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郡山市音楽教育研究会「第5回オーケストラ・フェスティバル」

  • 実施日時
    2020年 2月2日(日)12:30開演
  • 実施場所
    けんしん郡山文化センター 大ホール
  • プログラム/出演

    第1部 参加各校のステージ

    1. 郡山第二中学校管弦楽部
     指揮:齋藤 正夫
     歌劇「売られた花嫁」序曲(B.スメタナ)
    2. 郡山第五中学校管弦楽部
     指揮:本田あゆみ
     交響詩「フィンランディア」作品26(J.シベリウス)
    3. 開成小学校特設合奏部 with 郡山第一中学校吹奏楽部有志&中高生有志
     指揮:髙橋 洋行
     「レ・ミゼラブル」セレクション(C‐M・シェーンベルク/B.ローデン)
    4. 緑ケ丘第一小学校特設合奏部・緑ケ丘中学校管弦楽部
     指揮:長谷川 匡/榎 治子
     交響曲第8番ハ長調D944「グレート」より第1楽章(抜粋)(F.シューベルト)
     そりすべり(L.アンダーソン)
     「水上の音楽」より(G.F.ヘンデル)
    5. 橘小学校特設合奏部 with 郡山ジュニアフィルハーモニーオーケストラ
     指揮:添田 祐司
     行進曲「威風堂々」第1番 二長調 作品39‐1(E.エルガー)
     交響曲第8番 ト長調 作品88 より 第4楽章(A.ドヴォルザーク)

    第2部 合同ステージ

    6. 小学生合同オーケストラ
     指揮:髙橋 洋行/長谷川 匡
     星に願いを(ハーライン/濱野 正)
     海の見える街(久石 譲/濱野 正)
    7. しらかわ地区合同オーケストラ (白河一小、白河三小、白河中央中、白河二中、白河南中、西郷一中、西郷二中、泉崎中、棚倉中)
     指揮:大竹 晃司
     「サウンド・オブ・ミュージック」セレクション(R.ロジャース/O.ハマースタインⅡ世)
     交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」第4楽章(A.ドヴォルザーク)
    8. 中学生合同オーケストラ
     指揮:佐藤 守廣
     ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61(C.サン・サーンス)
     第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ
     第2楽章 アンダンティーノ・クヮジ・アレグレット
     第3楽章 モルト・モデラート・エ・マエストーソ - アレグロ・ノン・トロッポ
     ソロ:土屋 杏子(ヴァイオリン)
     アンコール:ラデッキー行進曲

主催者からのレポートをお届けします。
 わたしたちの住む郡山市は、多くの市民が音楽を楽しみながら、音楽の力を信じ、「音楽のある街」を目指して地道な音楽活動を積み重ねています。震災9年目を迎える今年2月、市内小中学校の管弦楽・弦楽合奏の活動を行っている小中学校で、5回目となる合同演奏会「第5回オーケストラ・フェスティバル」を開催しました。
 演奏会は2部構成で、前半は、郡山市内の参加各校によるステージを行いました。昨年同様、卒業生や地域の方が一緒に演奏するステージがあり、さらに今回は昨年4月からオーケストラとして活動を始めた小学校が同じ学区の中学校と一緒に演奏するステージもできました。

 後半は合同ステージで、初めに小学生の合同オーケストラによるステージを行い、「星に願いを」と「海の見える街」の2曲を演奏しました。

 3つの小学校約150名の合同オケで演奏を行いました。合同で行った練習は、前日と当日の2回だけだったので、うまく合わせることができるかどうか心配もありましたが、それぞれの学校の6年生が全体をうまくリードしてくれました。本番では、みんなで合わせることの「楽しさ」や「うれしさ」が子どもたちの演奏から伝わってきました。

 続いて西白河地区と東白川地区の9つの小中学校に有志のみなさんが入った「しらかわ地区合同オーケストラ」が、「サウンド・オブ・ミュージック」セレクションとドボルザーク」の交響曲第9番「新世界」より第4楽章を演奏しました。昨年よりもさらに多い総勢176名がステージ上に並んだ様は圧巻で、そこから奏でられた音楽は、例えば「サウンド・オブ・ミュージック」を袖で聴いていた人が「これは『アルプス』というより『エベレスト』みたいだよね!」と思わず呟いてしまうほど圧倒的なスケール感の演奏でした。新世界も令和になってから初のオーケストラ・フェスティバルに相応しい瑞々しい演奏となっていました。

 最後のステージでは、中学生合同オーケストラがソリストに東京交響楽団ヴァイオリン奏者の土屋杏子さんをお迎えして、サン・サーンス作曲「ヴァイオリン協奏曲第3番」を演奏しました。2週間前に行った合わせの練習では、土屋さんの意図するテンポや表現にオーケストラがうまく対応することができませんでした。また、個人での出来不出来の差も大きく、このままで大丈夫なのだろうかと不安がよぎりましたそれでも、この日、土屋さんから演奏に関していくつものアドバイスをいただき、それ以降、子どもたちの目の色が明らかに 変わっていきました。

