I.日本のミネラルウォーター市場について
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1970年代前半に業務用市場で販売されて以来、“おいしい水”へのニーズ、健康・美容効果への注目度の高まりなどから、ミネラルウォーター市場は伸長を続け、人々の生活に浸透しています。東日本大震災後に拡大した日本の市場は2013年にさらに伸長し、これまでで最大の規模となりました。 |
II.消費者利用動向調査
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1991年から当社で実施している消費者対象の飲用動向調査の2014年版です。ミネラルウォーターおよび近年浸透してきたスパークリングウォーターやフレーバーウォーターの利用動向の現状と今後をレポートします。 |
I.日本のミネラルウォーター市場について
日本のミネラルウォーターの歴史は、1970年代前半、業務用市場で販売された瓶入りのミネラルウォーターにまでさかのぼります。その後、さまざまな時代背景を反映しながら、ミネラルウォーターは着実に日本人の生活の中に浸透してきています。
●1980年代後半~家庭用市場への広がり
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自然・健康ブームに加えて、海外旅行の増加によってミネラルウォーターに接する機会が増えたこと、さらに水道水の質への不安が問題になるなどの要因から、ミネラルウォーターは、それまでの業務用市場から家庭用市場へも広がりはじめました。 |
●1990年代~家庭用市場で大きく伸長
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1990年代に入って、マンションの貯水タンクの汚れや水道水の問題が報道されるようになりました。これを受けて、家庭用のミネラルウォーターの消費量は、国産が水道水の代替品として、輸入も1993年のブームによって、ともに大幅に拡大しました。
1994年の猛暑・水不足による需要増や災害時の備蓄への意識の高まりにより、ミネラルウォーターは、家庭における日常品としての地位を確実なものにしました。
しかしながら、1995年秋の異物混入事件により輸入ミネラルウォーターが大幅に減少した影響を受け、1996年の家庭用ミネラルウォーター市場は90年代で初めて前年を下回る結果となりました。一方でこの事件によって、ミネラルウォーターの安全性、品質に対する信頼がミネラルウォーター購入時のポイントとして消費者に大きく意識されるようになります。
1996年4月に国産小容量ペットボトル製品の販売が解禁。これにより、ミネラルウォーターの飲用オケージョンが広がり、国産ミネラルウォーターの消費量は大幅に増加しました。
また、いわゆる「2000年問題」により、停電対策として家庭でミネラルウォーターを備蓄した人が多かったため、1999年のミネラルウォーター市場は前年比3割増と大幅に伸長しました。 |
●2000年~健康志向の高まりなどで拡大。2013年は過去最大規模に
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2000年から2006年までは健康志向の高まりなどにより、拡大を続けていましたが、2007年からは消費者の生活防衛意識の高まりなどを受けて、ほぼ横ばいの傾向でした。2011年は、東日本大震災後の備蓄用の需要が急増するなどの影響もあり3,172千キロリットル(前年比126.0%)と大きく伸長し、20年前の11倍、10年前の約2.5倍の規模にまで拡大しました。(図1:日本ミネラルウォーター協会調べ)
2012年は国産ミネラルウォーターの生産量が増加したものの、輸入ミネラルウォーターの量は大幅に減りましたが、2013年は国産ミネラルウォーター(2,865千キロリットル、前年比102.8%)、輸入ミネラルウォーター(390千キロリットル、前年比110.4%)ともに前年を上回り、過去最大の3,255千キロリットルとなりました。 |
●日本の国民1人あたりの年間消費量推移
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日本の国民1人あたりのミネラルウォーター年間消費量は、2007年からは19.7リットル前後で安定的に推移していましたが、2011年は、東日本大震災の影響もあり、24.8リットルと大きく伸長し、2013年は25.6リットルと、これまでで最も多くなっています。(図2:日本ミネラルウォーター協会調べ) |
II.20~69歳の男女500人に聞く
〈調査の概要〉
ミネラルウォーターは、今や日常生活には欠かせないものとなっています。
当社は、ミネラルウォーターがどのように飲用されているのか、飲用頻度、飲用機会や購入実態などを明らかにすることを目的に、1991年より毎年市場動向調査を実施しています。なお、2003年より、調査対象を「家庭でミネラルウォーターを飲む人」に限定せず、一般消費者を対象に、ミネラルウォーターをはじめとした飲用水全般に対する意識と利用実態を聞いています。また、2010年より調査方法を直接面接法からインターネット調査に変更しています。
