Forum:Issue 014 The Meiji Ishin and Kaikoku

Forum Report

2018年10月26日、英国オックスフォード大学のセント・アントニーズ・カレッジにおいて、オックスフォード大学日産日本研究所とサントリー財団の共催により「グローバルな文脈での日本」第14回研究会が開催された。本研究会は、近代日本の始まりと位置づけられる「明治維新と日本の『開国』」をテーマとして取り上げ、明治維新の意義・価値や日本における近代の受容について改めて問い直した。
初めに、東京大学教授の苅部直氏は 「近代日本の『長い革命』─19世日本における『文明』の追求について再考する」と題する報告の中で、「維新」の英訳として使われる“Revolution”と“Restoration”の違いに着目し、福澤諭吉や竹越與三郎の議論を参照しながら、“Revolution”と表現し得る一連の大改革が進められた社会経済的な背景について解説した。また、19世紀の日本人は、自国文化と西洋文化に「共通性」を見出したからこそ、西洋文化を単なる「技術」としてだけではなく一つの「文明」として受容した、との見解を示した。最後に苅部氏は、当時の日本人が示したように、異文化の中に「共通性」を発見し、それを手がかりに対話を希求する姿勢が、今日のグローバル時代において益々重要になっていることを指摘した。
続いて、オックスフォード大学准教授のショウ・コニシ氏が「徳の思想劇:内戦の敗者と犯罪者をめぐるトランスナショナル・ヒストリー」をテーマに報告し、近代日本のトランスナショナル・ヒストリーに関する昨今の議論を紹介した後、日本史における革命の「敗者」と西洋近代史の「敗者」の思想史を結びつけ、トランスナショナルな視点から新たな思想史を提示した。その中で、コニシ氏は江戸時代に大坂商人によって設立・運営されていた学問所「懐徳堂」と正教会の関係に焦点を当て、政治的に利用されてきた「内戦」という言葉の下に消し去られ、従来の国家中心の歴史解釈では浮かび上がることのない人々が、トランスナショナルな形でどのような役割を果たしていたのか、独自の論を展開した。