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七ヶ浜国際村事業協会「仲道郁代音楽アウトリーチ」
- 実施日時
- 2021年1月10日(日)
- 実施場所
- 七ヶ浜国際村ホール
- プログラム
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ドビュッシー: 月の光
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ《月光》より 第3楽章
- 出演
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ピアノ:仲道郁代
主催者からのレポートをお届けします。
今回は、8年前に実施した小学校アウトリーチの記憶を想起させるため、当時の写真や映像を用いたイントロダクションを行い、8年前と同じ曲目を取り入れた(月の光)。
作曲者や仲道氏の思いが込められた音楽に心を寄せることから、当時の心情、そして成人を迎えた今の心情を重ね、見つめるきっかけとなることを目指す。
また、開催後には、8年前当時の活動に関するアンケートを参加者に依頼し、彼らの受け止めを調査するとともに、今後の七ヶ浜町での取り組みに役立てることとした。
開会のアナウンスののち、当時の写真や映像がスクリーンに映されると、参加者から歓声が上がった。ある参加者は、ここで小学校の懐かしい記憶が⼀気に蘇ったそうだ。
この写真について、仲道氏は「写真を改めて見返すと、当時は気づいていなかったが、案外笑顔が多く楽しそうな姿があった。震災のあと、⼀回この経験があったからといって、人生が変わるものではないけれど、何か心に問いかけるきっかけになれば」と話した。
舞台が切り替わり、仲道氏の演奏に入る。成人のお祝いを述べたのち、演奏する≪月の光≫について、「月はどこでも、いつでも変わらず、同じように空に見える。いま遠くにいる人も、あの時にいた人も、きっとつながっていると思う」と問いかけた。
祈りのような緊張感の中で、この言葉を受けた参加者が、静かに思いを寄せていた。
次に演奏された≪ピアノ・ソナタ《月光》より 第3楽章≫は、作品の第1楽章に見られるメロディーが、激しく展開されていくことから、「運命の歯車が動き出すこと」を表したと言われている。
「世の中、良いことばかりではない」―この日集まった七ヶ浜町の新成人は、20 歳を迎えた喜びとともに、同時に東日本大震災からの長い復興、そしてコロナ禍と、あまりに厳しい自然の脅威を、若くして知ることとなった世代である。ベートーヴェンから250年の時をこえて伝えられてきた、強い思いを会場全体で共有し、コンサートは幕を閉じた。
式典終了後には、フィジカルディスタンスに配慮しながら、仲道氏と成人式実行委員会メンバーが交流の時間を持った。
8年前のアウトリーチについて、仲道氏から尋ねたところ「とてもきれいな音色だったことが印象的で、よく覚えている」「映像を見て懐かしかった」と答えていた。中でも、ある実行委員メンバーは、当時被災を理由に転居してきた直後で、同級生と被災の体験も共通せず、打ち解けられていなかったが、音楽を通じた表現活動を通じて、心を開くきっかけになったという。
震災から10年の節目、大人への扉を開いた彼らが次世代を拓くと同時に、私たちは今後も音楽を通じた心の対話を通じ、継続して⼦どもたちに寄り添いたいと考える。