地面やビルからの照り返しが強い場所では、体温が上昇し、熱中症を発症しやすくなります※。特に、身長が低い子どもは、地面からの照り返しの影響を受けやすいといわれています。本実験では、夏場の晴れた環境下で身長差によってどの程度気温や表面温度が異なるかを検証しました。
※参考:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」
- 日時
- 2023年5月17日(水)13:45〜14:45
- 場所
- 都内ビル屋上
- 天気
- 高気圧に覆われ快晴、真夏日を記録
(天気:快晴、気象庁5月17日 14:00発表、東京都心の気温:31.4℃)
- 概要
- ウェザーマップ社立ち合い・監修の下、大人(高さ170cm)と子ども(高さ120cm)のマネキン※を横並びにし、屋外にて地面の照り返しによる気温差と表面温度差を、黒球式熱中症指数計と赤外線サーモグラフィーにて計測。指数計は、それぞれ胸の高さ(大人マネキン:150cm、子どもマネキン:80cm)に設置。
※服装:綿Tシャツ、綿パンツ(両マネキン共通)
(黒球式熱中症指数計にて計測)
気温 | 気温差 | |
---|---|---|
150cm 地点 | 31.1℃ | 7.1℃ |
80cm 地点 | 38.2℃ |
大人の胸の高さ(150cm)では気温31.1℃に対し、子どもの胸の高さ(80cm)では気温38.2℃となり、その気温差は7℃程度となりました。
(赤外線サーモグラフィーにて計測)
サーモグラフィーによる表面温度計測では、大人は首から腰のあたりまで青〜黄色のグラデーションで、下半身から赤く表示されるのに対し、子どもの高さでは首から下はすべて赤く表示されました。
- 考察
- 地面の照り返しの影響の差などにより、子どもの身長の高さで計測した気温が大人と比較して+7℃程度になることを確認しました。さらに、サーモグラフィーの結果から、子どもの暑熱環境が可視化でき、これにより、大人よりも背が低い子どもにおいては、熱中症の危険度が高まることが推測されます。
夏の平均気温の上昇に比例して、熱中症にかかるお子様が増えています。外で遊ぶときはもちろん、体育館や家の中でもかかる場合があります。水分補給をはじめとする予防法を実行することを常に心がけてください。万一お子様が頭が痛い、めまいがする、吐き気がするなどの自覚症状を訴えたり、頭やからだが熱い、手足が痙攣するなどの症状が現れた場合は、即座に医師の診断を受け、適切な処置をすることが大切です。
参考文献:早川光著「ミネラルウォーターガイドブック・最新版」新潮社
水と健康医学研究会監修「水と健康ハンドブック」日本医事新報社
監修:羽鳥 裕(はとり・ゆたか)神奈川県医師会理事 神奈川県内科医学会副会長
神奈川県体育協会スポーツ医学委員会委員
+7℃は体温を超えうる危険な温度!
熱中症リスクが高い環境に。
高さが低くなれば、地面の照り返しの影響で気温が高くなることは認識していました。しかし70cmの高低差で7℃も差があった実験結果にはびっくりしました。子どもを想定した高さ80cmの気温は38℃以上。
もともと子どもは、体温調節機能が十分発達していないため、うまく汗をかけず、体内にこもった熱を効率的に外に逃すことができません。また、全身に占める水分の割合が大人よりも高く、体重に対する体表面積も大人より広いため、気温の影響を受けやすいのです。子どもにとって、体温を超えるような気温は、極めて熱中症リスクが高い環境だといえるでしょう。そして照り返しは目に見えないため意識しづらい難しさがあり、今回の結果に怖さを感じました。
実際、私には幼い子どもがいますが、予想気温24℃の日に自分の感覚で長袖を着させたところ、子どもが暑そうにしていた経験があり、大人と子どもの熱に対する感度の差を実感しました。
特に幼い子どもは、大人より地面に近く熱中症リスクが高い状況下にありながら、自分の状態をうまく説明することができません。周囲の大人は「こども気温」を意識し、大人の感覚よりもさらにシビアに子どもの熱中症対策をすることをお勧めします。