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北海道農民管弦楽団「北海道農民管弦楽団 第26回定期演奏会 胆振東部地震復興祈念コンサート」
- 実施日時
- (1)2020年2月1日(土)18時半開演
(2)2月2日(日)13時半開演
- 実施場所
- (1)むかわ町四季の館たんぽぽホール
(2)安平町早来公民館(町民センター)大ホール
- プログラム
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〈第1部〉
1.牧野時夫/農民の為のファンファーレ《東北農民管弦楽団委嘱作品》
2.スッペ/喜歌劇「詩人と農夫」序曲
3.楽器紹介 「となりのトトロより「さんぽ」
4.ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
5.山田耕筰・牧野時夫編/ペチカ(Vn.独奏:牧野時夫)
6.ヴィヴァルディ/和声と創意の試み第1集「四季」から「春」全楽章(Vn.独奏:牧野時夫)
7.エルガー/威風堂々第1番
〈第2部〉
1.ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 (2020年 ベートーヴェン生誕250年)
アンコール 花は咲く(会場の皆さんとの合唱)
- 出演
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指揮・ヴァイオリン独奏/牧野時夫(当団代表)
管弦楽/北海道農民管弦楽団(コンサートマスター:野村 聡)
- 共演
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(2月1日むかわ公演)
北海道鵡川高校吹奏楽部、むかわ町立鵡川中学校吹奏楽部
北海道穂別高校吹奏楽部、穂別ウィンドアンサンブル
(2月2日安平公演)
安平町立早来中学校吹奏楽部、厚真町立厚真中学校吹奏楽部、厚真町民吹奏楽団
主催者からのレポートをお届けします。
私達「北海道農民管弦楽団」は、1994年夏に脱サラ農民3名からスタートし、1995年1月に第1回演奏会を開催して以来、年々仲間を増やしていき現在は約70名で活動しています。農家や酪農家、農業関係者らが中心となり宮沢賢治が成しえなかった夢を現代へ甦らせる試みで「鍬で大地を耕し、音楽で心を耕す」をモットーに毎年農閑期の11月頃から練習をし冬に1度の演奏会を北海道内で開催しています。
「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」の受賞は、第1回(2013年)花巻公演、第4回(2016年)名寄公演に続き3度目となりました。回を重ねるごとに賞の重みも感じているところです。早いもので北海道全域がブラックアウトに見舞われた北海道胆振東部地震から2年が経ちました。今回はその被災地での公演を行いました。曲目はなるべく堅苦しいものではなく、現地のお客さん(子どもからお年寄りまで)に楽しんでいただけるように、プログラムも工夫して、“農民オーケストラ版音楽教室”の雰囲気で、そしてこれまででは初の試みで2日公演というものでした。
初日(1月31日)は、日曜日の公演地である安平町の公民館に寄ってホールのステージ上と客席のセッティングを大まかにして、むかわ町へ。これまでに数回視察や打ち合わせの為に訪れていた被災地ですが、未だに道路や橋が復旧中で迂回をしたり、崖が崩れていたり仮設住宅が建っていたりと・・・札幌から約1時間の被災地(震源に近い)の現状は、復興半ばという印象でした。
金曜日ということもあり、この日は出席可能なメンバーでのリハーサル。むかわ町四季の館は「道の駅」「ホール」「ホテル」と繋がっている複合施設で、練習の合間にホテルの客室へ戻って休憩をしたり、宿泊者専用の温泉に浸かったりと、とても便利な施設です。ホール客席は可動式ですが、春先に視察に訪れた際は、先の地震で可動式座席が故障してしまって・・・私達の公演に間に合って本当に良かったです。
2日目、いよいよ現地で共演する楽団、鵡川高校、鵡川中学校、穂別高校、穂別ウィンドアンサンブルも加わり「威風堂々」は大迫力。むかわ町の特産は「ししゃも」ですが、鵡川高校、鵡川中学校の両校吹奏楽部は普段から「Shishama Youth Wind Orchestra」として地元のイベントやコンサートにも出演しているとのことです。
当団の牧野代表が私達の姉妹楽団である東北農民管弦楽団(代表・白取克之)からの委嘱により作曲した「農民のためのファンファーレ」を冒頭に演奏。この曲は宮沢賢治が作曲した「星めぐりの歌」がモチーフになっています。むかわ町と合併した旧・穂別町は賢治が目指した理想の村づくりが1947年から行われ、現在も観音堂には賢治の故郷・花巻の仏師による「賢治観音(聖観世音菩薩 せいかんぜおんぼさつ )」が安置され、旧富内駅は賢治が描いた理想郷「イーハトーブ」をイメージして「銀河ステーション」と名付けられている。駅前には、賢治設計の花壇「涙ぐむ眼」、また、近くには図書館「イーハトーブ文庫」があり、賢治ゆかり地だそうです。
ファンファーレの後は、スッペ。プロのオーケストラでも音楽教室などでは「軽騎兵」序曲などはよく演奏されるが、「詩人と農夫」序曲は農民オーケストラでは久しぶりに演奏した曲でした。オーケストラストリー「となりのトトロ」は夕張公演で牧野代表の弾き振り(ピアノと指揮)で全曲取り上げましたが、子ども達にも人気の「さんぽ」を使って楽器紹介。楽器紹介の後に再びオーケストラ全員でクラシックと言えば?!この曲、ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」。様々な演奏がありますが、自在なアゴーギグ、まさに一期一会の演奏でした。
3日目も地元の早来中学校、厚真中学校、厚真町吹奏楽団との共演、中学生はインフルエンザや風邪でお休みの生徒さんもいましたが、ほぼ全員が参加。(まだこの時は半年後に新型コロナウィルスで世の中がこんなにまで変化するとは想像もしていませんでした。厚真町民吹奏楽団では代表で指揮者を務めていた農家の方が土砂崩れに巻き込まれて亡くなったと聞いています。団員の皆さんは深い悲しみの中にあっても、前を向いて「音楽」に取り組んでいる姿に大変感動しました。両公演共に若いメンバーの奏でる力強い音色に、明るい未来への希望を感じました。
今はコロナでクラシック音楽やオーケストラを取り巻く環境は大変厳しいものがありますが、中世ヨーロッパが「ペスト」によるパンデミックの後に「ルネサンス」が開花しように、この新型コロナウィルスを乗り越えて、人類は再び文化芸術の力が必要になると思っています。人と人をつなぎ、結びつける役割は音楽にはあります。これからも微力ではありますが、北の大地から音楽を奏でていきたいと思っております。