 前日の合わせでは、2週間前よりも、オケの演奏はだいぶ改善されていました。合わせの中で、土屋さんの演奏(音)に引き上げられるように、子どもたちの演奏もぐんぐん変化していくのがわかりました。しかし、まだソリストに十分に対応できているとは言えませんでした。そうして迎えた翌日の本番。「これは昨日までと同じオーケストラっ!?」と関係者の誰もが見違えるほど、子どもたちが素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました。子どもたちの無限の可能性が感じられた瞬間でした。そんなオーケストラと土屋さんの演奏に会場の誰もが魅了されていたように感じました。
 そして、土屋さんの素敵なソロのアンコールの後は、全員で、「ラデッキー行進曲」を演奏しました(今後は、「オケ・フェス」の最後は「ラデッキー!」となっていけばいいなと考えています)。会場のお客さんも手拍子で参加し、温かい雰囲気に包まれて演奏会を終えることができました。

 今回のオーケストラ・フェスティバルは5回目の節目ということで、当初は、もうお一人ソリストの方をお呼びして共演のステージを実施したいと考えていました。しかし、10月の台風19号による影響や参加校の上位大会への出場による練習日程確保の問題、ここ2年ほど盛んに議論されている働き方改革などを考慮し、断念しました。その分、各校でそれぞれのステージのパフォーマンスの向上を目指すことにしました。
 前述したように、今回の「オケ・フェス」には、昨年4月からオーケストラとして活動を始めた小学校が1校、新しく参加してくれました。その学校の先生から、「この一年、なかなか大変だったけど、オーケストラになって本当にたくさんの人に喜んでもらえたんですよ。また、オケ・フェスでは(今回、中学校と同じステージで参加して)小学生、中学生、高校生の3人の兄弟が一緒にステージに立つことができたと言ってとても喜んでいる保護者の人が何人もいました。うちの小学生もとても楽しそうでした。」とお話をいただきました。一緒にステージに立った中学校の先生も、「学区として『緑ケ丘チーム』で参加できて、本当に良かったし、最高に楽しかった。」と話されていました。きっと地域として、これからもっともっと活動が盛り上がっていくのではないかと感じずにはいられませんでした。
 協奏曲は、今回も、中学1・2年生全員が出演することになりました。そのため、高校生は出演せず、中学生だけのオケの演奏になりました。管楽器は1パートに複数の奏者がいることになったため、その分、演奏がまとまるまでによりたくさんの時間が必要になってしまいました。しかし、(これもすでに書きましたが)子どもたちは本番で本当に素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました。ソリストの土屋さんに引き上げられるようにぐんぐん成長していく姿に、子どもたちの無限の可能性を感じました。今回の土屋さんとの共演は、間違いなく子どもたち一人一人の自信に繋がったと考えます。今回も終演後に、子どもたちのキラキラした眼、生き生きした表情を見ることができました。
 今回のオケ・フェスでも、土屋さんとの共演や合同オケの取り組みを通して、たくさんのことを学ぶことができました。それをまた、これからの各校での活動に生かしていきたいと思います。

 今回、「第5回オーケストラ・フェスティバル」は、予定通り実施することができました。しかし、この後から新型コロナウィルス感染拡大防止のため、様々な演奏会やイベントが開催中止や延期となっています。
 そんな状況の中、わたしたちは、「当たり前の日常が当たり前のことではないのだ」ということを東日本大震災以来ここであらためて思い知らされました。そして、「音楽」がどれだけわたしたちにとって大切な存在であるのかをあらためて強く感じさせられました。この1ヵ月ほど、国内外を問わずいろいろなオーケストラや演奏家の方々がYouTubeなどを通して音楽をライブ配信されています。いくつかの演奏会を視聴させていただきましたが、自然と涙がこぼれ、心が洗われるようでした。「音楽の力」を強く感じました。
 これから学校でも、子どもたちがどういった活動をしていけるのかまだわかりません。でも、わたしたちは「音楽の力」を信じ、子どもたちのために少しでもよりよい環境を整えていけるように取り組んでいきたいと思っています。次の「オーケストラ・フェスティバル」がどういった形で実施できるかは今のこの状況ではまだ判断が出来ませんが、それでも、また、子どもたちや会場に聴きに来て下さった皆さん、関わってくれた人たちみんなの笑顔が見られるように、少しずつできることを探っていきたいと思います。そして、全国のみなさんの日常に早く、生の「音楽」が戻ることを心から願っています。