戦前・戦後に作曲家達が映画のために書いた渾身の音楽をお楽しみいただきます。当時の貴重な映像により日本の風景・社会等、時代背景への理解が深まります。トークつき。
■日時 |
2017年8月26日(土) 昼の部 14:00より 夜の部 18:00より ※完全入れ替え制。各部6本上映。(作品が一部異なります。) |
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■会場 |
Tokyo Concerts Lab. |
■トーク | 片山杜秀 |
■上映作品 |
戦前篇
戦後篇
※上映順は未定です。予めご了承ください。 |
■入場料 | 各部 500円 事前予約制(定員:各部80名) ※事前にお電話にてご予約ください。 【ご予約】東京コンサーツ TEL 03-3200-9755 |
■アクセス |
*東京メトロ東西線「早稲田駅」下車 徒歩6分(2番・3b出口) |
プレイベントはここを聴け!片山氏おすすめポイント!
日本の作曲家の音楽を戦前から戦後まで幅広く聴く。そのための有力な媒体として記録映画と呼ばれる分野があります。つまりは映画音楽ですが、劇映画と違うのは、記録映画の場合、台詞やときにはナレーションすらないものがあり、サウンドトラックにおける音楽の比重は劇映画よりも一般に高い傾向があるのです。音楽が終始つきっぱなしという映画さえ、少なくありません。そういう機会を与えられた作曲家が「本気」で仕事をしますと、たいへん聴き応えのある、しかも多くの劇映画のように音楽が寸断されない聴取体験が生まれるわけでございます。今回はそういうものを多く選んで、サントリーホールでの本企画と連動させられればと考えました。
前半は1937年の作品が並びます。この頃は日本が「観光国家」を志向した時代でもあり、海外向けに日本を紹介する映画がたくさん作られました。今回上演する4本は全部その種の作品になります。山田耕筰と松平頼則の仕事もとても丁寧で面白いものですが、特筆に値するのは諸井三郎のものです。これは東京の一日を一種の「映像詩」として構成した作品で、ルットマンの監督した「ベルリン・大都会交響楽」をモデルとしているといってよいと思います。とにかくこの映画にナレーションは無く、サウンドトラックは音楽のみでできています。諸井は映像の推移に合わせて大管弦楽のために緻密に作曲していて、つまりは「東京交響曲」と呼べるような音楽を書いているのですけれど、その演奏はというと斎藤秀雄指揮新交響楽団なのです。現在のNHK交響楽団です。作曲の面だけでなく、演奏の記録としても重要です。というわけで、この映画は映画史だけでなく、日本近代音楽史にとって大きな意味をもつでしょう。諸井三郎のシンフォニーが戦前の日本の指揮者とオーケストラによってどんなふうに演奏されていたのか。それを確かめるドキュメントは恐らくこの映画しかないのですから。諸井の演奏会用オーケストラ作品は戦前・戦中にはひとつもレコード録音されていないのですから。
後半は戦後の作品を並べております。「霜の花」は中谷宇吉郎の監修で作られた雪の結晶についての科学映画で、伊福部昭の音楽はほとんどピアノ独奏で貫かれており、その素材は9月10日の演奏曲目である「ピアノと管絃楽のための協奏風交響曲」と深い関連があります。コンサートの「予習」にもなります!
「この雪の下に」は芥川也寸志の豊かな旋律に彩られつつ東北の戦後の暮らしを記録する映画で、やはり芥川の作曲した五所平之助監督の劇映画「大阪の宿」の音楽と関係する点でも興味深いものです。
「黎明」は福島第一原子力発電所の建設記録映画であり、間宮芳生の音楽はソヴィエトの社会主義リアリズムのスタイル、プロコフィエフの響きを強く意識したものです。ソ連の工業社会化と戦後日本の発展のイメージがかけられているといってよいでしょう。「2011年以後」を生きるわれわれが是非とも改めて見ておくべき作品と思っています。