に取り組んでいる。現在、読売日本交響楽団ヴァイオリン奏者。

ヴァイオリン:小川響子戻る

第10回東京音楽コンクール弦楽部門第1位および聴衆賞。葵トリオとして、第67回ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ三重奏曲部門第1位。リヨン国際室内楽コンクールデュオ部門第3位。2021年4月にベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーを修了。国内の主要ホールのほか、ベルリン、ミュンヘン、バイロイト、ケルン、バーデンバーデン、ツェルマット音楽祭などに、室内楽奏者やコンサートマスターとして出演。ミュンヘン音楽演劇大学在学中。

ヴァイオリン:木ノ村茉衣戻る

第67回全日本学生音楽コンクール高校生の部大阪大会第1位。第36回霧島国際音楽祭賞受賞。第17回千葉市芸術文化新人賞受賞。2018年度、19年度小澤国際室内楽アカデミー奥志賀に参加。第24回KOBE国際音楽コンクール最優秀賞および兵庫県知事賞受賞。東京藝術大学卒業時に同声会新人賞を受賞。玉井菜採、植村太郎に師事。現在、東京藝術大学音楽研究科2年在学中。

ヴァイオリン:高宮城 凌戻る

桐朋学園大学音楽学部卒業演奏会に出演。いしかわミュージックアカデミーにてIMA音楽賞受賞。おきでんシュガーホール新人演奏会オーディションにてグランプリ受賞。東京音楽コンクール入選。これまでに、マルメ交響楽団、琉球交響楽団、群馬交響楽団と共演。これまでに屋比久潤、原田幸一郎、神谷美千子に師事。サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ヴァイオリン奏者。

ヴァイオリン:戸澤采紀戻る

第85回日本音楽コンクール最年少優勝、ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール第2位。これまでに、ローザンヌ室内管弦楽団、読売日本交響楽団など国内外のオーケストラと共演。玉井菜採、ジェラール・プーレに師事。現在、東京藝術大学在学中。使用楽器は、文京楽器の協力によりBeare’s International Violin Society より貸与されたMatteo Goffriller。

ヴァイオリン:戸原 直戻る

2016年バンフ国際弦楽四重奏コンクール(BISQC)にてCareer Development Awardsを受賞。藝大フィルハーモニア管弦楽団コンサートマスター。紀尾井ホール室内管弦楽団、アンサンブル of トウキョウ、Ensemble FOVEのメンバー。Lemoned Quartetヴィオラ奏者。19年秋よりドイツのリューベク音楽大学に留学。ダニエル・ゼペックに師事。学内にてダーヴィド・ゲリンガスらと共演。

ヴァイオリン:東 亮汰戻る

第88回日本音楽コンクール第1位など、多数のコンクールで入賞。NHK-FM「リサイタル・パッシオ」などに出演。東響、東京フィル、神奈川フィルなどと共演。これまでに、森川ちひろに師事。現在、辰巳明子に師事。特待生として桐朋学園大学音楽学部4年在学中。ローム ミュージック ファンデーション2021年度奨学生。使用楽器は一般財団法人ITOHより貸与されている1716年製A. Stradivarius。

ヴァイオリン:宮川奈々戻る

桐朋女子高等学校音楽科を経て、同大学を卒業。桐朋オーケストラ・アカデミーを修了。第63回全日本学生音楽コンクール全国大会高校の部第3位。第80・81回日本音楽コンクール入選。平成25年度公益財団法人青山財団奨学金事業対象者。沼尻竜典指揮・桐朋学園大学オーケストラと共演。これまでに松本尚三、板垣登喜雄、篠崎永育、堀正文、景山誠治に師事。現在、NHK交響楽団第1ヴァイオリン奏者。

ヴァイオリン:山縣郁音戻る

桐朋女子高等学校音楽科を経て、同大学を卒業。Talent Music Master Courses(イタリア)にてディプロマを取得。第1回横浜国際音楽コンクール第3位、ザルツブルク゠モーツァルト国際室内楽コンクールで第3位受賞。近年は東京都交響楽団や読売日本交響楽団などにエキストラとして参加、室内楽による演奏会や企業ワークショップ、新曲の初演なども行う。アルネア・カルテット、京トリオメンバー。