《飲用水市場動向調査》
1.調査対象
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首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)および関西圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)に居住する20~69歳の男女個人で、昨年の5月以降に以下の6種類の有料の水、および水道水のいずれかを飲用水として利用した人を対象としました。 |
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a)ミネラルウォーター(ペットボトル、缶、ビンに入った非発泡かつ甘くないもの)
b)炭酸水またはスパークリングウォーター
c)フレーバーウォーター
d)宅配サービスのミネラルウォーター(ウォーターサーバーを使用し自宅で利用するもの)
e)スーパーの店頭などで、セルフサービスで詰める水
f)自宅の浄水器(水道直結式のアルカリイオン整水器や浄水器)の水 |
2.調査対象者数
3.調査方法
4.調査期間
調査結果の概要は次のとおりです。
〈調査結果〉
(1)この1年間に利用した飲用水の利用率
「ミネラルウォーター」の利用率が88.0%とトップ。
「スパークリングウォーター」の利用率は半数を超え、「フレーバーウォーター」
の利用率も4割を超えるなど、日常生活のなかにいろいろな水が広がっている。 |
「ミネラルウォーター」(ペットボトル、缶、ビンに入った非発泡かつ甘くないもの)、「炭酸水またはスパークリングウォーター」、「フレーバーウォーター」、「宅配サービスのミネラルウォーター」、「スーパーの店頭などで、セルフサービスで詰める水」、「自宅の浄水器の水」の6種類の水について、この1年間の利用率(飲んだ・利用した割合)を調べました。その結果、「ミネラルウォーター」の利用率が88.0%と最も高くなっています。また、「炭酸水またはスパークリングウォーター」の利用率は54.6%と半数を超え、「フレーバーウォーター」は41.8%と、約4割の人が利用しています(図3)。
(2)「ミネラルウォーター」を飲む・利用する時に気にすること
「ミネラルウォーター」を飲む・利用する時に気にすることは、
「価格」「おいしさ」「安全性」など。
昨年に比べ「おいしさ」を気にする人の割合が約8ポイント増加。 |
次に、「ミネラルウォーター」の飲用・利用時に気にすることを聞いてみました。
「価格」(63.4%)を気にしている人が最も多く、そのほか、「おいしさ」(47.9%)、「安全性」(41.5%)、「品質」(39.6%)などが上位にあがっています。
2013年の結果と比べると、「品質」を気にする人が約3ポイント、「おいしさ」が約8ポイント上昇しています。安全性や品質はもちろんのこと、ミネラルウォーターそのものの「味」(おいしさ)を重視する傾向が強まっているようです(図4)。
(3)「ミネラルウォーター」の採水地として思い浮かぶ場所
ミネラルウォーターの採水地として思い浮かぶ場所は「南アルプス」。 |
「ミネラルウォーター」の飲用・利用者に、採水地として思い浮かぶ場所を聞いてみたところ、2014年も「南アルプス」(山梨県)が第1位となりました。今年も9割以上の方が「ミネラルウォーター」の採水地として「南アルプス」を思い浮かべています(図5)。
(4)「宅配サービス(ウォーターサーバー)のミネラルウォーター」の利用理由
「宅配サービスのミネラルウォーター」の利用理由は利便性が上位に。 |
現在、「宅配サービスのミネラルウォーター」を利用している人に、利用理由を聞いてみました。「配達してくれるから」、「ウォーターサーバー(冷水やお湯が出る)が便利だから」の2つが上位理由となりました。いずれも宅配サービスやウォーターサーバーの利便性が利用理由となっており、昨年と比べても利便性を求める傾向が強くなっているようです。続いて、「おいしさ」、「安心だから」が続く結果となりました(図6)。
(5)「宅配サービス(ウォーターサーバー)のミネラルウォーター」の用途
「宅配サービスのミネラルウォーター」は、お茶や料理、
そのまま飲む「湯」としてなど、生活のさまざまなシーンで活用されている。 |
さらに、宅配サービスのミネラルウォーターの利用方法について聞いてみました。「そのまま飲む水」以外に、「日本茶・コーヒー・紅茶の水」、「薬を飲む時の水」、「みそ汁を作る水」としてなど、宅配サービスのミネラルウォーターが生活のさまざまなシーンで活用されていることがわかりました(図7)。
(6)「スパークリングウォーター」の利用率と飲用方法
「スパークリングウォーター」の利用率は54.6%と、昨年に比べほぼ倍増。
お酒だけでなく、果汁や酢などを割って飲むアレンジ飲みが広がっている。 |