ヴィオラ:古賀郁音戻る

東京藝術大学音楽学部卒業後、同大学院修士課程をヴァイオリン専攻で修了。2017年よりドイツ・ベルリンに渡り、ハンス・アイスラー音楽学校にてヴァルター・クシュナーのもとヴィオラ科修士課程を修了。2018年〜20年ベルリン・ドイツ交響楽団研修生。オーケストラでの活動のほか、弦楽四重奏をはじめとする多くの室内楽の経験を積む。

ヴィオラ:森野 開戻る

5歳よりヴァイオリンを始め、桐朋学園大学在学中にヴィオラに転向し卒業。成績優秀者による卒業演奏会、室内楽演奏会などに選抜される。霧島国際音楽祭、ヴィオラスペースマスタークラス、ウィーン・ムジークセミナー、小野文化財団ヴィオラ塾、プロジェクトQ・第18章、丹波篠山ヴィオラマスタークラスなどに参加、研鑽を積む。日本演奏連盟主催のもと東京文化会館でリサイタルを開催。ヴィオラを磯村和英、大島亮に師事。

ヴィオラ:山本 周戻る

3歳よりヴァイオリンを、18歳よりヴィオラを始める。桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)、桐朋学園大学を経て同研究科修了。室内楽、オーケストラ奏者として国際音楽祭NIPPON、武生国際音楽祭、東京・春・音楽祭や宮崎国際音楽祭などの国内の主要な音楽祭に出演。また首席奏者として、日本センチュリー交響楽団などに客演。これまでにヴァイオリンを森川ちひろ、徳永二男に、ヴィオラを佐々木亮に師事。

チェロ:上村文乃戻る

日本音楽コンクール第2位、全日本学生音楽コンクール第1位をはじめ、国内外のコンクールに多数入賞。明治安田クオリティオブライフ文化財団、文化庁、ローム ミュージック ファンデーションより海外留学支援を受ける。現代曲ではカイヤ・サーリアホのもと2017年フィンランドにて行われたクリエイティブ・ダイアログに参加。様々な新曲演奏を行っている。これまでに毛利伯郎、堤剛、アルト・ノラス、イヴァン・モニゲッティ、ソル・ガベッタに、古楽科にてクリストフ・コワンに師事。

チェロ:矢部優典戻る

8歳よりチェロを始め毛利伯郎に師事。第86回日本音楽コンクールチェロ部門第2位およびE. ナカミチ賞受賞。第69回全日本学生音楽コンクール高校の部第1位および日本放送協会賞受賞。第9回ミュージック・アカデミー inみやざき優秀賞。2016いしかわミュージックアカデミー音楽賞。桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コース修了。

コントラバス:瀬 泰幸戻る

※大地の歌に出演

京都市立芸術大学音楽学部卒業。独ヴュルツブルク音楽大学大学院修了。同大学院在学中よりベルリン州立歌劇場管弦楽団のオーケストラ・アカデミー生として演奏し奨学金を得る。2014年より読売日本交響楽団コントラバス奏者。近年は国内のオーケストラの客演首席、室内オーケストラの分野、また邦人作曲家のコントラバス作品の初演などでも演奏の機会が増えている。

ファゴット:中川日出鷹戻る

※大地の歌に出演

京都市立芸術大学卒業。パリ地方音楽院、フランクフルト音楽舞台芸術大学大学院およびインターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー(ドイツ)修了。2014年度、京都市芸術文化特別奨励賞受賞。明治安田クオリティオブライフ文化財団海外音楽研修生。Ensemble FOVE、Orchestra of the Lucerne Festival Alumniメンバー、東京音楽大学非常勤講師。