この1年間に、「スパークリングウォーター」を飲んだ・利用した人の利用率は54.6%と半数以上の方が利用しています。
2013年と比べると、「飲んだ/利用した」は28.8%から54.6%とほぼ倍増し、「飲んだことはない 利用したことはない/知らない」は42.4%から19.2%に大きく減少しています(図8)。
「スパークリングウォーター」の飲み方について聞いてみたところ、「そのまま飲んでいる」が83.1%と最も多くなっていますが、お酒やノンアルコール飲料などを「割って飲んでいる」人も過半数(52.6%)を超えています(図9)。
さらに、「割って飲んでいる」人(112人)に、何を割って飲んでいるかを聞いてみたところ、「お酒を割って飲んでいる」(54.5%)が最も多くなっていますが、「果汁飲料などノンアルコール飲料を割って飲んでいる」(41.1%)、「黒酢や果実酢を割って飲んでいる」(21.4%)などとなっており、さまざまな飲み方でスパークリングウォーターを楽しんでいることがわかりました。
スパークリングウォーターは、そのまま飲む「直飲み」だけでなく、スパークリングウォーターを使った「アレンジ飲み」が広がっており、それがスパークリングウォーター市場の裾野を広げているようです(図10)。
(7)「スパークリングウォーター」を飲む・利用する時に気にすること
「スパークリングウォーター」を飲む・利用するときに気にすることは、
「炭酸の強さ」、「価格」、「味」、「水そのもののおいしさ」が上位に。 |
この1年に「スパークリングウォーター」を飲んだ・利用した人にスパークリングウォーターを選ぶ理由を聞いてみたところ、「炭酸の強さ」(44.6%)が最も多く、そのほか、「価格が安いこと」(35.2%)、「味」(33.3%)、「水そのもののおいしさ」(31.5%)、「天然水を使っていること」(30.5%)が上位を占めました。
「炭酸の強さ」による爽快な刺激だけでなく、「味」や「水そのもののおいしさ」、「天然水を使っていること」など、ベースとなる「水」を気にする方が多いようです(図11)。
(8)「フレーバーウォーター」の利用率と飲用理由
「フレーバーウォーター」の利用率は、世代が若いほど高く、
20代は57.3%と過半数を上回る。 |
この1年間に、「フレーバーウォーター」を飲んだ・利用した人の利用率は41.8%となっています。年代別での利用率をみると、年齢が若くなるほど利用率が高く、20代の利用率は57.3%と過半数を上回っており、若い世代によく飲まれていることが明らかになりました(図12)。
また、「フレーバーウォーター」を利用している人にその理由を聞いてみました。「おいしいから」と回答した人が最も多く(44.0%)、以下、「口がさっぱりするから」(40.7%)、「少し味のついたものが飲みたいから」(34.4%)、「飲みやすいから」(33.0%)となっています。フレーバーウォーターは、「おいしさ」が評価されて飲まれているようです(図13)。
(9)「フレーバーウォーター」を飲む・利用する時に気にすること
フレーバーウォーターを飲む・利用するときに気にすることは、
「フレーバーの味」だけでなく、「水そのもののおいしさ」。 |
「フレーバーウォーター」を飲む・利用する時に気にすることを聞いてみたところ、「フレーバーの味」(68.9%)が最も多く、そのほか、「水そのもののおいしさ/おいしさ」(31.1%)、「価格が安いこと」(26.8%)、「天然水を使っていること」(24.9%)が上位を占めました。
フレーバーウォーターを飲むときには、フレーバーの味とともに、水そのもののおいしさも求められているようです(図14)。
(10)日常生活での飲用水の飲み分け
生活のさまざまなシーンで飲用水の飲み分けが進む
ミネラルウォーターは生活習慣として、スパークリングウォーターはリラックス
タイムに、フレーバーウォーターはオン・オフ問わずに飲用されている。 |
2013年から2014年にかけてスパークリングウォーターやフレーバーウォーターの種類が広がり、ミネラルウォーターだけでなく、スパークリングウォーターやフレーバーウォーターを飲む人が多くなっています。
これらの水はどのようなシーンで飲まれているのでしょうか?
ミネラルウォーターは「朝起きてすぐ」(37.7%)や「風呂上がり」(37.0%)に飲む方が多くなっています。スパークリングウォーターは「くつろいでいる時」(35.2%)が最も多く、「風呂上がり」(26.3%)、「お酒を飲んでいる時」(23.5%)などが上位にあがっています。フレーバーウォーターは「仕事中/授業中」(28.2%)、「くつろいでいる時」(28.2%)、「レジャーの時」(25.8%)が多くなっているようです。
ミネラルウォーターは日常生活のなかで習慣的に飲まれ、スパークリングウォーターはリラックスタイムに、フレーバーウォーターはオン・オフ問わずに飲まれているようです(図15)。
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