トロンボーン:村田厚生戻る

※大地の歌に出演

桐朋学園大学音楽学部卒業。ドイツ学術交流会(DAAD)給費留学生としてベルリン芸術大学卒業。現代音楽のスペシャリストとして様々な前衛作品を初演。内外の主要な現代音楽祭に出演している。「トロンボーンの新事実」、ルネサンス・フルートとサクバットを使用した「過去にある現在」などシリーズリサイタルのほか、2017年にはドイツ、スイス5都市で、ユニット「コンテンポラリー・デュオ 村田厚生&中村和枝」のリサイタルを行った。古今東西の歌曲を収録したソロ・アルバム『Just Sing』、自作を含む前衛作品を収録した『Slide Paranoia』をリリース。桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。

www.sonata.jp

チューバ:橋本晋哉戻る

※二人静に出演

チューバ奏者、セルパン奏者。サントリー芸術財団サマーフェスティバル2008、2010および2016、コンポージアム 2009、HIROSHIMA HAPPY NEW EAR 19で協奏曲のソリストを務めるほか、「秋吉台の夏」現代音楽セミナー、東京オペラシティ リサイタルシリーズ「B→C」、NHK-FM「名曲リサイタル」「リサイタル・ノヴァ」にソリストとして出演。洗足学園音楽大学非常勤講師。現代音楽ユニット「東京現音計画」(第13回佐治敬三賞受賞)、声楽家松平敬とのデュオ「低音デュオ」で活動。

フルート:エマニュエル・オフェール

13歳からパトリック・ガロワとイダ・リベラに師事。パリ国立高等音楽院でミシェル・デボストに学び、フルート科で一等賞を獲得。20歳でEICに入団。発展途上のレパートリーや、新技術に基づいた表現に強い関心を抱き、フィリップ・マヌリによるMIDIフルートとMIDIピアノのための作品や、ピエール・ブーレーズ作曲『主のない槌(ル・マルトー・サン・メートル)』などの最新技術を用いた新曲に参加。バロックから現代、ジャズや即興まで幅広いレパートリーの探求に注力し、モントルイユスーボワ音楽院ほか、ルツェルンやヴァルディゼールなど多数のアカデミーで指導。

フルート:ソフィー・シェリエ

パリ国立高等音楽院でフルートをアラン・マリオンに、室内楽をクリスチャン・ラルデに師事し、首席で卒業。1979年、EICに入団。ピエール・ブーレーズ作曲『メモリアル』、エリオット・カーター作曲『エスプリ・リュド/エスプリ・ドゥ』など数々の初演に参加。ルチアーノ・ベリオ作曲『セクエンツァI』、ブーレーズ作曲『フルートとピアノのためのソナチネ』など、録音も多数。これまでに、ハレ管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニックなどと共演。98年、パリ国立高等音楽院教授に就任。

クラリネット:アラン・ビヤール

リヨン国立高等音楽院卒業。1995年、EICに入団。ソリストとして国際的に評価され、ピエール・ブーレーズ、ジェルジュ・リゲティ、カールハインツ・シュトックハウゼン、フィリップ・マヌリ、ブルーノ・マントヴァーニなどの現代作曲家とコラボレーションを行う。定期的に国内外の著名な管弦楽団に客演し、リザ・リムやマントヴァーニ、ラファエル・センドなどの多数の初演や録音に参加。木管五重奏団NocturneやトリオModulationsの一員としても幅広い活動を展開中。また、新たな楽器技術の研究開発にも積極的で、度々IRCAMやセルマー・パリ社と協働している。

クラリネット:マーティン・アダメク

スロヴァキア生まれ。ブラチスラヴァ音楽院を卒業後、ヤナーチェク音楽アカデミーで学びながら、グスタフ・マーラー・ユーゲント管やEUユース管で経験を積む。2013年カルリーノ国際クラリネットコンクールおよびアネモス国際音楽コンクールで第1位、翌年レオシュ・ヤナーチェク国際コンクールで第1位を受賞。世界各地でソリストとして活動しつつ、スロヴァキアではクラスター・アンサンブルやVENIアンサンブルなど、現代音楽を得意とする団体と定期的に協働。ブルーノ・マントヴァーニ、エリオット・シャープ、アイリス・セギーらの作品を世界初演。2016年、EICに入団。

ハープ:ヴァレリア・カフェルニコフ

キエフ生まれ。幼少期の大半をサンクトペテルブルクで過ごし、ピアノとハープを習う。1990年代初頭にフランス、ボルドーに家族で居を移す。パリ国立高等音楽院を首席で卒業後、リヨン国立高等音楽院に進み、クルタークやブーレーズのマスタークラスを受講。古楽の演奏解釈およびピリオド楽器にも強い関心を持ち、2003年にグザヴィエ・ロトが創設したレ・シエクルで長くソリストを務めるほか、パリ室内管やシャンゼリゼ管とも共演。アウレリオ・エドラー゠コペスやエルネスト・パピエへの新作委嘱など、現代音楽の実験的創作活動にも携わる。19年、EICに入団。

ヴァイオリン:ディエゴ・トージ

パリ国立高等音楽院でジャン゠ジャック・カントロフとジャン・ルネールに師事し、満場一致で一等賞を獲得。ブルーミントン(米)ではミリアム・フリードのもとで研鑽を積む。2006年、EICに入団。パガニーニやロドリーゴ、ヴァレンティーノ・ブッキなどの権威ある国際コンクールで入賞。レパートリーは幅広く、これまでにソリストとして世界中の主要なホールで演奏。ラヴェル、シェルシ、ベリオ、ブーレーズの作品や、サラサーテの全作品を収録した録音で、多数の主要な賞を受賞。10年よりトータヴェル音楽祭の芸術監督を務める。

ヴィオラ:ジョン・スタルフ

南カリフォルニア大学でドナルド・マキネスに、ニューイングランド音楽院修士課程でキム・カシュカシャンとガース・ノックスに師事。これまでに、マールボロ音楽祭、ルツェルン音楽祭アカデミー、ヴェルビエ祝祭管弦楽団などに参加。2007年、指揮者ヴィンバイ・カジボニとWHAT’S NEXT? ENSEMBLEを設立。12〜14年、アンサンブルACJWに所属。定期的にカーネギーホールで演奏し、クラングフォルム・ウィーン、セントポール室内管弦楽団、タレア・アンサンブルなどの主要楽団と共演。15年、EICに入団。現在、VIVO音楽祭の共同芸術監督を務める。

ヴィオラ:オディール・オーボワン

パリ国立高等音楽院を首席卒業後、フランス外務省と文化省から奨学金を受けイェール大学で学ぶ。その後、イタリアでブルーノ・ジュランナに師事し、ヴァレンティーノ・ブッキ国際コンクール入賞。1995年、EICに入団。これまでに、ジェルジュ・クルターク、ピエール・ブーレーズ、イヴァン・フェデーレ、ブルーノ・マントヴァーニなどの作曲家と協働。室内楽への関心が高く、マルコ・ストロッパ、フィリップ・シェーラーなどの作品を初演。ブーレーズやアンドレ・ジョリヴェの作品など、録音も多数。国内外のアカデミーで後進の指導にもあたる。

チェロ:エリック=マリア・クテュリエ

パリ国立高等音楽院で、チェロをロラン・ピドゥに、室内楽をクリスチャン・イヴァルディに師事し、首席で卒業。パリ管弦楽団、ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団首席奏者を経て、2002年、EICに入団。これまでにショルティ、サヴァリッシュ、ジュリーニ、マゼール、ブーレーズなどの著名な指揮者と共演。室内楽奏者としてはトリオ・タルヴェグのメンバーとして、マウリツィオ・ポリーニ、ジャン゠クロード・ペヌティエ、シャニ・ディリュカなどのピアニストと共演。また、即興演奏の分野にも力を注いでおり、録音も多数。

ピアノ:セバスチャン・ヴィシャール

ピアノおよびフォルテピアノをパリ国立高等音楽院で学ぶ。これまでに、ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールやアムステルダムのコンセルトヘボウをはじめ、ベルリン芸術祭やケルン・フィルハーモニー、東京の杉並公会堂、パリのシテ・ド・ラ・ミュジックなどでソロ・リサイタルを行う。2006年、EICに入団。国際的に演奏活動を展開する傍ら、リヨン国立高等音楽院にて教鞭を取る。

ピアノ:永野英樹

東京藝術大学を経て、パリ国立高等音楽院でピアノをジャン゠クロード・ペヌティエに、歌曲伴奏をアンヌ・グラポットに師事。両科に加え室内楽科も首席で卒業。1994年には、第1回オルレアン国際20世紀ピアノ音楽コンクールにて入賞を果たす。96年、EICに入団。98年、村松賞および出光音楽賞受賞。アンタイル、ブーレーズ、メシアン、ミュライユ、デュティユー、プロコフィエフ、ラヴェルのピアノ作品など、録音も多数。シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団とソリストとして共演するなど、主にフランスと日本で幅広く活動中。

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